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終わりと始まり 序

初投稿です。

推敲に推敲を重ね、全てを書き直して漸く完成しました。

とても稚拙な出来ではありますがお読みいただけると嬉しいです。

感想など励みになりますので宜しければお願いします。

シリーズ物ですので気ままに投稿していきます。




「〇〇〇、あの砂時計みたいなのがオリオン座だよ」


夜空を見上げて、お父さんがいつも星座を教えてくれた。


「ふふ、〇〇〇、このお花はね、カーネーションって言うのよ」


お日様の下で、お母さんがいつも花の話を教えてくれた。


「ねぇ、お父さん、あの星座は何?」


夜になっても、お父さんは星座を教えてくれなくなった。


「お母さん、私ね、お花持ってきたの、これはなんて言うの?」


お日様の下に行っても、お母さんは花の話を教えてくれなくなった。

……ねぇ、お父さんお母さん。この思いは何て言うのか教えてよ。




───懐かしい夢を見た。

目を覚ますと不意に目頭が熱くなって、涙が溢れないよう急いで顔をあげる。

ポタポタと涙が数滴溢れた。

拭おうと腕を動かそうとするが、何かで縛られていて動かない。


「っ……」


頭がズキズキと痛む。

気を失う前に教室にいたことまでは思い出せるが、何をしていたのかが思い出せない。

思い出そうとするとより強く痛みだし、邪魔をする。

自分の置かれている状況を確認するため、周囲を見回す。

いかにも地下室のような部屋の中に、正面の木製のドアと、天井から吊るされている電球以外に目につくものは無かった。

体へ目を向けると胴体と腕をパイプ椅子に縄で繋がれていた。

普通の高校生の僕に縄抜けなんて出来る

訳が無いので、この部屋からは出られない。

大人しく、誰かが来るのを待つことにした。


一時間ほど経った頃、無音だった空間から足音が聞こえてきた。音の数から二人だろうか。足音は次第に大きくなりドアの前で止まった。


「こ、こんにちはぁ、稔咲実夢くん」


冴えない顔をしたおじさんが女子高生に背中を押され、扉を開けて入ってくる。

二人の姿を見ると頭がより強く痛み出す。

おそらく、僕を誘拐した犯人達なのだろう。

刺激しないように優しい口調で話しかける。


「......あなた達は誰ですか?」


三人の間に沈黙が流れる。

おじさんは、動揺を隠しきれずに女子高生と僕を交互に見た。


「はぁ......」


女子高生は心底嫌そうに長く溜息を吐いた。


「先生、ヒメちゃんが言ってましたし、私も散々言いましたよね?

幻創の覚醒後は一時的な記憶障害が発生する、って」

「面目ないですね......ははは......」

「それだから生徒に担任になって欲しくない先生第一位って言われるんですよ」

「ええ?!地味に傷つくなぁ......」


会話の内容から、女子高生の学校の先生がおじさんであることが分かる。

よく見れば、あのおじさんどこかで見たことあるような......?


