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第2話 朝の森と銀の瞳

木の隙間から差し込む光が頬をくすぐった。

灯里はまぶしそうに目をこすり、ゆっくりと身を起こした。


木の小屋の中には、ほんのり温かい空気。

火のそばでリアムが鍋をかき混ぜていた。


「おはよう、アカリ」


「……おはよう、もう朝?」


「うん。よく眠れたか」


「うん、地面じゃないだけでも全然マシ!」


「それはそうだな。昨日は草の上で寝かけてたし」


リアムがくすっと笑う。

灯里もつられて笑った。


「昨日のこと、まだ信じられないよ」


「何がだ?」


「この世界に来ちゃったこと。ほんとに夢みたい」


リアムは首をかしげた。


「変わったことを言うな。君はどこから来たんだ?」


「えっと……遠いところ」


灯里は苦笑してごまかした。

まさか“別の世界”から来たなんて言えるはずもない。


「まぁいい。それより腹が減っただろ」


リアムは鍋から硬いパンのようなものを取り出した。


「これを食べるといい。ちょっと固いが腹にたまる」


灯里はかじって目を丸くした。


「甘い! これ、何が入ってるの?」


「干し果実さ。旅の食料にはちょうどいい」


「へぇ、旅人ごはんって感じだね」


「君、なんでも楽しそうだな」


「だって、せっかく異世界に来たんだもん。楽しまなきゃ損でしょ」


リアムは少し驚いた顔をして、それから笑った。


「君みたいな奴、初めて見た」


「そう? よく言われる」


二人は笑いながら朝食を終えた。


リアムは剣を腰に下げ、扉を開ける。


「森を抜けよう。街まで半日だ」


「街?」


「“レフル”という場所だ。旅人や商人が集まる平和な街さ」


「わぁ、楽しみ!」


灯里の声が弾む。

外に出ると、朝の光が森を照らしていた。


鳥が鳴き、葉の間から光が揺れる。

昨日の恐怖が嘘のように、世界がきらきらと輝いて見えた。


「ねぇ、リアム」


「なんだ?」


「リアムは、どうして旅をしてるの?」


「“光の書庫”を探してるんだ」


「光の書庫?」


「古代の知識が眠る場所だって言われてる。世界が壊れる前の記録が残ってるかもしれない」


「世界が壊れる前……」


その言葉が胸に残った。

けれど、意味を考えるより先にリアムが歩き出した。


「行こう。日が高くなる前に森を抜けたい」


「うん!」


灯里は彼の背中を追いかけながら、小さく笑った。


――転生じゃなかったけど、いいや。

――この世界、思ってたよりずっと綺麗だもん。


風が吹き抜け、木漏れ日が頬を撫でた。

灯里の心は、昨日よりも少しだけ軽くなっていた。

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