ミッション26:「対艦番長」
「――いったッ!」
フィアー母船の上空、近空域。
振り掛かる火の粉は払って自分の身は戦い守りつつも、同時にスタンバイ状態にあった飛燕に屠龍等の四名からなるF-3Aのユニット。
その内から飛燕が、目撃したものに思わずの声を上げた。
フィアーの母船を、遠巻きの旋回から眼下に見ていた飛燕や屠龍が目撃したのは。
その母船の巨体の側面、「艦舷」に。B-75E爆撃隊に、ダニエル等によって放ち撃ち込まれた対フィアー大型ミサイルが直撃。
巨大な爆炎を発生させ、その母船の側面区画を大きく包み込む様子光景だ。
その爆炎は程なく掻き消え、そして次にはダニエル等の敢行した攻撃の有効打を証明するように。
多数箇所の損壊と、そして欠き削いだかのような巨大な穴を生じた。フィアー母船の艦舷が露わになった。
「どてっ腹に空いたなッ、影響ナシじゃ済むまい」
それらを見止め、飛燕の声に続いて屠龍が零したのは、そんな確証に近い推察の一声。
フィアー母船は宙空を航行しているため、艦舷に大穴を開けられようとも必ずしも「沈没」に至るわけではなかったが。
しかしダニエル等の与えたダメージは、母船の区画を大きくごっそり持って行き奪う程のもの。
さすがの堅牢強固なフィアー母船も、しかし屠龍の推察通り無事ではいられなかったのだろう。
その巨体の各所で主張していた不気味な発光を、しかし不規則に消失する様子を。目に見えての「システムダウン」と思しき有様をその巨体に見せており。
併せて母船より撃ち上げられていた、おびただしい数の熱光線の対空砲火も。全て止む事こそ無かったが、明らかにその手数が減少していた。
《ジェイボーイズッ、続きを頼むッ!》
そこへ飛燕に屠龍等の耳に、ダニエルからのものである通信音声が届く。
向こうを見れば、フィアー母船の傍より離脱上昇して行く。遠目に見ても浅くない傷を負ったダニエル等の姿が見える。
そのダニエルから伝えられた、託される声。
そう、ここからは飛燕に屠龍等の手番だ。
「了!託されましたよ、カーネル・ローマックッ!」
「ホマレへ、リュウセイユニットはこれより母船に進入するッ」
ダニエルからのそれに、飛燕が少しの冗談を混ぜたしかし威勢の良い声で張り上げ返し。
同時に屠龍は、アメリカ空軍爆撃隊に続いて作戦行動を開始する旨を統合指揮所に発信する。
「行くぞォッ!」
次には屠龍は、指揮下の各F-3A機に張り上げて告げ。
そして、屠龍は行っていた旋回飛行行動からバンクへの移行を経て、フィアー母船に向けた急降下を開始。
飛燕に他二名のF-3A少女たちも同じくの機動で、華麗に流れるまでの様相で続き降下を開始。
F-3Aユニットのチームは、自分等に託された役目のために進入行動を開始した。
飛燕に屠龍等、F-3A少女の四機からなる「リュウセイユニット」の役目は。
その腹に抱き備えたミサイル――「空対艦誘導弾 ASM-3」をベースに改造開発された、対フィアーミサイルを。
アメリカ空軍爆撃隊の第一次攻撃によって、その脅威度を削ぎ減退させたフィアー母船の内部区画に「飛び込み」。
その「コア」に叩き込み、「トドメ」を刺すことだ。
まだ残りつつも、しかし大きく減退した敵対空砲火の中を潜り抜け降下し。
リュウセイユニットの各機は進入経路を飛び進み、巨大で禍々しいフィアー母船をいよいよ眼下目前に見る。
「ぅぉッ、エグっ」
「悪趣味な城だッ」
その巨大さと、そして形容し難いおどろおどろしさに。圧巻され、同時に気圧されるものを覚えつつも。
各員はそれを、それぞれの零した悪態で払って身構え直し。
ついには、フィアー母船の懐へ飛び込み。その内へと進入。
無数の構造物の群立により、フィアーの母船上にまるで縫って通る街路のようにできた空間を。
機敏で巧み機動で飛び抜け始めた。
「ッ!」
「来やがったッ!」
