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第八話 公爵様の秘密の恋人……?

 リルク様への想いに浸る間も無く、ミリルは私を質問攻めにした。


 「リルク様とはどんな関係なんですか!?」

 「私の身の上を同情して引き取ってくださったんです。今日初めて会ったばかりだというのに……とてもお優しい方だわ」


 「ええ!? 確かにお優しい方ですけど……。最近は特にご多忙で、ご婦人は門前払いしていたんですよ。これだけの美人になると話は別なのかしら」


 ミリルは腕を組み、うーんと唸りながら考え込んだ。リルク様に門前払いされた女性たちの顔を、ひとり、またひとりと思い出しては、指を折って数えているようだ。


 「ずっとベールを被っていたから、リルク様は私の素顔を知らなかったはずです。純粋な親切心であの家から解放してくれたのね。ねえ、リルク様ってどんな方なのかしら?」

 「本当に素晴らしい方ですよ。見た通りの美男子で、私たち使用人にもとっても優しいです。領民からも慕われていますしね。でも仕事中毒なんです。心配になるほど」


 (そう言えば馬車の中でもずっと仕事をしているようだった……)


 「いい領主なのね」

 「ええ、本当に。だけど仕事に取り憑かれているから、それ以外の生きがいを見つけられるように早く結婚していただきたいという気持ちと、いつまでも誰のものにならないでいてほしい気持ち……心が二つあるっ!」


 心底悩ましいという風に悶えるミリル。思わず笑みがこぼれた。


 (本当にリルク様は慕われているのね……)


 「だけど、噂があるんです。リルク様は実は婚約していて、近々結婚なさるとか」


 婚約、という言葉にドキリとした。

 部屋の気温が急激に下がったように、身体が冷えていく……。


 「王宮でとても綺麗な方と密会なさっているのを目撃した人がいるんです。しかも一回じゃなくて、何回も。結婚契約の書類を交換しているのを見たと言っている人までいます。だからセシル様を見たとき、てっきりその秘密の恋人じゃないかと……」

 「そ、そうなの……。残念ながら私じゃないわね。ご結婚なさるなら、お祝いしないとね」


 (やだ、なぜショックを受けているの。今日会ったばかりで図々しいわ。あんなに素敵な方なら、お相手はいるに決まっているのに)


 ミリルは余計なことを言ったと謝ってきたが、そんなことは気にならなかった。頭の中は、リルク様と秘密の恋人の密会場面でいっぱいだった。

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