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暗殺者ですが、狂戦士扱いされて困ってます  作者: 砂糖 多朗
第一章 狂乱の暗殺者、ノガミ
8/50

勇敢な狼の戦士

獣人たちの国、獣王国において、王とは最も強き者が務める役職である。

十年に一度腕に自慢のある獣人が集い、王の称号を懸けて神の前で戦う『神前試合』を行い、ルール無用、仁義なしの戦いを何日も続けて、最後の最後まで勝ち残った者が王女となる。


ガルムは歴代の勝者の中でも珍しく、真正面から全員を打ち破った猛者である。

搦め手を使わず、魔力も祝福も無く、己の力と技量だけで勝利し続けた彼女は、言ってしまえば真っ直ぐ過ぎた。


困っている人が居れば力を貸す。常に研鑽を怠らず、決して驕らず、利益の為だけに力を振るう事はしない。

また普段であればそれを他人に強要する事無く、他者の在り方がどうあろうと、人は人と割り切れる柔軟さも持っていた。


―――だが、セナに対するジンの発言、対応。それはどうしても容認できなかった。


「あのクソ野郎、信じたアタシが馬鹿だった……!」


行き場のないストレスを発散させるように独り言を続けながら、誰の目にも追えない速度で街を出て、シシリア村へ続く道を駆け抜ける。

その手にはジンから奪った剣が握られており、時折ソレに視線を向けては不快そうに鼻を鳴らしていた。


彼女は本来、ジンの使うような片手剣ではなく大型の両手剣を使っているのだが、リッツァ盗賊団に襲われた際に愛用していた武器を失くし、ジンが護衛していたので急いで武器を買う、或いは取り戻す必要も無くそのままにしていた為、仕方なく彼の片手剣を持ってきたのだ。


どうせ戦うつもりが無いのならアタシが使う。そんな考えの下奪ってきたが、片手剣にしてはやけに重いソレに、少し驚いていた。


「友達だって、良い奴だって、思ってたのに……ッ!!」


彼女がジンと知り合ってからたった一週間と少ししか経過していないが、それでも彼女がジンという人間をある程度理解し、気に入るには十分な時間だった。

彼女にとって今までのジンは、暗殺者ノガミという側面を持ちつつも、面白く気の良い協力者であり、冗談を言い合えるような仲であった。時折その回りくどい態度や大事な話を最後の最後までしない悪癖に苛立ちを覚える事もあったが、なんだかんだ彼の事は並の友人よりも気に入っていた。

自分の命や、王国に関係する一件に深く関わっているという事もあるだろう。


だからこそ、セナの姉を助けて欲しいという純粋な願いを金の一言で断った事が許せなかった。自分の信じていたジンという男がそんな程度の人間だったのかと、とても傷ついた。


無意識に、柄を握る力が強くなる。特殊な素材で作られているのか音を立てる事すらない頑丈なソレに、さらに不快になったのか舌打をする。


―――そして、彼女が王都リストバルナを飛び出してから早一時間。ついにシシリア村が見え始めた。


「看板……よしっ、着いた!」


即座に足を止め、慣性に従って少しスライディングして、魔物の侵入を防ぐ門まで向かう。

門番らしき鎧甲冑の男はガルムに気が付くと、小さく「この時期に珍しいな」と呟きながら彼女に会釈した。


「旅人かい?」

「いや、ここに用があって来た」

「この村に……?もしかして、その剣……ギルドから派遣された冒険者!?」

「それも少し違う。けど目的は同じだ。アタシの名前はガルム。セナって子から話は聞いてる。なんなら村に入らなくても良いから、ゴブリン共の巣穴がある場所を教えてくれないか?」

「セナちゃんから!?そうか、あの子は増援を呼べたのか……村に入らなくても良いなんてとんでもない。一度村長に会って、詳しい話をあの人から聞くと良い。それと、ゴブリン討伐の前に装備を整えたり、軽い休息をとるのも大事だ。―――ここだけの話、僕も村に攻め込んできたゴブリンの相手をしたんだが、少なくとも奴らの本拠地に挑むには十人程度の戦力は必須だと思うね。一人でここまで来てくれた以上、君はかなり腕に自信があるようだけど、あまり過信しすぎない事をお勧めするよ」