その飛び込んだチームを。四方八方から無数の熱光線が、フィアーの対空砲火が撃ち寄越され、掠め始めたのは直後。
フィアーの防空態勢は、母船のその内部区画にも抜かりなく設けられていた。
「中までカッチリセキュリティか!」
「用心深いことだッ。お前ら、ビビってぶつかるなよッ」
襲来したそれらに一瞬目を剥きつつも、しかし各々は臆しはせず。
屠龍は今現在の可憐なお嬢様フェイスに反した、荒々しい声で指揮下各員に張り上げ伝える。
「了ッ」
「もちろんッ」
それにF-3A少女(もちろん正体は男性)各員は答え、そして飛行行動を継続。
母船上の区画に構造物を縫うような、そして襲う対空砲火を舞って揶揄うかの如きの、それぞれの機動飛行で。
狭く厄介な経路をギリギリを掠め、しかし可憐なまでの様相で飛び抜けていく。
「!、後方ッ!」
「ッ」
その最中の直後。列機の殿を務めるF-3A少女、リュウセイ7-4の彼女(彼)が知らせる声を張り上げた。
それを受けて屠龍が一瞬だけ背後を振り向けば。そこに見えたのは、複数機の戦闘機型フィアー。
まず間違いなく、屠龍等に対応するためのフィアー側の追撃機。それが屠龍等と同じく母船内の区画へと飛び込んで来て、縫い進む飛行にて追撃を始め。
そして次には、その背後のフィアーたちが熱光線の銃火を撃ち放ち始め。それが屠龍等の間近を飛び抜け掠め始めた。
「ぬぉッ、そりゃ追っても来るかッ」
「構うなッ、前だけ見ろッ!」
歓迎し難いそれに出現に、飛燕が声を零して各員も苦い顔を微かに作るが。
しかし屠龍が張り上げ、皆は意識を前方に向け直して、ただ飛び進むことに集中する。
「宇宙戦争のアレみたいだッ」
「余計な事ほざいてると、頭から突っ込むぞッ!」
状況にも関わらず、いや苛烈な状況だからこそ、少しでも自身を落ち着かせたいが故か。飛燕は冷や汗交じりにしかし軽口を吐き。
それに屠龍からは忠告が、だがやはり軽口を交えて飛ぶ。
そして各ユニットはそれぞれ、フィアー母船の銃砲座やフィアー追撃機からの熱光線砲火に晒されながらも。
ブレイク行動を混ぜながらも飛行運動に速度を保ち。構造物を掠める際どい軌道で、母船上を飛び進み続ける。
「――ッ、見えたぞッ」
そして間もなく、「それ」が見え、屠龍は知らせる声を上げた。
進行方向の向こう正面。ここまで続いていた構造物の並ぶ区画が開け。
その先に円形の、リング状の巨大な土台を設ける空間が。
そしてそこに浮遊輪座する、巨大な球体――「コア」が見えた。
フィアー母船のコアである、ブラックホールの如きその球体は。それを正面すぐに捉えた屠龍等に、遠目に確認した時以上の禍々しさを伝え感じさせる。
そして屠龍等がそれを感じたのも一瞬。
直後に、正面に周囲から寄越され始めたのは。そのコアの周りに配置された多数の銃砲座からの、一層苛烈な熱光線の対空砲火だ。
「ッぉ……ビビるかよッ――保て、堪えろッ!」
寄越され襲い来たそれに、屠龍に各員は顔を顰めながらも。
しかしついに辿り着いた「どデカイ」標的を前に、すでに臆し怯んだりはしない。
屠龍はその意志を声に零し、そして指揮の各員にも張り上げ訴える。
「――捉えた」
そして屠龍は、その最中にも同時進行で進めていたロックオン手順を、次には完了。
それは飛燕に、ほか各機も同じ。
そして――
「――発射ァッッ!!」
屠龍が雄々しく発し上げ。そして同時に屠龍に、飛燕に皆が強くその意志を念じ。
それぞれが腹に抱え備えた対艦誘導弾改造の対フィアーミサイルが、一瞬の自由落下ののちに点火。
バーナーを一気に吹かし、「コア」に向けて撃ち放たれた。
堅牢な守りのコアに叩き込むことを想定し、アメリカ軍爆撃隊が用いたもの以上に瞬間速度性能に特化させたそのミサイル群は。
濃密なフィアーの対空砲火を容易く潜り抜け。そして、コアに至り――
巨大な爆炎に衝撃を生み出した――




