表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/50

第六話 「君は……美しい」

 (あの公爵様の驚き方……。分かっていても、悲しいわ)


  お腹の辺りがズドンと重くなる感覚がした。


 「今見たものは忘れてください。金輪際、公爵様のお気を害さないよう――」


 ベールを下げようとする手を強く握られた。黒い布は床にハラハラと落ちていく。公爵様は立ち上がり、必死の形相で私に言った――。


 「忘れられるわけないだろう? 君は……なんて美しいんだ。こんなに綺麗な人には会ったことがない」


 それは何年も暗闇を生きてきた私に、新しい光をくれる言葉だった。




****

 「一体どういうことだ?『醜い』とはなんだったのか……。これ以上に対極な言葉はないだろうに」

 「公爵様、お優しい言葉をありがとうございます。でも、お気遣いいただかなくても大丈夫ですわ。私、そう言っていただけただけで少し自信がつきましたから……」


 「いや、君はことの異常さを理解していない。あの家は美的感覚が狂っているのか? 君もなぜ、自分が醜いなどと……」

 「私、15年以上自分の顔を見たことがないんです。鏡を取り上げられていましたから……」


 「鏡を….取り上げられていた!? では、君は自分の顔を知らないのか。どこまで異常なんだ……。じゃあ、鏡を見てくれ、それが一番早いだろうから」


 公爵様は、小物入れから金細工の施された鏡を取り出した。持ち手には小さなダイヤモンドが飾られ、うっとりする逸品だ。


 その鏡を持つ手が震える。


 (自分の顔を見る……。15年ぶりに)


 またしても心臓が早鐘のように鳴り始めた。


 公爵様と出会ってから、心臓が酷使されて悲鳴をあげそう。

 恐る恐る鏡を覗き込むと、そこにいたのは……。


 小さなハート型の顔をした女性だった。アーモンド型の緑の目、小さな鼻、赤い唇。顔は青白いが、頬は薔薇色で健康そうだ。


 (これが私……?)


 鏡に映る美人と自己像が結びつかない。


 (私が美人なわけないわ)


 でも、眉を顰めると、鏡の中の女性も眉を顰める。

 目を見開くと、やっぱり目が大きく。

 手を振ると、同じように振り返してくる。


 「変だわ」


 そう呟くと、はははと笑い声がした。


 公爵様が肩を揺らして笑っている……!!


 「変も何も、その美しい姿が君なんだよ。よかった、君の美的感覚は正常だね」

 「でも、信じがたいです。この女性が本当に私なら……お義母様たちが嘘をついたということですか……? なぜそんなことを」

 「おそらく『嫉妬』……だろうな。君の美しさを妬み、洗脳しようとしたんだろう。君が一生あの家から出ないようにね」


 ゾッとした。


 (確かにお義母様たちは意地悪だった。でも、そんなことをしてなんの意味があるというの?私が不幸になることに……そこまでの価値を見出せるものなの?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