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第3話 廃墟の街レフル

森を抜けると、風の匂いが変わった。

湿った土の匂いが薄れ、代わりに乾いた風が頬を撫でる。


木々の隙間から見えたのは、崩れた壁と傾いた屋根。

遠くに灰色の街が広がっていた。


「……あれが、レフル?」


灯里が指さすと、リアムはうなずいた。


「そうだ あそこが旅人の街だ」


坂を下りるたびに、街の輪郭がはっきりしていく。

壊れた建物が並んでいるのに、どこか温かい気配があった。


「なんか、不思議な感じ。壊れてるのに、ちょっとキレイ」


「この街は“廃都”の跡に建てられたんだ 昔は栄えていた」


「廃都……?」


「“光の都”と呼ばれていたらしい けど、戦争で滅んだ」


灯里は思わず息をのんだ。

街の中は静かだった。

けれど、その静けさの中に確かな生の音があった。


通りには屋台が並び、子どもたちが走り回っている。

パンの香りが漂い、焼き果実の甘い匂いが風に混じる。


「ねぇ、リアム。この街、すごく雰囲気いいね」


「壊れても、まだ生きてる そんな街だ」


「……なんか、いいね。ちょっと切ないけど」


通りの角で、元気な声が響いた。


「いらっしゃい 旅人さんかい?」


果物を並べた屋台の女性が、笑顔で手を振る。


「この赤いの、食べてごらん 甘いよ」


灯里は一口かじった。


「わ、ほんとだ。めっちゃ甘い!」


「いい顔するねぇ 湖の水で育てた果実さ」


リアムが軽く会釈をして言った。


「ありがとう ご馳走になる」


「いいのいいの 若い子が来ると元気が出るんだよ」


灯里は嬉しそうに笑い、頭を下げた。


「ありがとうございます」


その笑顔を見て、リアムもつい笑ってしまう。


二人は街の中心へ向かった。

そこには大きな広場と、石造りの噴水があった。

今はもう水は流れていないが、噴水の上には女神の像が立っていた。


灯里は見上げて小さくつぶやく。


「これが……光の女神?」


「たぶんな この街を見守っていたって言われてる」


「手に持ってるの、なんだろ」


「昔は光る杖だったらしい 今は折れてなくなってるけどな」


灯里は欠けた女神の腕を見て、ふっと切なそうに微笑んだ。


「壊れても、みんな、こうして生きてるんだね」


リアムはその横顔を見て、少しだけ目を細めた。


「アカリ 変わったこと言うな」


「え、そうかな」


「壊れたものの中に、ちゃんと光を見てる」


灯里は頬をかいた。


「それって褒めてる?」


「もちろん」


二人は笑い合った。

太陽が傾き、街の影が長く伸びていく。


宿屋に入る頃には、空が茜色に染まっていた。

古い木造の宿屋は、静かで落ち着いた雰囲気だった。


「なんか、落ち着くね。おばあちゃんちみたい」


「古い建物だけど、旅人には人気だ」


リアムはランプに火を灯す。

オレンジ色の光が二人を包む。


灯里は窓辺に座り、外の景色を見た。

夕陽に照らされた瓦の屋根が、まるで金色に光っている。


「……綺麗」


「この街の人たちは、滅びの跡で笑ってる それだけで立派だ」


「うん、すごいと思う」


リアムは灯里を見て、静かに言った。


「アカリも、いつかそうなれるさ」


「私も?」


「そう 君も強くなる」


灯里は少し笑って頷いた。


「なれるかな、私」


「なれる きっと」


風が窓を揺らし、外の灯りがちらちらと揺れる。

リアムがランプの火を少し弱めた。


「そろそろ寝よう 明日は街の外れを見に行く “光る遺物”があるかもしれない」


「うん、楽しみ」


布団に横になり、灯里はまぶたを閉じた。

夢の中で、誰かの声が聞こえた気がした。


――光の書庫へ


けれど、目を覚ました時にはもう思い出せなかった。

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