1.観察日記
ユリは現在、公園にいる。セレナの付き添いで来たのだ。
ユリは何故セレナが外に出たのか謎で仕方が無い。
ユリの主、セレナ・リブロは最年少で天八座の攻撃術筆頭になった、言わば天才だ。
ただ、彼女の欠点を上げるのなら、生粋のインドア人間と言うこと。
外に出るのは最低限。
休日は書類を捌いているか、魔術の試行錯誤。読書を楽しんでいる。
別に、セレナの行動にユリは何も言わない。
勝手にしてくれ、と思っている。
「主ー、何しているんだ」
少し離れた所にユリはいる。離れていろ、と言われた為である。
セレナは紙に書いている文字をブツブツと読んでいる。
これはダメだ。聞こえない。
文字の世界に入り込んだ、または思考の領域に入ったセレナは周りの声が聞こえなくなる。
そんなセレナをほっといて、ユリは公園を探ってみる。
夜に差し掛かっているので子供はいない。
上からロープで吊るされている長方形の板がある。使い方は分からない。
棒がずっと並んでいるものもある。ユリは棒を超えたりくぐったりしてみる。目が回った。
砂の城があった。見てみる。まだ未完成のようだ。
ユリが意図せず公園の遊具で遊んでいた時、セレナは、読んでいた紙をあろう事か、魔術で燃やしてしまった。
ユリは行動を止め動揺していると、セレナは息を整え、手の平を中に向けた。
「展開」
いつも通り魔法陣が…と思われたが、少し違った。
普段のセレナのスタイルは大きな魔法陣一つ。
今回は普段よりも一回り小さい魔法陣がセレナを中心として外に十個ほど現れた。
魔術陣を増やせば増やすほど一つ一つの魔法陣は小さく、崩れていく。
ただ、セレナは大きさは少々小さくなったが、誤差の範囲内。魔法陣に刻まれている文字や文様も崩れていない。
「貫け」
光の矢が外側に放たれる。
遠目から見れば流星のようにも見えそうだ。
セレナはこの、光の矢を攻撃術の中でも得意としている。
ユリもこの光の矢は好きだ。
ただ、いつもの光の矢とは少し違った。
真っ直ぐ進んだ後、急激にカーブをつけて放たれる。それも休む暇なく。
ユリはたまに光の矢を使う魔術師を見るが、こんなに球みたいに放たれるものは見たこと無かった。
「…出来た」
思わず、と言った様な声が漏れ出していた。
その顔にはちょっとした、歓喜、興奮、喜びが浮かんでいた。
「主!今何したんだ⁉︎」
ユリはセレナの近くに近寄り問いかけている。
その目はキラキラと未知のものを見つけた子供のようだ。
セレナも少々興奮した様子で振り返った。
「これは、半利用魔術って言って、基礎の魔術を以下に少ない魔力で使うものなの。ただ、これを習得するにはそれなりの時間が掛かって…」
「わかったぞ!主はその半利用魔術を覚えたんだな!」
セレナは少し気の抜けた顔をしていた。
「…違うよ。わたしはもう、半利用魔術使えるし」
何を言っているのか。と言うような顔をユリに向けてくるセレナ。
「は?主は半利用魔術について説明してたじゃないか!」
その言葉でやっと理解したのかセレナはなる程と小さく呟いていた。
ユリの頭は疑問符だらけだ。
「…わたしが使ったのは約六百年前の古代魔術を現代でも使えるように応用したものだよ。古代魔術研究家、ユーガ・メリー作、『古代魔術の解明』って言う本に書いているまだ、解明されていない魔術を授業中にちょっと解いてみたの!そしたら、今の人の構造じゃ使えないことが分かったから今の人が使えるように少しアレンジをしてみて、半利用魔術のさらに半分の魔力量を使えば、これに似た魔術が使え───」
最後の方はどんどん早口になってまくし立てていくセレナ。
ユリは後半になるにつれ聞き取れなくなっていく。正確には聞けてはいるのだが、理解できていない。
ユリは少し整理してみる。
主は、『じゅぎょう』の時に解明されていない古代魔術を解いていた。
今の人間だと使えないからアレンジした。
それに半分の半分の魔力を使えばいい。
でも、半利用魔術っていうのは難しい。
でも、主はそれが出来る。
ここまで整理してユリは気づいた。
(主、サラッと古代魔術解明してるじゃないか⁉︎)
その間もセレナは古代魔術の魅力に着いて語っている。
「──って言うことで。でも、本には古代魔術に必ず使われている文字があって。その文字がまた魅力的で、今も書ける人はほんのひと握りなの!いつか会ってみたいな。それでね、古代魔術の文字は今よりもずっと少ないけど、本当に難しいの!規則としては──」
「主!もう大丈夫だ」
止めると、本当に分かっているの、とセレナの顔に書いてある。
「要するに、主は天才って事だろ」
「そんな話はしていない」
セレナは呆れて片付けを始めた。
セレナは最年少、十三歳の時に天八座攻撃術筆頭となった若き天才。
セレナはそれを自覚しているのかは未だ不明だ。
さくらの日
主は凄いことをした。
人間界の日記という物に自分はこう、書く。
そう思ったユリなのであった。




