廃病院
『〇〇病院の各病棟奥の窓を3回開閉すると幸福になれる。』との噂を信じた男女が、体験した不思議な出来事。
夜の廃病院に、若い男女がやって来た。
ギー、ギギギ!
錆び付いたドアを開け、中に入る。
女「ねぇ、本当に入るの?」
男「入るよ。」
女「私、怖いよ…。」
男「大丈夫だよ。」
2人は、月明かりが照らす中を、奥へ進む。
コツコツコツ!
2人の足音が響き渡る。
その時…!
カランカラン!
女「きゃっ!?」
突然の音に、男にしがみつく。
男「おっ、おい、動けないって!」
女「怖い怖い怖い怖い…!」
男「物が落ちただけだって。」
女「誰も居ないのに、何で物が落ちるの!?」
男「風でも吹いたんだって。」
女「帰ろうよ…。」
男「来たばっかりだぜ。」
女「幸運にになれるからって来たのに、これじゃあ不幸だよ!」
男「大丈夫だって、僕も居るんだから。」
女「そんなの安心出来ないって…。」
男は、手を引っ張り、泣き出しそうな彼女を連れて進んで行く。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
2人は、エレベーターホールに着いた。
男「5階もあるのか。」
女「な、何をするの…?」
男「各階の病棟にある、奥の窓を3回開閉するんだって。」
女「えっ、全ての階を周るの!?」
男「周るよ。」
彼は、上りボタンを押す。
男「おっ、動くんだ。」
女「いやいやいや、ここ廃病院だよね?」
男「うん、そうだよ。」
女「何で、まだ電気通ってるのよ!」
男「さあ?」
女「絶対おかしいよ。」
男「そうかな?」
ピンポーン!
男「おっ、来たぞ。」
ドアが開くと、大きな窓があり、中は明るかった。
男「意外と明るいね。」
2人が乗り込むと、彼は5階のボタンを押した。
男「どんな病棟かな。」
女「…。」
エレベーターは、動き出した。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ピンポーン!
男「着いた着いた。」
彼は、彼女の手を引きながら、エレベーターを降りる。
男「各階に病棟は1つみたいだね。」
ギー、ギギギ!
彼は、病棟入口のドアを開ける。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
コツコツコツコツ!
病棟内に、2人の靴音が響く。
男「静かだな。」
部屋のドアは全て開いている。
男「部屋の窓も開けていけ?」
女「絶対に嫌!」
男「そんなに怖がらなけても…。」
彼は外から部屋の中を見ていくが、彼女は下を向いている。
男「大部屋ばかりだな。」
女「早く歩いてよ。」
男「押すなって。」
2人は、ベッドを避けながら奥に辿り着いた。
男「この窓を、3回開閉するのか。」
ガラガラ、ガラガラ!
窓を1往復させる。
男「これで1回。」
特に何も起こらない。
ガラガラ、ガラガラ!
男「これで2回。」
今回も特に何も起こらない。
男「3回目やる?」
彼女は何度も首を振り。
女「いやいや!」
男「窓を開閉するだけなのに。」
ガラガラ、ガラガラ!
男「3回目っと!」
ヒュ〜〜!
生暖かい風が吹いた気がした。
女「なっ、何!?」
男「んっ、どうしたの?」
女「何か通った!?」
男「そんなわけないだろ、気のせいだって。」
女「ヒュ〜って!」
男「風だよ風。」
彼は彼女の手を引き、エレベーターホールに戻った。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
彼は次に4階のボタンを押した。
女「どうして、5階にエレベーター無いの?」
男「動いたから?」
女「そうじゃなくて!」
男「えっ、動いたから無いんじゃないの?」
女「そうなんだけと、そうじゃないの!」
彼はチンプンカンプンだ。
男「どう言う事?」
女「エレベーターって、何をしたら動き出すの?」
男「ボタンだけど?」
女「私達、何で上って来たの?」
男「エレベーターだけど?」
女「じゃあ5階にないとおかしいでしよ!?」
男「あっ、確かに。」
女「絶対、何か居るのよ…。」
男「でも、もう始めちゃったし。」
女「そんなの外に出たらいいじゃない!?」
男「途中で止めたらダメなんだよ…。」
女「何でよ?」
男「途中で外に出たら、消えちゃうんだって…。」
女「何でも、それを知っててやるのさ!?」
男「好奇心?面白そう?」
女「バカ!」
彼女は、頭をポカポカと叩く。
男「痛ててて。」
女「消えちゃったらどうすんのよ!?」
男「だから、最後まで…。(小声)」
女「何?」
男「最後まで…。(小声)」
女「早く次行くわよ!」
立場が逆転し、彼女が彼を引っ張り、エレベーターに乗った。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ピンポーン!
