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第16話 地上への帰還

灯里はロープをしっかり握り、

リアムとリュカが慎重に引き上げてくれるのに身を任せた。


砂の壁を登る途中、

下で光の輪が揺れながら灯里を見上げているような気がした。


――迷わないで

鍵を探しなさい


その声は遠くなり、やがて光も影も砂の向こうに消えた。


灯里が砂丘の上へ転がり出るようにして上がると、

リアムがすぐに腕を掴んで引き寄せた。


「大丈夫か、アカリ」


「うん……なんとか」


リュカが砂を払いながら息をついた。


「驚かせんなよ。いきなり砂に飲まれるなんてさ」


灯里は苦笑した。


「ごめん……でも、呼ばれたの。下から」


リアムとリュカが同時に目を見張った。


「呼ばれた?誰にだ?」

リュカが眉を寄せる。


灯里は一度息を整え、

あの光の輪で聞いたことをゆっくり話し始めた。


「……“記録”って名乗ったの。

この世界の記憶で、私を導く存在だって」


リアムは真剣な表情で聞いている。


「そして……“鍵を探しなさい”って。

ノアが消えた理由と、その鍵は関係してるって」


「鍵……?」


リュカが砂丘に腰を下ろしながら言う。


「物理的な鍵なのか、それとも……」


「比喩かもしれない」

リアムが静かに言った。

「記録が言うなら、何か重大な意味があるはずだ」


灯里はうつむき、

自分の胸の奥がじわりと熱くなるのを感じていた。


観測個体。

未来へ送られた。

希望。


光の輪の言葉が、まだ耳から離れない。


「ねえ、リアム……」

灯里が顔を上げる。

「もし……私がここに来たのが偶然じゃないなら……

怖いけど、確かめたい。私の役目がなんなのか」


リアムはしっかりと灯里を見つめ、

静かに頷いた。


「一緒に行こう。アカリが決めた道なら、俺たちも共に進む」


リュカがふっと笑った。


「ま、放っとけないしな。アカリ見てると、ほっとけねぇんだよ」


灯里の頬がほんのり熱くなる。


「……ありがとう」


そのときだった。


――ゴォォォォォッ!


突然、強い風が砂丘を叩いた。

砂が舞い、視界が白く揺れる。


「うわっ、なにこれ!」

リュカが腕で顔を覆う。


リアムは状況を読み取るように空を見上げた。

風の流れが急激に変わっている。


「風が……荒れてる……?」


灯里の耳にも、風の音に混じって違う響きが聞こえた。


――アカリ……急いで……


“記録”の声とは違う。

もっと切迫した、焦った声。


「今の……誰……?」


風がさらに強まる。

まるで何かが近づいているような、

嫌な予感を含んだ風だった。


リアムが叫ぶ。


「とにかく移動するぞ!

この風は異常だ!砂嵐が来る!」


リュカが荷物を抱え、灯里の手をつかむ。


「アカリ!走れ!」


三人は風を切り裂くように砂丘を駆け下りた。


後ろでは、砂丘の頂上が崩れるような轟音が響く。

空気が震え、砂が渦を巻いて天へ上がっていく。


灯里の心臓が激しく跳ねる。


――アカリ……急いで……

“鍵”が開かれる前に……


その声は風にかき消され、遠くへ流れていった。

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