ミッション27:「驚愕の変貌」
「――命中ッ、命中を視認したッ!」
通信に屠龍が張り上げながら
リュウセイユニット全機は機首を起こして急上昇から離脱。母船上に群立する構造物から飛び出して、上空へと飛び上がって行く。
また同時に眼下では、一拍遅れて追撃のフィアー戦闘機たちが慌て離脱。しかし数機が、ミサイル直撃の爆発に巻き込まれる様子まで見える。
「どうだ、どうなったッ!?効果確認をッ」
屠龍は離脱上昇の最中にしかし背後下方を振り向き。
自分等の攻撃の結果がどうなったか、その観測に知らせを求める声を、続けて張り上げる。
《――あれは?》
それに答えるように、通信上に誰かが声を零して上げる。
眼下、フィアー母船の中心を見れば、「変化」は確かに見受けられた。
ミサイル直撃の爆炎が晴れ、また現れたフィアー母船のコアは。見れば元より歪なそれを、一層異様に揺らめかせてその形態を崩している。
「不安定化」――そんな状態を、それを見る何名かが浮かべた。
だが、その刹那、
「――ッ!?」
「ぉぁッ!?」
その歪に揺らめくコアから――漆黒の一閃が。
太く大きな熱光線が突如として撃ち出され。
そしてそれは、まるで薙ぎ払うように大きく斜めに弧を描く形で振るわれ。次には落ちた海面にて、大爆発を巻き起こした。
「……なんッ……――だありゃァッ!?」
それを目撃した周辺空域の各員は、思わず息を飲み。
そしてその中で、屠龍は同じく驚愕から。怒号の如き声を張り上げた。
時系列は少しだけ戻る。
作戦空域の上空高高度では、激しく鋭い空戦が繰り広げられていた。
「――ッ」
うっすらとした雲が掛かる大海が眼下に広がる、その光景を贅沢なキャンパスに。まるで思うがままに風景を描くように。
フレアをばら撒きながら、鋭利に機動旋回する隼の姿がある。
そして次には隼は、今に相手取っていた戦闘機型フィアーを。
攪乱から相手にできた隙を突いて、また凄まじい機動で背後を取り。火力を叩き込み、また撃墜を成して見せた。
「フぅっ」
撃墜を成し。その直後に僅かにできた暇で、機体姿勢を安定させて呼吸を次ぐ隼。
「――ッ!」
隼が「それ」を見たのはその直後。
「何か」が視界の端に走り移ったかと思った瞬間。眼下向こうの海面にそれが落ち、そして巨大な爆発が巻き起こった。
「あれは――ッ」
思わず目を剥き、目撃したそれに声を零す隼。
《なんだあれは!?》
さらに、通信に飛び込み聞こえる聞き慣れた声。
側方を見れば、ちょうどのタイミングで旋回軌道から合流して来た鍾馗の機体姿が見えた。
少し向こうには、橘花にそのバディのコンビも見え。しかしそのその視線は一様に、驚愕を伝えながら眼下に、今の一閃からの大爆発に注がれている。
《――皆ッ、聞こえるかいッ!?》
さらにそこへ、立て続けに別の声が飛び込む。
それは今は本土のSOCにて状況を見守っている、クルェスからのものだ。
《クルェスさんッ?あれは一体ッ?》
届いたクルェスの声から間髪入れずに、おそらく何らかを知っている彼に。
橘花がその幼女ボイスを、しかし険しい色に染めた言葉で、急く形で尋ね返す。
《フィアーたちは、護りを捨てたようだ……!今のは攻撃に全エネルギーを投じての「主核砲投射」、「コア・レーザー」攻撃だ》
それにクルェスからまた返り来たのは、今の攻撃現象の正体を伝える言葉。
《っォ……!》
そのやり取りの最中にも、しかし構わず。次にはまたその「コア・レーザー」が容赦無く、薙ぐように撃ち寄越され。
今度はそれは横薙ぎに払った軌跡上で、無数の小爆発を発生させ。
周辺空域で活動していた各機がそれに煽られ、損傷する者までが現れてしまう。
おまけに、フィアー母船の対空砲火も再び活発化を見せ。
周辺のフィアー艦載機の活動も一層の機敏に、そして護りをやはり捨てて攻撃に傾倒する様相を見せ始めた。
《味方に損傷が……くっ!》
「なりふり構わなくなったかッ」
その様子光景に、鍾馗は苦く声を零し。隼もその顔を微かに険しくしてそう呟く。
《聞きたまえ、あの様相はフィアーたちも追い詰められている証拠だッ。コアは不安定化している、潜り込み、あと一撃でも叩き込めば容易く崩壊するはずだッ》
クルェスからまたさらに、説明の言葉が訴えられ来る。
《おい……あれを見ろッ!》
だが、割り入れるに近いその直後。
味方機の誰かから、何か動揺の混じった声が通信に寄越され。
また同時に各員各機の眼前に、サブウィンドウが割り込み投影され、味方機からの共有映像が流れ始めた。
《な……ッ》
それを見て、鍾馗が。いや橘花に他複数名が同時に上げた、思わずの驚愕の色が通信に上がり混じる。
共有映像が映すのは、活動をより鋭敏にしたフィアー機たち。
その全てが――「変貌」を見せていた。
飛行を続ける最中に、しかしフィアー機たちは禍々しく妖しい発光に自らを包み。
そしてそれが収まり現れたのは。
禍々しい気配を纏いながらも、可憐な容姿を携える――少女たちであった。




