表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

第17話 砂嵐の予兆

風が叫ぶように吹き荒れ、砂が視界を奪っていく。

三人は必死に身を屈めながら進むが、

砂の粒が肌に痛いほどぶつかる。


「このままじゃやばいぞ!

早くどっかで風を避けねぇと!」

リュカが声を張り上げる。


「岩場を探す!砂丘の地形なら風を遮れる場所があるはずだ!」

リアムが前へ出て、風の向きを読もうとする。


灯里は強い風に体を押され、何度も足を取られながらも必死に二人の後を追った。

その耳に、また声が混じる。


――アカリ……急いで……

“鍵”が動く前に……


「鍵が動くって……どういうこと……?」


つぶやきは風に消えた。


しばらく進むと、リアムが指を伸ばして叫ぶ。


「岩陰だ!あそこへ!」


砂丘の下、黒い岩が半分埋まるように斜めに突き出していた。

三人がそこで身を寄せると、風は多少弱まった。


「……はぁ……死ぬかと思った……」

リュカが砂だらけの髪を払う。


リアムは呼吸を整えながら、

荒れ狂う風をじっと見つめた。


「ただの砂嵐じゃない。風向きが一定じゃないし、強さが不規則だ。

まるで……何かに引きずられてるようだ」


「引きずられてるって……なにに?」

灯里が尋ねる。


リアムは少し黙り、

灯里とリュカの顔を見た。


「……“力”だ。普通の自然現象じゃない」


リュカが眉をひそめる。


「また遺物の仕業か?あの塔みたいなやつ」


リアムは静かに首を振る。


「いや……もっと古い何かだ」


風が急に止んだ。

耳が痛いほどの静寂が降りる。


突然の静けさに、三人は顔を見合わせた。


「……今の、逆に怖くない?」

灯里が呟いた。


そのときだった。


ザッ……ザザッ……。


砂を踏む音。


リアムが反射的に剣に手をかけた。


「誰だ!」


砂煙の向こうに、人影が現れた。

フードを深くかぶり、風よけの布を顔に巻いた人物。

背は高く、動きは静かで無駄がない。


リュカが警戒して声を張る。


「おい!何者だ!」


人物はゆっくりと足を止め、

フードの奥から灯里たちを見つめた。


そして、落ち着いた声で言った。


「……風に逆らって進むとは、珍しい旅人たちだね」


声は低く、しかしどこか透き通っている。


リアムが剣を抜き、間を取る。


「名を名乗れ。敵なら容赦しない」


「敵ではないよ」

その人物は両手を軽く広げた。

「むしろ……君たちを探していた」


「探してた?」

灯里の胸がどくりと跳ねる。


フードの人物は灯里に視線を向けた。


「特に……君を。佐倉灯里」


灯里は一歩後ずさる。


「ど、どうして私の名前を……?」


人物は静かにフードを外した。


現れたのは、

銀の髪と青灰色の瞳を持つ青年だった。


年齢はリアムより少し上。

落ち着いた雰囲気だが、目は鋭く何かを知っているようだった。


青年は灯里をまっすぐ見つめ、

ゆっくりと言った。


「“鍵”が動き出した。

そして、風が君を指した。

だから迎えに来たんだ」


リアムが青年の前に立ちふさがる。


「お前、アカリに何の用だ」


青年は穏やかに答えた。


「心配しなくていい。

私は“風の記録者”リオン。

灯里に伝えるべきことがある」


灯里は思わず息をのむ。


風の記録者――。


リオンはゆっくりと手を伸ばし、

砂の上に触れた。


すると、砂がふわりと舞い上がり、光の粒へと変わる。


それは灯里の足元へ流れ、

まるで道を示す矢印のように形を作った。


リオンが言う。


「灯里。君は“鍵”に選ばれた。

その意味を、私は知っている」


灯里は一歩踏み出した。

胸が早く打つ。


「……教えて。私がどうして呼ばれてるのか」


リオンは静かに頷いた。


「すべては、“ノアの消滅”から始まっている。

そして……君の存在もまた、あの事件と深く結びついている」


灯里、リアム、リュカ。

三人は固く息を飲む。


強い風が、再び砂丘を駆け抜けた。


物語が大きく動き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