「あぁ。ありがとな!」


門番に礼を言い、村の中へ入る。

親切な門番に少し気分を良くした彼女は、急いでゴブリンの住処へ向かいたい気持ちをぐっと堪え、まずは村長の居場所を探す事にした。


とは言った物のシシリア村はさほど大きな村では無く、また村長が集会所に居るという情報をすぐに入手できた事から、捜索開始から五分とかからず村長に会う事が出来た。

てっきり男の老人かと思い込んでいたガルムは、若い(といっても三十後半程度に見える)女性が村長を務めている事に驚きを隠さず、村長の方もそのような態度は慣れているのか笑っていた。


「……それで、ガルムさんはセナに言われてここまで?」

「はい。本当は、別の奴に依頼をするつもりだったらしいんですけど……ソイツ、金が無い奴からの依頼は受けれないって言って突っぱねて。じゃあアタシがやってやる!って」

「まぁ……それじゃあ、貴方は特にどこかに所属しているとかそういう事は無いのですか?」

「そうなりますね。ただ、その断ったヤツがアタシの護―――アタシから別に依頼を受けている状態だったので、もしかしたら依頼の関係で暗殺―――情報ギルド所属扱いになってるかもしれません」

「なるほど、暗殺ギルド……そこなら確かに、依頼を受けてもらえなくても仕方ありませんね。寧ろ貴方が居合わせてくれて僥倖です。獣人の方は皆お強いですから」

「皆が皆そう、という訳じゃないですけどね……けど、アタシは強いですよ。なんせ獣王国の―――獣王国の、兵士ですから」


胸を張って自慢げに話す彼女を、村長含む村の人々は頼もしそうに見つめ、笑顔を見せた。

獣人は人型四種の中でも闘争本能が強く、実際に戦闘能力も並の他種族より高いと有名な為、特に素性を明かしていないガルムですらある程度の信頼を受けているのだ。


「では、ゴブリンが棲んでいる山の地図をお渡しします。それと、回復薬や毒消しの薬草、灯りも必要ですね」

「いや、そんなに受け取れませんって」

「いいえ。寧ろ受け取っていただかないと困ります。貴方はセナが連れてきてくれた私達の希望。先に向かってしまった彼女達を救ってくれるかもしれない方。万全を期していただきたいのです。勿論、これらは全て無償で提供いたします。他に必要な物があれば、何なりと」

「………そ、っか。んじゃ、弓矢も貰えますか?遠距離の攻撃手段も、一応確保しておきたくって」

「はい。すぐにお持ちしますね」


ガルムの要望を聞き、部屋の奥に消えた村長は、しばらくして小型の弓と大量の矢が入った矢筒を手に戻ってきた。

どうやら有事の際に門番を筆頭とした男衆が使うための武器が、奥の倉庫に閉まってあるらしい。この弓矢も、以前ゴブリンから侵略された際に使われた物なのだとか。

一応定期的に状態確認を行っている為、戦闘中に壊れる事は無いはずだと村長は語る。


「……うん。これなら」

「他には……」

「いや、これで大丈夫です。―――それじゃあ、早速向かいます」

「よろしく、お願いします」


深々と頭を下げる村人たちに真剣な顔で頷いて、その場を立ち去る。

彼女はそのまま村の外へ出て、地図に記された場所、村長から聞いた山へと走って向かった。


※―――


「くっせぇ」


山を登り始めてすぐ、優れた嗅覚を持つ彼女は顔を顰め、鼻を抑えた。

一見するとただの森だが、周囲には排泄物のような匂いと腐敗臭が入り混じった悪臭が漂っているのだ。そしてその匂いは、近くにゴブリンが居る事を示す。


「アイツ等は確か、武器に植物とか魔物の毒を塗ったくって、力の無さをカバーしてるんだっけな」


ゴブリンは魔物にしては力が弱い。それ故に知識を活かした狩りを行い、得た物を活かし次の狩りに役立てる。毒は彼らが扱う『武器』の中で最もポピュラーな物だ。

また日常的に不潔な場所に住み(彼らは基本糞尿垂れ流しで洞窟に住まう)毒を大した用心もせず扱う為、かなりの毒耐性を持つ。殺虫剤で虫を大量に殲滅するような方法がとれないのだ。


