表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

ワイ、国王と対面する

「お前が異世界の勇者か?」


重厚な玉座の間で、王の低い声が響いた。


ワイは膝をついたまま、内心めちゃくちゃ焦っていた。


(なんでワイ、こんなとこにおるんや……!?)


ほんの数時間前まで、ワイは普通のなんJ民やった。

それが今、異世界の城の大広間で、国王と向かい合っとる。

完全に場違いや。


ワイの前には国王。

その隣には側近らしき男と、鎧を着た騎士たち。

後方には数十人の廷臣たちが、息を飲んでワイを見つめている。


どうやら、「異世界の勇者が現れた!」という噂が、城全体に広まってしまったらしい。


(これ、適当なこと言って逃げられる雰囲気ちゃうやん……)


ワイは冷や汗をかきながら、どうするか必死に考えた。

異世界の勇者という誤解をなんとかしたい。


「お前が異世界の勇者なのか?」


王の言葉に、ワイは一瞬口ごもった。

普通に考えたら、「ちゃいます!」と言えばええんやけど……


(いや、ここで「違う」と言ったら……ヤバいんちゃうか?)


すでに国全体が「勇者が来た!」みたいな空気になっとる。

今さら否定したら、「じゃあコイツ何者や?」となるやろ。


最悪、「怪しい奴」として処刑コースもありえる。


(あかん、ここは適当に乗っかるしかない……!)


ワイは一度、ゆっくりと深呼吸し、顔を上げた。


「……せやな。ワイが異世界から来たのは間違いないで」


王の表情がピクリと動いた。

廷臣たちの間から、驚きの声が漏れる。


「やはり……! 伝説は本当だったのだ!」

「ついに異世界の勇者が降臨された……!」


(ちょ、ちょっと待って。話が大きくなっとる……!異世界から来たっていっただけやん!)


「勇者」として認められそうになる。

王はワイをじっと見つめ、ゆっくりとうなずいた。


「よくぞ参られた、異世界の勇者よ」


(おおおおい、確定させんといて!!!)


ワイは慌てて続ける。


「あ、でも……ワイがほんまに『勇者』なんかは、まだ分からんで?」


「……なんだと?」


「ほら、勇者って言うても、色んなタイプがおるやろ?」


ワイはなんとかこの状況を誤魔化そうと、適当に話をつなげる。


「ワイは異世界から来たけど、ワイがほんまに"魔王を倒せる勇者"なんかは、まだ分からんねん」


廷臣たちがざわついた。


「どういうことだ?」


「勇者が……勇者かどうか分からんとは?」


国王は鋭い目をワイに向けた。


「説明せよ、異世界の者よ」


(あかん……ここで適当なこと言わな詰む!)


ワイの屁理屈、発動

ワイは焦りながらも、なんとか理屈をひねり出す。


「ええか、考えてみ? 今までの勇者って、"勇者として生まれてきた"わけやろ?」


「そうだな」


「せやけど、ワイは"突然異世界に飛ばされただけ"なんや」


「……?」


「つまり、ワイが勇者かどうかは、ワイが決めるんやなくて、"結果"が決めるんや」


廷臣たちが「はっ」と息をのむ。


「たしかに……!」

「勇者とは、名乗るものではなく、成すもの……!」


(おお、なんか勝手に納得しとる!)


王も腕を組み、深く考え込んでいる。


「なるほど……お前は自らを勇者とは名乗らず、その証を行動によって示そうとしているのか」


(せやせや、それでええ!)


「真に勇者であるかは、これから決まる……か。なるほど、理に適っているな」


(おお、うまいこと誤魔化せた……!)


ワイは何も証明してへんのに、なぜか周囲が勝手に納得し始めてしまった。

気づかぬうちに、スキル「なんJ民の話術」(話し相手が話を飲み込みやすくなる)が発動し、

王も廷臣も、ワイの言葉を深い哲学みたいに解釈し始めていた。


「勇者候補」として、様子を見ることに

王はしばらく考えた後、ワイをじっと見つめ、口を開いた。


「ならば、しばらくこの城に滞在し、勇者としての資質を示すがよい」


(えっ、マジで?)


「お前が本当に勇者ならば、時が経てばそれが証明されるだろう。逆に違うならば、それもまた明らかになる」


(おお……これ、もしかしてワイ、戦わんでもええやつちゃう?)


「ゆえに、"勇者候補"として迎えよう」


「ほ、ほんまか!?」


「城の一室を用意せよ!」


廷臣「はっ!」


(え、宿代タダ? 飯もタダ?)


ワイは思わず拳を握った。


こうして、ワイは異世界転生してすぐに、王城での快適なニート生活を手に入れたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