4階に着いた2人は、病棟内を見て愕然とした。
男「な、何だこりゃー!」
女「まあ、散らかってるわね。」
病棟内は、ベッドや掃除用具で、足の踏み場も無かった。
男「1つ1つ片付けながら進むか査定」
女「そうね…。」
彼女は掃除用具をベッドに乗せる。
女「何でこんなに散らかってるの!?」
男「散らかしたままにしたんだろうね。」
彼はベッドを端に寄せ、通り道をつくる。
男「部屋の中に押し込む?」
女「余計な事はしない方が…。」
男「わかった…。」
2人で奥まで片付けた。
男「結構、時間が掛かったな。」
女「早く終わらせようよ。」
ガラガラ、ガラガラ!
特に何も起こらなかった。
男「何も起こらないね。」
女「怖い事言わないで。」
ガラガラ、ガラガラ!
その時!
パリーン!
遠くて割れる音がした。
女「キャッ!」
彼女は、屈み込む。
男「何かが割れた音だね。」
女「早く終わらせようよ。」
ガラガラ、ガラガラ!
ヒュ〜〜!
生暖かい風が吹いた気がした。
女「また、風が…。」
男「風吹いたの?」
女「気付いてないの!?」
男「全然。」
2人は、片付けた廊下を歩いてエレベーターホールへ向かった。。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
エレベーターホールで、彼は下のボタンを押すと、ドアがすぐに開いた。
男「今回は動いてなかったね。」
女「そうねって、動くのがおかしいからね。」
彼は3階のボタンを押す。
男「さっきより暗い?」
女「夜遅いからでしよ。」
男「そうなのか。」
2人は3階へ降りていけ。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ピンポーン!
男「さあ、3階だ。」
彼は入口を開けると、病棟内は光光と灯りが灯っていた。
女「どうして明かりが…。」
男「しかも、綺麗だ。」
女「ここって廃病院なんだよね?」
男「うん。」
女「今でも動いてる綺麗さよ。」
男「そうだね、でも人は居ないよ。」
女「明るいなら怖くないわね。」
男「これの方が怖い気が。」
彼女は明るいからか、足取りが軽い。
男「さっきまでとは大違いだ。(小声)」
女「何か言った?」
男「いや。」
2人はスイスイと奥にやって来た。
ガラガラ、ガラガラ!
ピコーン、ピコーン、ピコーン!
ナースコールが鳴る。
女「何の音?」
男「ナースコールじゃないの?」
女「誰も居ないのに何でなるのよ。」
男「さあ、何でかな。」
彼はコールの部屋を探す。
男「あった!」
彼が光ってる部屋を指差す。
女「怖いから止めようよ…。」
男「まだ1回しかやってないからな。」
女「そ、そうよ。」
彼は頷く。
ガラガラ、ガラガラ!
特に何も起こらなかった。
男「今度は何もないね。」
女「何も起こらない方がいいわ。」
ガラガラ、ガラガラ!
特に何も起こらなかった。
男「あれ?」
女「何も起こらなくて良かった。」
男「風も無い?」
女「無いわね。」
2人は何も無かったのを不思議がりながら、エレベーターホールに向かった。
≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈
2人が看護詰め所に差し掛かった時だった。
プルルル、プルルル!
2人「!?」
プルルル、プルルル!
男「で、電話が鳴ってる。」
女「何でよ、怖いじゃない!」
プルルル、プルルル!
男「出る?」
女「止めなさいよ、危ないわよ。」
男「でも、気にならないか?」
女「き、気にはなるけど、止めるべきだよ。」
プルルル、プルルル!
彼は好奇心に負け電話に近づく。
女「ちょ、ちょっと!?」
ガチャッ!