「―――。ソコッ!!」


適当な石ころを掴み、徐に投擲する。風を切る豪快な音が一直線に向かった先には、隠れてガルムの様子を伺っていたゴブリンが一匹。

その脳天は高速で飛来する石ころに貫通され、呆気なく絶命した。


「嗅覚が使えなくっても、気配で簡単にわかるっての。―――コイツの足跡たどれば本拠点に着くな」


当然ながら地図には簡単な山の地理情報しか載っていない。だからゴブリンの住処を探すまでに時間がかかると踏んでいたのだが、それは杞憂だったようだ。

歩いてきた痕跡は全く隠されておらず、彼女は間抜けなゴブリンを鼻で嗤いつつ、その痕を辿った。


数分後。次第に濃くなっていく悪臭に顔を顰めながらも立ち止まること無く進み続けた彼女は、ついに洞窟を発見する。悪臭はそこから漂っており、足跡もこの洞窟に繋がっていた。


「うぷっ……クソッ、やっぱゴブリンは嫌いだ……」


警戒しつつ足を踏み入れる。特に罠が仕掛けられている様子も、ゴブリンが見張っている気配も無い。なんなら隠れられるようなスペースも無いので、警戒しすぎて損した、と少し肩の力を抜いた。

ただ緊張を微かにでも緩めると匂いにやられてしまいそうなので、結局気は引き締めっぱなしになったが。


灯りにと渡されたランタンのような魔道具を片手に、洞窟の奥へと進んでいく。足元を一瞬見て後悔した以外には、特に何も起きていない。

拍子抜けした彼女だが、もしかしたらゴブリン共が先日捕らえた冒険者たちで『お楽しみ』している最中なのではという最悪の想定が脳裏を過り、あまりこの状況を楽観視するわけにはいかないと、歩くペースを上げた。


数分程真っ直ぐに歩き続けて、ついに変化が起きる。攻撃を受けたのでも、敵の姿を確認したのでもない。

ただ、道が綺麗になったのである。


「―――何?」


急に悪臭も無くなり、何なら彼女が持っているような光源魔法の籠ったランタンが壁に埋め込まれる形でいくつも設置され、視界も確保されている。

当然だが、普通のゴブリンがこんな真似をするはずが無い。


「ぐ、ぎぎ、グギギギッ」

「っと、ようやくお出ましか!」


一体何が起こっているのか、と困惑していた彼女だったが、目の前に現れたのはごく一般的なゴブリン。

最初は三体だけだった物が、奥の方からどんどんと増援が来て、終いには数えきれない程のゴブリンが彼女の眼前に並んでいた。


「弓でチマチマやってて良い量じゃねぇな……」


魔道具を地面に置き、剣を構える。理由は不明だが、明るさを確保する必要が無くなったのは大きい。気にせず、普段通りに戦えるのなら、万が一の負けも無い。

ガルムは獰猛に笑うと、何の前触れも無くゴブリンの群れに接近し、全力で剣を振り下ろした。


直後、轟音と共に洞窟が揺れ、その衝撃で攻撃範囲のゴブリン達は跡形も無く絶命する。

大量の血が舞い、生き残ったゴブリン達は吹き飛ばされる。


「どうしたどうしたっ!アタシはまだこんなもんじゃねぇぞっ!!」


縦横無尽に駆け回りながら、ゴブリンを殺し続ける。ひたすらに剣を振るい、その体を叩き潰し続ける彼女は、まさに獣人最強と呼ぶに相応しかった。

実際彼女は、魔法や祝福を持つ者以外が相手ならほぼ無双できる実力を持っている。リッツァ盗賊団に捕らえられたのも、バイザの部下に魔法使いが居たからであり、仮に彼らが真っ向勝負特化の脳筋集団であれば返り討ちに遭っていた事だろう。


