棍棒での殴り合い
黄色い砂塵が舞い散り陽の光さえない荒野。ゴツゴツとした岩場の真ん中の沼地で二人の男たちが棍棒で殴り合っていた。彼らは腕に棍棒を縛り付けていて防具代わりの薄汚れた鍋を頭に被っていた。相手を殴るたびにカッコンと音が響く。いったい彼らは何のために殴り合っているのだろうか? もしかしたら本人達も忘れてしまっているのかもしれない。
岩場の影で何人かの人達が男達の殴り合いを眺めていた。その顔は真っ黒く塗り潰されていて白いバツ印が書かれていた。時折ヤジが飛ぶと男達は嬉々とした表情を浮かべながら棍棒で殴り合った。何人かが手にしていた本や心臓を男達に向かって投げた。隅の方では何人かがあくせく働きながら紙に何かを書き散らしていてその横では手紙を括り付けた鳩を鳩笛の合図と共に天高く飛ばしていた。
岩場の影の人達がせせら笑う。男達は自らに呪縛され足ががんじがらめになっていて動けず互いに殴り合いながら沼に沈んでいくだけだった。