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私を婚約破棄したらあなたの居場所は無くなりますけど宜しいのですか?

ざまぁが書きたかったので書きました。

「メルア・リューゲル! お前との婚約を破棄する!」

「は?」


 王子サーバルトから発せられた言葉は想定外のものだった。


 なぜならば、今この会場は私とサーバルトの「結婚祝いパーティー」だからだ。

 私は堪らずため息を吐く。


「どう言った理由で婚約破棄をお決めになったのですか? それを明確に提示してください」

「婚約破棄の理由? そりゃあ、お前よりサナの方が可愛いからに決まってんだろ?!」

「えっと、どう言う事ですか? サナって……」

「俺とサナはこれから結婚するんだ!!」

「それは本気で言ってますか?」

「はあ?! 本気に決まってんだろ! 本気じゃ無かったら宣言しないだろう?」


 何もかもが想定外な事もあって会場に来ている他の伯爵家などもポカンと口を開けている。


 王子が言っているサナとは、スラベル伯爵家の一人娘だ。前から花のように可愛いなど色んな話が出回っていたが、まさか王子と結婚するなんて……。

 普段は温厚で優しい王子は誰からも好かれていた。なのに急に性格が一変し、婚約破棄。

 表面上の結婚とはいえ、王子とは仲良く出来ているつもりだったが、こんなに周りを考えられない馬鹿王子だったとは。

 私の中の王子への評価がだだ下がりをする。


「ほらサラ! 挨拶してやれ!」


 奥からスラベル家の令嬢サラが足音を静寂の中に残して、オロオロしながらやって来ると、何やら躊躇っている様子を見せる。


「結婚するって宣言しろ! サラ!!」

「わ、私は…サーバルト王子と結婚します……!」


 サラは少し間を開けるとそう皆の前で宣言をする。

 王子は彼女を抱き寄せ、こちらを嘲笑うかのように見つめてくる。

 

「ほら、これが真実の愛だ! 分かったならさっさとこの会場から出て行くんだな!!」

「王子、最後の忠告です。本当に婚約破棄で良いのですか?」

「ああ、良いに決まってるさ!」

「はあ、分かりました。あなたとは婚約破棄という事で私はもう帰ります」

「早く帰ってくれ! 俺はこれからお前との婚約パーティーをサナとの婚約パーティーにしてやるからな!」

「そうですか、くれぐれもその選択を後悔しないようにしてくださいね?」


 私は不穏な言葉を捨てて会場の扉を勢い良く開けて外へ飛び出した。


「はぁぁぁ!! 気持ち良いー!!」


 最後の後悔する訳無いとでも言うような王子の満面な笑みは今でも思い出すと笑いが止まりそうに無い。

 実は、少し前からサラから相談をされていていて、私とサラは接点など無かったがサラが家にわざわざ来てくれた。

 王子という立場を利用してサーバルトに結婚を迫られている、とわざわざ報告しに来てくれたのだ。


 私は、五兄弟の大家族リューゲル家の末っ子だ。そして、リューゲル家はこの王国の財政のほとんどを握っている。

 リューゲル家が持っている近くの山では薬草や金、銀、銅などの鉱石もたっぷり取れるので、王子サーバルトの王家レイザーのとこでもちろん取引が行われている。

 こっちから完全に取引を無くすことは出来ないが、少なくしたり値段をあげたりできる。

 王子含めレイザー家はこれからどうなるか見る価値があるなぁ!