グギギギ、と威嚇の声を上げながら、ゴブリン達はガルムに立ち向かう。力任せに棍棒を振り回しながら彼女へ肉薄するが、攻撃が当たる直前で潰されるか切断され、かすり傷の一つも負わせられずに死亡する。


蟻が象に立ち向かうかのような光景は、ゴブリンの数が多いために数分程続いたが、それでもすぐに終わる。

剣の風圧で返り血すら吹き飛ばしていたガルムは、まるで戦闘なんて無かったかのように変わらない姿で立っていた。


「この数だと、まだまだ奥に潜んでいやがるな……やっぱり、セナのお姉ちゃん達は―――」


最悪の想定が脳裏から離れない物の、この目で確かめるまでは、と頭を振る。剣に付着した血を払い、置いておいたランタンが戦闘の余波で壊れてしまっている事を確認し、そのまま走り出す。


一本道だったはずが横穴が大量に開いており、遠くからゴブリンの鳴き声が聞こえてくる。時間に余裕があるなら全部の穴を虱潰しに確認してゴブリンを全滅させるが、今回はセナの姉たちの保護が最優先だと無視を決め込む。

しかし、やはりここは洞窟と呼ぶには人の手が入り込み過ぎている。もしかしたら上位のゴブリンが親玉なのか、或いはゴブリン以外のナニカが潜んでいるのかもしれない、と、生唾を呑み込んだ。


「ちっ、分かれ道か」


なんだかんだ大きな道は一本だった物の、ついに右か左かの選択を迫られる。彼女の聴覚なら遠くの少女の声を聞くくらいは本来容易いのだが、洞窟という音が反響して発生源がわかりにくい場所な上、ゴブリン達の立てる雑音がうるさく、音で探し当てるのが難しい。


少し耳を澄ませてみた物の、雑音がより鮮明に聞こえるようになっただけで何も得る物が無かった。


「仕方ねぇ、取り敢えず右の方に進むか」


このまま止まっているよりはマシだ、と右に進む。勘でしか無かったが、彼女はすぐにその選択が正解―――或いはそれに近しい物だと確信した。


何故なら、再び洞窟の風景が変わったのである。今度はただの岩肌、土壁に、装飾が施され始めたのだ。

思わず足を止めて、周囲をしっかりと見渡す。天井にはシャンデリアのように加工されたランタンがあり、まるでこの道はこの洞窟の主か、それに類する者が主に使う道とでも言うかのようだった。


「これ、流行りの布だ……ゴブリンが芸術を理解した?」


そんなはずはない、と頭の中で否定する物の、目に映る物は決して変わらない。

上位ゴブリン……例えば魔法を使うゴブリンメイジや、通常個体よりも長い時を生きるオールドゴブリンという個体は、確かにより人に近い性質や思考回路を持つ。

しかしながらゴブリンはゴブリン。繁殖欲、食欲、そして殺傷衝動にのみ特化した彼らが、人間のように芸術品という『無駄』を好むはずが無い。


「ゴブリン以外のナニカ、か……ゴブリンが共生するって言ったら、なんだ?」


魔物は時に、別の魔物と共生する事がある。環境に応じた生き方を模索するうちに、利害が一致する事があるのだ。

しかしながら種としてほぼ完成しているゴブリンが別の魔物と共生するのは殆ど無く、あったとしてもおこぼれを狙うオークが同じ巣に潜んでいるくらいだ。それも共生と呼ぶには互いに協力する部分は無く、何なら存在の痕跡すらない事が多い。


