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第4話 光る遺物(アーティファクト)

朝の光が、宿屋の窓から差し込んでいた。

木の床がきしみ、下の階からは人の話し声が聞こえる。


灯里はベッドの上で伸びをして、大きくあくびをした。


「ふぁぁ……おはよう、リアム」


「おはよう、よく眠れたか」


「うん、めっちゃぐっすり。昨日いっぱい歩いたもんね」


リアムは笑いながら荷物をまとめていた。


「今日は街の外れに行ってみようと思う」


「外れ? 何かあるの?」


「古い倉庫がある。昔の遺物が眠ってるって噂があるんだ」


「遺物って、宝物みたいなやつ?」


「まぁ、そんなところだな」


「行きたい! ねぇ、行こうよ!」


リアムは小さくため息をつきながらも微笑んだ。


「分かった。でも危険かもしれない。油断はするなよ」


「大丈夫。リアムがいるし!」


「……お前、本当に怖いもの知らずだな」


灯里はにっと笑った。


宿を出て、二人は人通りの少ない路地を抜けていく。

朝の街はまだ眠そうで、屋根の上に光が反射していた。

通りを外れると、空気が少しひんやりしている。


「ここ、ちょっと静かすぎない?」


「この辺りは人が寄りつかない。昔、倉庫街だった場所だ」


古い建物が並び、壁には蔦が絡まっている。

扉の一部は壊れ、風が吹くたびにギィギィと軋んだ。


リアムは一番奥の建物の前で立ち止まり、錆びついた金具を押した。


「ここだ」


扉が重たい音を立てて開く。

中は薄暗く、ほこりっぽい空気が流れ出した。


「わぁ……ほんとに古い」


「足元に気をつけろ。崩れてるところもある」


リアムがランプに火を灯し、先に進む。

灯里は少し怖がりながらも後を追った。


中には木箱がいくつも積まれていたが、どれも壊れていた。

床には砕けたガラスや金属のかけらが散らばっている。


「なにこれ……宝箱の残骸?」


「そうかもな。けど中身はもうない」


「うーん、ちょっと残念」


リアムは壁を手で探るように歩き、ふと立ち止まった。

カチッという小さな音が響く。


「今の、何の音?」


「分からない……」


次の瞬間、壁の奥が青白く光り始めた。

薄暗い倉庫の中に、幻想的な光が広がる。


「……うわ、なにこれ。めっちゃキレイ」


灯里が目を見開く。

壁に埋め込まれた石が、淡く輝いていた。


リアムはゆっくりと手を伸ばした。


「“光の石”だ。古代の遺物の一つだな」


「これが……まだ動いてるの?」


「そうみたいだ。何百年も経ってるはずなのに」


灯里はその光を見つめた。

青く透き通る輝きは、水のように揺れている。


「キレイ……なんか、あたたかい感じがする」


リアムは壁の模様を見て、小さく息をのんだ。


「この印、どこかで見たことがある」


「どこで?」


「古い地図だ。光の書庫の印と似てる」


「光の書庫……」


灯里の胸が少し高鳴った。

その言葉を聞くと、なぜか懐かしい気持ちになる。


リアムはランプの火を近づけ、壁の模様を照らした。

丸い円の中に、三本の線が描かれている。


灯里は小さくつぶやいた。


「この形……なんか知ってるような気がする。でも、どこで見たんだろ」


「君もか?」


「ううん、たぶん夢の中……かも」


リアムは灯里の顔を見つめた。


「夢ね。もしかしたら記憶の残りかもしれない」


「記憶の……?」


その言葉の意味を考える間もなく、光が少し強くなった。

青い輝きが二人を包み、風がひゅうと吹き抜ける。


「リアム、今の音……」


「分かってる。誰かが来るかもしれない。行こう、アカリ」


灯里は名を呼ばれ、ハッと顔を上げた。


「うん!」


二人は駆け出し、外の光の中へ飛び出した。

背後で壁の光がゆっくりと弱まっていく。


外の風が頬を打ち、街の鐘の音が遠くで響いた。

灯里は胸に手を当て、小さく息を吐いた。


――あの光、なんだったんだろ。

――あれを見た時、なんで涙が出そうになったんだろ。


リアムは空を見上げて言った。


「アカリ、あの遺物はきっと俺たちを導く。そういう光だ」


灯里は少し戸惑いながらも頷いた。


「うん、そうかもしれない」


風が吹いた。

その風に混じって、確かに誰かの声が聞こえた気がした。


――アカリ


灯里は思わず振り返った。

けれど、そこにはもう誰もいなかった。

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