「っ...」


考え出すと強い痛みが襲ってきた。


「先輩」


目の前に女子高生が立ち、こちらに語りかけてきた。


「少し失礼します」


そういうと、僕に手を伸ばして頭を撫でた。

撫でられていると不思議と痛みが消えていく。


「......ありがとう」


知らない女子から頭を撫でられる恥ずかしさで、少し顔を背けた。


「いえ、覚えてないでしょうけどお礼をしたまでです」


その言葉で女子の顔を見る。

可愛いというよりは美しく微笑んでいて、一度見たら忘れることはない顔をしていた。

けれど、さっきの話を信じるなら僕の記憶は今は使い物にならないのだろう。


「えっと、そろそろ本題に入ってもいいかな?」


冴えないおじさんが苦笑いを浮かべこちらを見る。

一応僕の意思を確認したいみたいだ。この状況で拒否権なんてあるわけ無いのに。


「どうぞ」

「まず自己紹介からしようか、当方は大手胤、武蔵台現創高校の学校長をやらせてもらっているよ」

「私は甜台使 千結、先輩と同じく武蔵台現創高校に通っている1年です」

「僕は稔咲実夢、甜台使......さんの話から、おそらく僕も武蔵台現創高校の生徒?です」

「後輩なんで呼び捨てでいいです」

「......分かった」


そういうと、甜台使は僕の背後へ周り、椅子に縛り付けていた縄を切った。


「......良いのか?」

「あなたに逃げ出す勇気は無いので」


そう言われると癪に障るが、事実なので口を塞ぐ。

それに犯人の機嫌を損ねないよう反論はしないようにしとくべきだ。


「えっと、自己紹介も済んだところだし、まずは説明からかな、実夢くんは当方達の戦いに巻き込まれてしまったんだ、本当に申し訳ない」


僕の校長先生だという男。大手胤はこちらへ頭頂部が見えるくらいに頭を下げる。


「別に大丈夫ですよ。覚えてないですけど、今無事ならそれでいいです」


大手はゆっくりと顔をあげる。

何か怒らせるようなことを言っただろうか。しかし、あげた顔は心配の色で溢れていた。


「ほ、本当に?」

「ええ」

「どんな文句でも言って大丈夫だよ?」

「いや、今が無事ならもういいですって」

「そ、そっかぁ」


大手の顔は心配の色から安堵の色に変わっていた。こんな人が誘拐をするようには到底思えない。


「心配しすぎなんですよ先生は」

「そ、そうかなぁ?あはは......」

「それだから親は嫌だけど親戚ならまぁ......な先生ナンバーワンって言われるんですよ。」

「妥協するくらいならランキングやらないで欲しいなぁ......」


それは教師として舐められているのではないか。もしくは、生徒が冗談を言えるほど仲が良いとも言えなくはない。

早く帰ってくれ


「もう話は終わりですか?」

「あぁ、ごめんね、話の続きをしようか。実夢くんはその戦いの中で超能力に目覚めたんだ」

「......は?」


突拍子の無さから思わず声が出る。

僕はまだ夢を見ているのか?

自由になった手で頬を引っ張ってみるが、確かに痛い。


「は、初めは信じられないよね。でも、嘘じゃないんだ」


すると、校長は小さな手鏡を取り出し鏡に向かって話しかける。


「ヒメちゃんさーん。」

「......」

「えぇ?ヒメちゃんさーん。出番ですよぉ」

「......」

「ヒメちゃんさーん。お願いしますよぉ」

「......ちっ」


暫くの沈黙の後、鏡から舌打ちのような音が聞こえた。

この人は何がしたいんだ。


「はぁ。貸してください」

「あ」

「ヒメちゃん。先輩が起きました」

「あぁ、分かったよ」

「当方嫌われるようなことしたかなぁ......」

「お前さんは儂の言った言葉を忘れおったからな」

「な......!」


小さな手鏡から人の顔が出てきて、驚きのあまり椅子ごと後ろに倒れてしまった。


「だ、大丈夫かい?!」

「こりゃええわ!千結。幻創をつこうてやれ」

「はいはい」


甜台使から差し出された手を取り、体を起こす。ぶつけた背中が痛......くない。


「ね、これがどんな怪我でも治す私の幻創。『いたいのいたいのとんでゆけ』」


握っている僕の手をもう片方の手で裏返し、掌にある擦り傷を治していく。

先程の頭の痛みも、この能力を使って治してくれたのだろう。僕を殺す気は無いとでも言いたいのだろうか。


「......ありがとな」

「ふふ、これはいけませんわ。実夢様は私達の事を誘拐犯とお思いですわよ」


手鏡から出てきた、ヒメちゃんと呼ばれる女性が目を細めて笑いながらこちらを見る。

誘拐犯なんて言葉は一度も言ってないはず。もしかしてコイツが誘拐犯なのか?


