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第15話 光の輪の声

落下の衝撃は、思ったほど痛くなかった。

灯里の体は柔らかい光に包まれ、ふわりと着地した。


周囲は薄い青白い光に満ちている。

空洞は体育館より大きく、天井はアーチ状に丸く曲がっていた。

壁には金属の柱や管が複雑に伸び、

ところどころで弱い電流のような光が走っている。


未来とも異世界ともつかない景色。

見たことはないのに、どこか懐かしい。


「ここ……本当に地下なの……?」


灯里の問いに答えるように、

空間の中心に浮かぶ“光の輪”が、ふわりと脈打った。


輪の中心に揺らめく白い光。

まるで心臓の鼓動のように明滅している。


――アカリ


光が呼ぶ。


灯里は息をのむ。


「やっぱり……あなたが私を呼んでいたの?」


――はい

あなたを導くために


声は優しく、どこか哀しみを含んでいるようにも感じられた。

灯里はゆっくり近づく。


「あなたは……誰?」


光はしばし沈黙し、

やがて輪の周囲に文字のような光を散らした。


――私は“記録”

この世界の記憶

そして、あなたの記録者


「私の……?」


灯里の胸にざわりと風が通る。


「地下施設でも呼ばれた……

あれも、あなたなの?」


――はい

あなたがここへ辿り着くよう、風を送っていました


灯里は両手を胸に当てる。

夢の中で見た光景が、鮮やかに蘇る。


「じゃあ……夢の中にいた、私に似た女の子……

あれも記録……?」


光がやわらかく揺れた。


――あれは“あなたの姿を借りた記憶の投影”

あなたに恐怖を与えないよう、最適な形を選びました


灯里は小さく息をのみ、

ゆっくり言葉をつないだ。


「じゃあ……私は、なんのためにここに呼ばれたの?」


光が円の形を変え、

まるで花が開くように光の粒を散らす。


――あなたに“真実”を知らせるためです

ノアが消えた理由

この世界が辿った運命

そして、あなたがここに来た本当の意味


灯里は唇を噛む。


「どうして……私が?」


――あなたは“観測個体”

この世界の未来へ送られた

最後の希望


灯里の目が揺れる。

胸の奥がざわざわして、少し痛い。


「希望なんて……そんなの、私にはわからないよ……

中学二年生の普通の女の子なんだよ……?」


光はゆっくり、寄り添うように輝いた。


――大丈夫

あなたはひとりではありません


その瞬間、

上の方から砂が落ちる音が響いた。


「……リアム!リュカ!」


灯里が見上げると、

砂の天井に小さく穴があき、二人の姿が見えた。


「アカリ!無事か!」


「ちょっと待ってろ!今降りる方法探す!」


灯里の胸に温かいものが広がる。


光の輪が静かに言う。


――彼らもまた“選ばれた者”

あなたを導く存在


「リアムたちも……?」


――はい

彼らと共に進むことで

あなたは“真実”に辿り着ける


灯里は光に向き直る。


「教えて……

私は、これから何をすればいいの?」


光がふわりと明滅し、

静かに答えた。


――“鍵”を探しなさい

この世界を閉ざした扉を開くための鍵

それは、あなたとこの星の未来をつなぐもの


「鍵……?」


――その鍵は

“ノアの消滅”と深く関わっています


灯里は息をのむ。


リアムたちの声が上から響く。


「アカリ!今行くぞ!」


光は灯里に寄り添うように輝き、

そっと告げた。


――迷わないで

あなたはこの世界に必要なのです


灯里は小さく頷き、

上から伸びるロープに手を伸ばした。


光の輪が、優しく見送るように揺れていた。

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