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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
1章 陽気な春
10/16

9.差


前回のあらすじ

少女は事件を暴きました。

「お、お前一体何した!」

男はキレ散らかしている。自分が魔術を上手く扱えなかったからか。はたまた、昔から無能で有名な三組所属のセレナに火球を避けられたからか。

どちらにせよ、もう男は手に付けられない。

「我に宿りし炎よ、今、敵を炙れ‼︎」

更に火球は数を増やした。心なしか、大きくなっている気もする。

スピードも格段に早くなった。

魔術は使い手の感情によっても変化する。

今、セレナの目の前の男は怒っているのだろう。

怒り、全てを魔術に込めている。

そのおかげと言うべきか。魔術は今までにないほど強く強固な物になっていた。

これが当たれば男の目的は達成出来る。

そう思い、思わず笑を浮かべながら火球を放った。が、セレナには何も変化ない。

何処かに当たった形跡すら見られない。

まさか、消えた?

そんな事はありえないと、男はセレナに視線を移した。

セレナには感情や表情は存在していない。

セレナは指を男に向ける。

「展開」

彼女が呟けば、魔法陣が現れる。

男の魔法陣よりもずっと大きく、繊細だ。

「放て」

その瞬間。無数とも言える光の矢が男目掛けて飛んできた。

慈悲も同情も無い、ただの選択。

─こいつは、化け物だ。

視界が覆われる中、そう感じた。

そして、男は目を閉じた。

痛みが来る─と思ったが、何時までも来ない。

思わず目を開ける。

目の前には光の矢が停止していた。

「…殺しませんよ」

そう告げたのはセレナ。ゆっくりと男の方へ寄ってくる。片手の指をクルクル回している。

どうやら、ルナの周辺にかけていた結界を解いたようだ。

ルナは走ってセレナの方へ駆け寄っている。

「セレナ!大丈夫?怪我ない?」

ルナは半泣きの状態でセレナに抱きついた。

「…お前、何故、止めを刺さない。殺気立っていただろ…」

男は疑問を投げかける。あの瞬間、男は確かに死を感じたのだ。

「…当たり前です。面倒事だけは避けたいので」

普段のセレナらしい回答が返ってきた。ただ、普段のセレナを知りえない人には理解が出来ない回答でもあった。


✿✿✿


「へー、それでわざわざ私は呼ばれたんですね。私は雑用係ではありませんが。どう理由をつけるつもりで?」

セレナは今、ルナと説教を受けている。

─あの後、ルナが助っ人を呼ぶと言って誰かに伝言を飛ばしていた。

男もセレナの風魔術で校舎裏へ運び込んだ。意外と大人しくしてくれている。

「ルナ様。助っ人とはどんな方なのですか?」

「お兄様です!」

ドヤとルナはしている。よっぽど頼れる方なのだろう。助っ人だから、王都で務めている人可能性がある。エリートと言える人なんだろうな。

「ルナ」

「!お兄ちゃん」

ルナが兄と言った人。その人と先日セレナは会っていた。

(…ルナの姓はプラターヌ。なるほど…もっと早く気づけた。気づけてたら逃げたのに…。)

セレナが顔を青くしていくのを気にせずルナは兄であるマリノに近づく。

「助かったよ!さっすがだね!」

「なにがさすが、ですか。いい迷惑です」

妹に、容赦なくデコピンをお見舞いしている。

い、痛そう…。

「…こんにちは、セレナさん。昨日ぶりですね。貴方と会うとロクな事しかありません」

「ひっ、こ、こ、こんにちは」

やはり、この人は怖い。一体何を考えているのか…。

ルナはやり取りを聞いていないのか、男を指さしている。

「この人が、倉庫を木っ端微塵したんだよ」

「そうなのですね。それで、私が呼ばれた理由は」

「え?後処理係」

そこからは説教が始まった。

心のどこかでは納得してしまう内容だった。

ぐうの音も出ない。

「─まぁ、いいでしょう。そこの男性。爆発の動機は?言わないなら少々手荒な事をさせていただきますが」

冗談では無いと悟ったのか、男はアッサリと口を割った。

「仕事が面倒で辞めたんだよ!それで、優秀と言われている卒論。その中でも歴代最高得点の大天才の卒論を手に入れようとしたんだよ!」

「それで?」

たった一言。それだけなのに圧を感じる。ある意味才能だ。

「そ、卒論を自分の物と発表しようとしたんだ…。そ、それだけだ!」

セレナは正直呆れた。すごくどうでもいい話だ。

ルナも呆れているようだ。

「卒論を自分の物として発表したい。という事ですね」

「あ、あぁ。そうだ」

マリノの確認の意図が掴めていないようだ。セレナもルナも良く分かっていない。

三人が疑問に思いながらマリノが、卒論の筒を開けるのを見ている。

「ほら、貴方がくすねた卒論ですよ」

筒の中に入っている卒論を男に投げた。

男は食い入るように見ている。ただ、しばらくした後頭を抱え始めた。

「どうですか?貴方が喉から出る程欲した、私が学生時代に書いた卒論ですよ?」

その言葉を聞いたルナは男から卒論を取り上げて読んでいる。セレナも覗き込む。

(…なに、これ。精神感応術って文字にするとよく分からない)

ルナも同じ事を思っていたのか。筒状に丸め始めた。

「お兄ちゃん、こんなの書いてたの…?本当に人間…?」

ブツブツと言いながら筒に収めていた。

「俺はこんなものの為に?…信じられない…」

男もルナと同様ブツブツと何かを言っている。人生ドブに捨てるとはこの事だろうな。

「もっと賢くあるべきでしたね」

マリノは縄を魔術で創り上げ、男の後ろに回った。

「最後に聞かせろ。三組女。お前、何者だ」

マリノに両腕を縛られながら、セレナに男は聞いた。

「…普通の生徒ですよ」

「嘘つけ、無詠唱で結界を張って、火球を消して、光の矢を操る。普通じゃねえだろ」

セレナはすごく嫌そうだ。自分の身分を明かしたくない。

(…平穏を望むのが間違ったかな)

腹を括ろう。この後、退学届を出せばちょうどいい。元々辞める気だった学園だ、未練の欠けらも無い。セレナはゆっくり息を吸った。

「…わたしは、天八座攻撃術筆頭を担っています。セレナ・リブロと申します」

身分を明かしたセレナはなんとも言えない表情をしていた。

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