彼は受話器を耳に当てる。
?「ジーー…。。」
ガチャッ!
女「ど、どうなの?」
男「ジーって音だけ。」
女「そ、そうなのね…。」
プルルル、プルルル!
2人「!?」
プルルル、プルルル!
男「また鳴ってる。」
女「もう離れましょうよ。」
男「これだけ、何も無かったら次行くから。」
ガチャッ!
彼は再び受話器を耳に当てる。
?「………君は誰…。」
ガチャッ!
彼は驚いてら受話器を置く。
女「な、何よ?」
男「君は誰って聞かれた…。」
女「だから、止めとこうと言ったのに…。」
男「次、行こう。」
2人は急いでその場を離れた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
エレベターホールへ来た2人は、下ボタン。連打する。
男「また、違う階にあるね。」
女「早く来てよ!」
彼女はボタンを押しまくる。
男「押し過ぎじゃない?」
女「早く来るかもしれないじゃない!」
男「意味がないと思うけど…。」
暫くするとエレベーターが開いた。
男「2階に行こう。」
2人は2階へ降りていった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ピンポーン!
2階に降りると、元の暗い病棟だった。
男「3階とは違うね。」
女「上の階がおかしいのよ。」
2人が病棟内に入ると、壁が煤け奥が霞んでいた。
女「奥の窓が見えないわよ。」
男「火事でもあったのかな…。」
女「2階だけ火事ってないでしよ。」
男「だよな…。」
彼は奥へ進もうとする。
女「勝手に進まないでよ。」
男「ご、こめん…。」
彼は彼女の手を引く。
≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈
霞んだ廊下を歩き奥までやって来た2人。
ガラガラ、ガラガラ!
男「あと2回。」
ピコーン、ピコーン!
ナースコールが鳴り出す。
女「また!?」
男「今回は、見える部屋全部みたいだよ。」
女「鳴り過ぎでしょ!」
ピコーン、ピコーン!
男「これずっと鳴るのかな。」
女「耳に残るから嫌かも…。」
ピコーン、ピコーン!
彼は鳴り響く音を気にしつつも、窓を開閉する。
ガラガラ、ガラガラ!
ピコ…。
音が鳴り止んだ。
男「止まった。」
女「よかった…。」
しかし…。
ジリリリ、ジリリリ!
非常ベルが鳴り出した。
男「今度は非常ベルか…。」
女「次は非常ベルなの!」
ジリリリ、ジリリリ!
男「非常ベルって、止められるの?」
女「知らないわよ、押した事ないもの。」
ジリリリ、ジリリリ!
女「火事は何処なの!?」
アナウンス「火事です、火事です、2階トイレで火事です!」
ジリリリ、ジリリリ!
男「2階トイレだって。」
女「2階はここじゃない!」
男「そう言えばそうだね。」
女「何でそんな反応なのよ!」
男「3回目で止まるんじゃないの?」
ジリリリ、ジリリリ!
アナウンス「火事です、火事です、2階トイレで火事です!」
女「早く窓を開閉して。」
男「わ、わかった…。」
ガラガラ、ガラガラ!
ベルは止まった。
男「止まった…。」
しかし…。
男「何か焦げ臭い?」
女「本当に火事じゃないの!?」
男「ましか…。」
病棟入口の方から煙が近づいてくる。
モワモワモワ!
2人が煙に飲み込まれる。
男「うぉっ!」
女「なんなの!?」
シャ〜〜!
2人「!?」
スプリンクラーが動き出し、2人が水浸しになる。
男「つ、冷たい!」
女「びしょびしょじゃない!」
シャ〜〜!
スプリンクラーにより、煙が消え、霞んでいた廊下がはっきり見えるようになでた。
男「早く戻ろう。」
彼女は頷き、彼に手を引かれながら、エレベーターホールに向かった。
ピチャピチャピチャ!
≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈
エレベーターホールに2人が入ると、濡れていたはずの服が…。
男「あれ、服が…。」
女「乾いてるわね…。」
彼は、服をバサバサさせる。
男「不思議だ…。」
2人は病棟を見ると、スプリンクラーが動いていた。
男「別の空間なのか…。」
女「怖いから言わないで。」
彼は下のボタンを押すと、ドアが開いた。
男「1階へ行こう。」
女「うん。」
2人は1階へ降りていく。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ピンポーン!