「俺ちゃんの幻創は心が読めちまうんだよ」


嘲笑いながらヒメちゃんが僕を見下す。

甜台使と大手も顔を見合わせて困惑する。

超自然的すぎて、一つの考えが浮かんでは沈んでいく。

そうか、全て夢なんだ。

なら理解が追いつかないことにも説明がつく。

でも、頭や背中の痛みは?夢なら痛くないはず。だとしたら、これは現実だ。


「ヒメも目が覚めてこんなつまんない部屋にいたら、誘拐を疑っちゃうわ」


ヒメちゃんが今度は大手を呆れた表情で見下す。


「えぇ?!」

「前後の記憶が無いのにこんな部屋に椅子に縛られていたら普通疑いますよ」

「大手っちさぁ......」

「覚えられてない事実が辛いからって、忘れないでくださいよ」

「いやぁ......」


大手は苦笑いを浮かべ部屋を見回す。

「確かにこれなら誘拐を疑うか......重ね重ね申し訳ない。実夢くん」


今度も綺麗な90度に腰を折り曲げて、校長は僕へ謝罪をする。


「......無事に家に帰れるんですよね?」

「それは絶対に保証するよ」

「ならいいです。色々聞きたい事はありますけど」


まだ疑いは晴れないが、無事に家に帰れるならもうそれでいいやと思い始めている。


「何でも聞いていいからね。当方は先程紹介した通り教師だからね」

「何か教えてくれましたっけ?」

「ま、まぁ、校長だからね......」


ばつが悪くなり、校長は顔を背ける。


「それで校長先生、あなたの幻創......でしたっけ?教えていただけませんか?それと、ヒメちゃんさん?のも」

「ヒメちゃんに関してはノーコメント、つまり無問題だよ」


ウインクをしてヒメちゃんはこちらを見る。

可愛い顔立ちをしているため、とても似合っている。

それはそれとして、無問題の意味は質問が禁止では無かったはずなんだが。

なんだか無性に腹が立ってくるな。


「えっと、そういう事だから当方のだけでもいいかな......?」

「まぁ興味本位ですし」

「んー、気に食わないから教えちゃダメ!大手おじ様」

「え、えぇ?」

「......別にいいですよ。まだまだ聞きたいことはあるんで」

「そ、そうだよね!どんどん言ってみてね!」


色々ありすぎて何から聞こうか......

質問しても答えを教えて貰えない可能性もある。

まぁ、こういう時はまず状況を再確認することからだな。


「僕は本当に現創高校?の生徒なんですか?」

「そうだね。分かりやすいよう証拠でも出してあげだいんだけど、今は何も無くて」

「校長が言うなら信じますよ。」

「先生、良かったですね。信用してくれたの一人目ですよ」

「そんな事は無いんじゃないかな?!」

「次に、ここはどこなんですか?」

「武蔵台現創高校の地下800メートル地点。詳しい説明はこの後の話でするから、他に聞きたいことはない?」


自画自賛をしたい訳では無いが、逃げないという判断は正しかったようだ。

僕の幻創についてそろそろ聞きたいが、ヒメちゃんにはぐらかされるのは想像にかたくない。それなら大人しく話を進めるべきだ。と、催促するように倒れた椅子に座り直す。


「もう充分です。ありがとうございました」

「ほ、本当に?」

「はい」

「本当に大丈夫?」

「そういうのいいんで」

「え、えっと、当方達の他にも幻創使いはいて、幻創を使った犯罪も頻繁に起こるようになってきてね。でも、ほとんどの幻創使いにとって一般人は赤子同然なんだ。たとえそれが警察官でもね。それに対抗できるよう、幻創使いの治安維持組織が十年程前から計画されていたんだ」

「......幻創使いを警察にする方が早かったのに」

「ま、まぁそうなんだけどね。色々な問題があったんじゃないかなぁ?」


甜台使がボソッと言った小言に対して、校長が苦笑いを浮かべて応答する。


「というわけで、僕たちと同じように君も組織に所属して欲しくて、ねぇ?」


狡猾な表情でヒメちゃんは僕に賛同を求める。否定なんて考えるなと言うかのように。

……こういう類の、答えが決まっているのにわざわざ応えさせたがる質問は嫌いだ。

第一に、決まった答えを言わせたいだけなら時間の無駄すぎる。

次に、思い通りになると思ってるのが気に食わない。

だから、僕はこう答える。


「拒否します」

「そっか、それは良かっt……えぇ?!」

「詳細の分からない仕事は就きたくないです」

「た、確かにその通りだ......」

「でも先輩、入らなかったら惨めに死にますよ?」

「は?」

「我々は治安維持組織であって慈善団体じゃないんだ。君が幻創使いでないなら何をしようと構わないが、そうではない。なら、危険な芽は摘んでおくべきじゃないか?」


真顔で、それでいて力強く目を見開いて、鏡の女は僕を見つめる。

その目から、冗談では無いことが理解できた。

まるで正論みたいに言っているが、ただの脅しじゃないか。


「っ......!じゃあ、入ってやるよ!」


やはり、この女は嫌いだ。でも、正論に言い返さないで黙って敗北を認める僕の方が大嫌いだ。


「そうか、そうか。それは良かった」


思い通りの答えが聞けると、女は途端に優しい微笑みを浮かべる。

自分の思い通りに進まないと否定して、一方的に相手をねじ伏せて、自分を見ているようでこの女は嫌いだ。


「ギフタード《祝福されてしまった者》へようこそ、実夢君。」




───『これにて虚無な平和は終わり。闇に埋もれた真実を見つけ出せ。』───




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