「うちの息子が大変ご迷惑をお掛けいたしました!」

「はあ?! なんで俺が謝んなきゃ行けないんだよ!!」

「馬鹿息子!! まだそんな事を言うか!!」


 後日、この婚約破棄は王国中にあっという間に広がり王家レイザーの当主がわざわざリューゲル家に訪問して謝罪するという前代未聞の事が目の前で起こっている。

 そして、当主に無理矢理頭を下げられ、謝させられて王子はめちゃくちゃイラついている。

 ていうか、当主は結構な親バカだったんだけど、今はしっかりしてて私は顔に出さないように心で驚いた。

 正式に結婚する前に本性知れて良かったと思う。本当に。


「だって俺は本当に愛すべき人が出来ただけだ! だから俺は悪くない」


 王子は罪を全否定。ここに来てそんな事よく言えるよね本当。

 だって目の前に私のお父様、リューゲル家の当主がいるんだから。


 すると、レイザー家の当主は王子の頭を無理矢理下げていたが、その手を離す。


「おっ謝んなくて良いのか?」


 頭を離されるとヘラヘラ笑い出すが、レイザー家の当主はそうでもないようだ。


「お前のような馬鹿息子もういいわ」

「へ?」

「いや、もう息子でも何でも無い」

「はっはぁ?! 何言ってんだよ急に!! 俺は王子だぞ? そんな事言って良いのか?」

「そんなの次男のアレクに継がせれば問題無い! お前は今ここで国外追放を命じる!!」

「は? え? 流石に嘘だよな?」


 さっきまでヘラヘラしていた顔が動揺を見せる。部が悪くなると脅し文句のような言葉を使う。本当に残念な王子だ。

 助けてという目を私に向けてくるが、彼を憐れみの目で見つめてやった。


「お、おい!! お前は俺の元婚約者、つまり婚約者だ! 俺を助けろ!」


 諦めたと思ったら今度は謎理論を展開して命乞いをしてくる。都合が悪い時ばっかこういう事をする。

 本当に呆れる。


「あなたから婚約破棄の提案を出したのでしょう? そしたらあなたとはもう繋がりもありません。一人で頑張ってみては?」

「正気か?! 外には魔獣が沢山いるんだぞ! その中で王子を放っておくのか?! 金はいくらでもやるから助けろ!」


 レイザー家の当主はハッキリと言ってやれという目でこちらを見てくる。

 ちょっと皮肉染みた言葉言っちゃお。

 私はニコニコととびっきりに笑顔になると期待した王子はベラベラと喋り出す。

 

「前からお前の事、優しいって思ってたんだ! やっぱお前なら助けてくれると思った……」

「魔獣とキャンプとか楽しそうで良いじゃないですか! 一人で頑張ってください!」

「は?」


 王子の顔がペンキで青に塗りたくったように真っ青になる。


「お金如きで釣られるわけ無いでしょう?」

「は、え、ちょっと…嘘…だよな……? キャンプ所じゃないんだが!! 危ないとこに行くことになるんだがぁぁぁ!!」

「そういう事なら構わず国外追放をしてしまおう」


 レイザー家の当主も私の返事を見てあっさりと泣き叫ぶ王子に国外追放を伝える。


「そっそうだ! サラが悪いんだ! あいつに脅されて俺は結婚させられたんだ!」

「あんなに可愛い子と結婚出来て嬉しそうな顔をしてましたよね?」

「そ、それはサラに不機嫌な顔をしたら許さないからねと、言われたからで……」

「当のサラさんはこう言ってますけどね。“王子に無理矢理結婚させられた”と……」

「なっ、あ、あいつ余計な事を……!」


 もうどうにも出来ない、所謂詰みというやつだ。王子は顔をしかめてこちらを睨んでくるが私はそれを無視する。


「もうどうにも出来ないですね、王子。いや、王子でも何でもないんだった」

「くっ……お前、そんな事して許されるとでも……」


 サーバルトは、私に向かって拳を振り上げるが、複数の騎士に取り押さえられると「おいっ離せ! 俺は王子だぞ?!」と手足をバタバタさせ、跳ね上がる。


 この件がきっかけでサーバルトは国外追放となり、新王子はサーバルトの弟アレクが継ぐことになった。


「いやだぁぁぁ! 辞めてくれぇぇぇ!」


 更に、奴隷売買などに携わっていた事も明るみになりサーバルトはこの先の人生がどん底となったのだ。

 まあ、その証拠は私が王国に流しといたんだけどね! おかげでスッキリ解決したわ!


 サラは、笑顔溢れる素敵な令嬢に戻り、この件がきっかけで仲良くなりたまに遊ぶ仲となったのだ。


「メルア様、このお菓子なんて言うんですか? めっちゃ美味しいです!」

「それはマカロンって言うのよ。そんな笑顔で食べてくれて嬉しいわ!」


 ありがとう、馬鹿王子!


 でも一つだけ不思議な事がある。


「このお茶も美味しいな! 今回のは何の茶なんだ?」


 サーバルトが国外追放された一週間後から現王子アレクがよく家に遊びに来るようになったのだけれど……何故なのでしょう?


「こう見えて薬草を使ってるのよ」

「そうなのか! めちゃくちゃ美味しいよこれ!」

「えっと……そういえば、王子はなんで私の家に来るように?」

「そんなの気にしなくても良いだろう? まあ、強いて言えばリューゲル家との関係回復だよ」


 少し間を空けて考えたと思ったら、肘をテーブルについて、何か他にも隠しているような優しい笑顔を向けてくる。

 あんな一件があったけれども、幸せに暮らせているのはみんなのおかげだ。

 

 私は呑気に将来の事を思い浮かべるのだった。

読んでくれてありがとうございます!

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