ドアが開くと、ホールだけ照明がついていた。
女「また照明がついてる。」
男「ここだけみたいだよ。」
女「来た時照いてなかったよね?」
男「うん、暗かったよ。」
女「私達、無事に出られるのかしら。」
男「きっと大丈夫!」
女「そんな自信どこから出るのよ…。(小声)」
2人が病棟内に入ると、中は掃除用具が散乱していた。
女「また片付けなの!?」
男「そうみたいだね…。」
女「私、掃除屋じゃないのよ!」
男「まあまあ…。(僕は入ってない…。)」
ガチャガチャ!
2人はモップやゴミ箱を端っこに避ける。
女「放っておかないでよ。」
男「たしかにね…。」
ガラガラガラ!
彼は台車を病室に押し込んでいく。
男「ベッドが無いだけマシか…。」
2人はどんどん片付け奥へ辿り着いた。
≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈
男「ここが最後の窓か。」
女「何かウキウキしてない?」
男「何が起こるのかなって。」
女「止めなさいよ、怖いんだから!」
彼女は何度か叩く。
男「色々起こったから気になるじゃん。」
女「早く終わらしてよね。」
男「わ、わかった…。」
ガラガラ、ガラガラ!
特に何も起こらなかった。
男「何も起こらない。」
女「起こらなくていい、起こらなくていい!」
男「残念…。」
女「残念じゃないわよ!」
彼女に、また叩かれる。
ガラガラ、ガラガラ!
突然、空の色が赤色になり始めた。
男「空が…。」
女「何、何が起こっているの!?」
暫くす?と、赤い空が、緑色の空に変化し始めた。
男「緑色の空なんて初めて見た。」
女「緑の空なんてあり得ないでしょ!?」
男「だけど…。」
再び空が、青色に変化し始めた。
男「今度は青色だ…。」
女「空がおかしくなっちゃったの!?」
男「グラデーションを見てるみたいだ…。」
女「そんな事言ってる場合じゃないわよ!」
男「また変わり始めたよ。」
空が、青色から紫色へ変化し始めた。
男「すごい光景だな。」
女「何でワクワクしてるのよ!?」
男「こんな光景、二度と見れないよ。」
女「見たくない、見たくないわよ!」
空は、また赤色に変化し始めた。
男「赤色に戻った!」
女「早く最後の1回をやって!」
男「わ、わかったよ。」
ガラガラ、ガラガラ!
最後の開閉が終わった時だった。
ゴゴゴコッ!
突然、床が揺れだした。
男「じ、地震だ!」
2人は、窓から離れしゃがみ込んだ。
ゴゴゴコッ!
男「まだ揺れるのか!?」
カランカラン!
モップが彼女に向かって倒れてくる。
男「危ない!」
彼は彼女に覆い被さる。
カランカラン!
男「痛ててっ!」
女「ちょっと大丈夫!?」
コロンコロン!
彼は背中のモップを払い除け起き上がる。
男「うん、大丈夫。」
彼女も起き上がると、彼に付いたホコリを払い落とす。
女「あ、ありがとう…。」
男「とっさに動いただけだから。」
2人は、窓の外を見ると、空の変化はおさまっていなかった。
男「空は変化したままだな。」
女「ねえ、鳥居なんて立ってた?」
男「5階から外はみてたけど、鳥居なんて無かったよ。」
女「じゃあ、あれは?」
彼女の言葉通り、病院を囲むように鳥居が並んでいた。
男「一体どう言う事?」
女「私にもわらかないわ。」
男「外に出てみよう。」
女「えっ、外に行くの!?」
男「全ての窓を開閉したんだから。」
女「そうだけど、ここ私達の世界じゃないよ…。」
男「出てみたら元の世界かもしれないし。」
女「でも…。」
彼は彼女の手を握り。
男「絶対に離さないから。」
女「う、うん…。」
2人は、外へ向かった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
エレベーターホールを抜け、病院の入口にやって来る。
コツコツコツ!