「この洞窟、何が潜んで―――」

「メイッ、速く、こっち!」


ガルムの独り言を遮る様に、少し先の横穴から少女が飛び出してくる。服はボロボロで体は傷だらけ。必死の形相で振り向く先には、同じくボロボロな少女が二人。


「この道、確か出口に繋がって―――ッ、誰!?」

「そっちこそ―――って、もしかしてお前らが冒険者か!?」


肩を大きく揺らしながら呼吸を整えつつ武器を構える三人に、ガルムは敵対する意志が無い事を示すべく武器を置く。

その姿と言葉に、彼女が自分達を助けに来た事に気づき、三人も武器を下ろす。


「も、もしかして、救助に来た冒険者の人?」

「いや、冒険者ではねぇ。けど助けに来たのはほんとだ。セナって子に、お姉ちゃんを助けて欲しいって頼まれてここに来た」

「セナが!?」


セナの名前を聞き、ポニーテールの少女が目を丸くする。彼女がセナの姉だろうな、と理解したガルムは、万が一ゴブリンが現れても良いように武器を手に取り、怪しまれないようにその場を離れずに頷く。


「あぁ。お姉ちゃんとその仲間を助けてって話だ。一日経ってるって聞いて色々身構えてたけど、戦闘の傷以外無さそうで良かったよ。アタシはガルム。見ての通り獣人だ。腕っぷしには自信があるし、帰り道も覚えてる。こっからは安心してくれて構わないぜ」


胸を張った彼女に、三人は互いに顔を見合わせてから、安堵の溜息を吐いた。

ようやく助かった。その事実に涙を流す者すら居る。


しかし、そんな雰囲気に水を差す輩が、当然ながら現れた。


「ぎ、ギギギギッ!」

「グ、ガァッ!」


彼女が無視してきたゴブリン達が、出口へ向かう事を阻止するように群がってくる。列を成し、武器を構えた彼らを見て、ボロボロの少女たちは「ひっ」と怯えた声を出す。


一度負けた相手だ、無理も無い。必死に逃げたから助かったのであって、もし逃げられなかったらどんな目に遭うのかわかっているからこそ、怖いのだろう。


そう考えつつ、彼女達を勇気づける為にも、ガルムは敢えて笑った。


「へへっ、今さら何匹出てこようがゴブリン程度敵じゃねぇ。動けねぇなら下がってな!ここはアタシが―――」

「ま、待って!そいつ等、ただのゴブリンじゃない!!」

「へ?何言って」

「ぶっふぅー……んまぁ、その通りなんだな」


ゴブリン達が道を開けると、何者かがソコを通る。一歩歩くごとにズシ、と重厚感のある音を響かせるその男は、まるで豚のように太っていて、額の汗をせわしなく拭っていた。


「テメェがこの洞窟の主、って訳か」

「ぶっふぅー。それも、その通りなんだな。とにかく僕は、獲物を決して逃がさない。それもこんな上玉三人――いや、君を入れて四人。全員ここから出す事は無いんだな」

「気色悪ぃ野郎だな。この豚野郎。オークの末裔かなんかか?」

「んゆゆ?僕がオーク?ははっ。確かに、こと性欲に関してはヤツラと同じくらいな自信はあるんだな。少なくとも、君ら四人程度のお嫁さんじゃ満足しきれないから―――壊れるまで愛しちゃうんだな、うん」


わざとらしく音を立てながら舌なめずりをした男に、ガルムは唾を吐き捨てて答える。

ふざけた事を抜かすな、ぶっ殺すぞ豚野郎。そんな鋭い視線を向けられた男は、愉快そうに笑って右手を掲げた。


「僕の趣味はね。君のように気の強い女の子を徹底的に凌辱しつくすことなんだな。そして()()()()()()それも叶うんだな。この『夢世界の祝福』があれば!」

「何ッ、『祝福』!?」


攻撃の構えから一転、回避の姿勢を取ろうとした彼女だが、遅い。

男の右手がまるでカメラのフラッシュのように光り、彼女の手にしていた剣が呆気なく地面に落ちる。


「ヒュプノス・レイ。夢と現実が入り混じり、君もそこの三人みたいに、僕の手のひらの上で転がされる……。全力で逃げると良いんだな。次に起きた時、君が逃げる方法を覚えて入れば……本当に逃げられるのなら、ね」


意識を失い、無抵抗の彼女達には敢えて手を出すことなく、男はゴブリンを引き連れて去って行く。

彼の楽しみの為に、ゆっくりと時間をかける。


―――少女たちの終わらない悪夢が、始まる。

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