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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
番外編
13/18

1.ちょっとした失敗

カラカラと動いている馬車にマリノは乗っている。

窓の外を見るのでも寝るのでも無く、ただ手元の経費の書類を眺めている。

そこまで数字に大きな差はないが二つの項目だけは目立って差がある。

出費と収入の欄だ。

国王は天八座に幾らか多めに予算を渡したいみたいだが、一定数の上級貴族が不平不満を言っている為強く出られないみたいだ。その為収入が少ない。

収入は正直どうでもいいのだ。

問題は出費だ。

信じられないくらいに多い。特にここ数年は多くなった。

天八座は金遣いが荒い人が数名いる。

多分、その人達だろうなとは思っているのだ。

ただ、その人達は、マリノよりも就任歴が長い、それか同じ人なのだ。

同期には強く言えるが、先輩に当たる人には言えない。

それが、マリノを悩ませているのだ。

はぁ、とため息をついて天を仰いだ。

(…何日話してないかな。一、二、三…、七日、一週間か)

数えて更にため息をつく。

最愛の妻にここしばらく会えていない事にだいぶ堪えている。

さっさと帰りたい。

疲れを取りたい。

妻を思いっきり抱きしめたい。

それが本音だった。

「着きました」

「ん、ご苦労さま。ありがとう」

従者に声を掛け降りる。

目の前にはタウンハウスの一室。

ここに目的の人物が住んでいるのだ。

王都から随分と遠い。馬車を使い片道六時間。

正直あまり来たくない場所だ。

本日は近くに仕事をする為に来ていたので馬車を使った。

扉の前に立ちノックをする。

中からは返答は無い。

もう一度ノックをしてみるがまた、返答は無い。

人の気配自体がなかった。

(…平日だった。曜日感覚無くなってきている。相当来てるな)

学生らしく学園に通っているのは良い事だが、マリノにとっては少々大打撃だ。

わざわざ来た意味が無くなる。

どうするか悩んでしまう。

何時もならそれなりの対処は思いつくがどうにも今日は頭が働かない。

「あれ、何しているんだ」

「…ユリさんですか」

開けっ放しだった窓から目的の人物セレナ・リブロの使い魔、ユリが出てきた。

防犯的には良くない事は咎めない。

自己責任だ。

「書類を取りに来ました」

「主は学園に行っているぞ」

「…存じていますよ」

じゃあ何しに来たんだと言わんばかりの態度にため息をつきたくなる。

「主はいないがドア、開けっ放しだぞ」

「…そうですか」

思う所はあるが、何も考えられず扉を開けた。

目に入るのは白い部屋。

壁や床、家具の話ではない。

机に目が引っ張られるのだ。

(…強盗に入られたような部屋だな。荒れ放題)

そう感じながら、部屋を進んでいく。

書類がありそうな場所は大きく分けて三つだった。

一つ、机の上

二つ、本棚

三つ、資料棚

たったの三つと言われると少なそうだが、この三つはどこもかしこも書類だらけ。

何が必要で何が不必要かも分からない。

目的の書類は一体どこに眠っているのやら。

試しに机の上にある山の一部を少し持ち上げてみる。

色々混ざっている。

経費の計算、多分他の天八座から頼まれた書類、書きかけの計算用紙。

(…日が暮れるな)

探すには時間が勿体ない。

更に、疲れ切っている体には酷だ。

マリノはローブから適当な紙を出し、サラサラっと要件を書きつける。

そして、適当な書類の山の上に置いておく。

流石に気づくだろうと思っていたのだ。

「ユリさん。貴方の主セレナ・リブロに書類を探してくださいとお伝えください」

「おー、分かったぞ!」

本当に分かっているのか怪しいが返事をしていたので良しとしたマリノは扉を開け外に出た。


✿✿✿


次の日、約束通りに書類を取りに来た。

平日だったが、学生が家に帰る夕方にきた。

あの娘は放課後活動に精を出す人物では無いと知っているからだ。

今度はきちんと人の気配があった。

一度ノックをする。

返答はない。

もう一度ノックをする。今度は強めに。

バサバサと何かが崩れる音がした。

(…何をしているのやら)

更にノックをする。二度目よりも強めに。

しばらくしてやっと出てきた。

金髪を肩くらいに揃える小柄な娘。

その表情は怯えきっている。

(…すっぽかしたな)

何となく分かった。その態度が少々癪だった。

「遅かったですね。セレナ・リブロさん。お約束の書類を取りに来ましたよ」

その為、自分が出来る笑顔で対応してやろうと思ったのだ。


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