2人の足音が響く。
周りの窓からは鳥居がはっきりと見える。
男「本当に鳥居に囲まれてるみたいだ…。」
女「本当に帰れるの?」
彼女の手の力がが更に強くなる。
男「じゃあ、外に出るよ。」
彼女は小さく頷く。
ギー、ギギギ!
彼はドアを開けた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
外に出た2人は、言葉を失った。
2人「……。」
中から見た外の世界と変わらなかった。
男「鳥居だらけ…。」
女「やっぱり、元の世界には戻れないんだわ!」
2人が雨避けの屋根を出ると、大鳥居に続く石畳が現れた。
男「まるで参道だな…。」
女「参道って、神社の?」
男「ああ、鳥居から病院に続く参道って、どう言う事?」
女「私に聞かれても…。」
2人が鳥居に向かって歩いていると、石のベンチに腰掛ける、長杖を持った顎髭の長いおじいさんが居た。
男「おじいさんが居る。」
女「わかってるわよ。」
男「声かける?」
女「怪しすぎるわよ。」
男「だよな、通り過ぎるか…。」
ニコニコ笑うおじいさんを横目に通る。
男「笑顔のおじいさんだったな。」
女「うん…。」
2人が更に進むと、鳥居の前に少年が立っていた。
男「今度は子供が立ってる。」
少年は手招きをしている。
女「手招きしてるわね。」
男「さすがに話しかけるしか。」
女「そうね…。」
手招きをする少年のもとへ来ると。
少年「君は誰、どうしてここに居るの?」
男「僕達は、幸運になるために来たんだ。(聞き覚えのある声だな…。)」
少年「そうなんだね、でもここに居たら危ないよ。」
女「どうして危ないの?」
少年「それは言えない…。」
男「言えないのに危ないの?」
少年「うん、だからついて来て。」
男「どうしよっか?」
女「やっぱりここは危ない世界なのよ。」
男「そうなのかな…。」
女「きっとそうよ。」
少年は、2人を置いて歩き出す。
女「待って!」
彼女は、彼の手を引っ張り、少年を追い掛ける。
≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈
鳥居に来ると。
少年「鳥居を潜ったら、後ろを振り返らないでね。」
男「どうして?」
少年「戻れなくなるから。」
女「わ、わかったわ。」
少年「じゃあ、ついて来て。」
少年と2人は、鳥居を潜った。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
鳥居を潜ると、中はトンネルだった。
男「長いトンネルだな…。」
女「絶対に手を離さないでね。」
男「ああ。」
少年「後ろから呼ばれても、振り返ったらダメだよ。」
男「わ、わかった。」
女「うん。」
≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈≈
出口の見えない中。
?「こっちへおいで。」
後ろから呼びかけられる。
男「これの事だよな…。」
女「振り返らないでよ。」
男「わかってるよ。」
声を無視して歩いていると。
?「楽しいお祭だよ。」
また後ろから呼びかけられる。
男「お祭りだってさ。」
女「振り向かせる口実なんだから無視して。」
少年「もうすぐ出口ですよ。」
少年が居うと、小さな光が現れ、徐々に大きくなる。
男「出口だ!」
女「やっと抜けるのね。」
少年と2人がトンネルを抜けると、光に包まれた。
少年「君達は、助かったよ。」
男「どう言う事?」
少年「あの病院は、神様の病院なんだ。」
女「神様の病院?」
少年「そうだよ、神様が来るんだよ。」
男「神様って、怪我や病気するの?」
少年「しますよ、だから人間が居てはダメなの。」
女「そうだったのね。」
少年「じゃあね、バイバイ。」
光が収まると共に、少年も消えた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
気が付くと、廃病院の前に立っていた。
男「ここは…。」
女「元の世界に戻って来れたの?」
2人が後ろを向くと、廃病院が建っていた。
女「良かった、戻って来れた!」
彼女は、彼に抱きついた。
男「あっ、思い出した!!」
女「な、荷を!?」
男「電話の声だよ!」
女「電話って、突然鳴った電話の事?」
男「そうだよ、あの声、少年の声だよ!」
女「じゃあ、あの少年も神様だったの!?」
男「かもしれない…。」
女「じゃあ、良い神様だったのね。」
男「だろうね。」
2人は、廃病院に手を合わせ、帰って行った。
最後まで読んでくれてありがとうございます。