告白
決着をつけるとは果たしてどういう事か。
どこか照れているような……敢えて非現実的な可能性を例に挙げるとするならば、まるで今から告白するかのような表情をしているが、言い方が妙に堅苦しい。
俺とカルマの間にある、決着をつけるべき何か。
正直、因縁なんかはもう無い物だと思っていた。強いて言うなら貴族嫌いだろうが、もう俺を貴族だからとかそういう目で見ていないという話をしていたからそれも違う。
では一体何を?
「俺、さ。お前に、ずっと隠してた事が、あるんだ」
「隠し事も何も、ついこの間まで性別すら明かしてくれなかったじゃねぇか。何なら今でも本当の姿教えてもらってねぇし」
「……これだよ」
「え?」
「だから、これが本当の姿なんだって」
長い事教えてもらえなかった、カルマの本当の姿。
それは、ビットリアの海で披露してもらって以来、良く見かけるようになった金髪美少女の姿。
思えばカルマの変装の中で何度も何度も使われていたのはこの姿くらいだった気がする。
その時点で、もしかしたら想像できたかもしれない。もしかして何度も見せるこの姿こそが、彼女本来の姿なのでは無いだろうかと。
改めてよく見て見る。
肩に触れるか触れないかの所まで伸ばされた綺麗な金髪。宝石のような碧眼。可愛い、よりも綺麗、という言葉の方が似合う顔立ちに、バランスの取れた体。
どれをとっても美人だ。美人、だが……仮に、これが本当の姿だとするならば、どうしても気になる部分が出てくる。
「その金髪碧眼も本物、って事か?」
「っ、やっぱ、気になる……よな」
当然だ。なんせ金髪碧眼は高貴な血筋―――つまり王族、貴族だけの特徴なのだから。
俺の交友関係で言うと、ネイトやエルメス、後は今気絶しているローランなんかが該当するだろう。
勿論金髪でも碧眼でも無い貴族や王族はいるが、生まれも育ちも平民という人間の中に金髪碧眼は絶対に一人もいない。
何故ならアステリア王国の王家、アステリア家だけが金髪碧眼の特徴を持つからである。
当然、王族と結婚できるのは貴族のような高い身分の者のみ。だから平民から金髪碧眼が生まれず、貴族や王族だけがその特徴を持った子を産む可能性があるのだ。
説明がやや長くなったが、カルマの姿が本当にコレだとしたら、カルマはアステリア王国の貴族、或いは王族の血を引いている事になる。あの貴族嫌いのカルマが、だ。
いや、寧ろこの血筋こそが貴族嫌いの理由になっているかも……?
「あのさ、ノガミ―――いや、ジン。実は俺……あぁっ、クソ。上手くまとまんねぇ」
「焦んなくても良いって。まぁ、そろそろ移動は始めるつもりだけど」
傭兵に起きられたら困るしな、と、体力も回復してきたので治癒魔法をローラン達に使い、立ち上がる。
歩きながらで良いか?と尋ねると、カルマは静かに頷いた。
しかし歩き始めてから十分弱経つまでは、彼女は一切口を開かなかった。きっとどう話すべきか、必死にまとめようとしているのだろう。
なら急かすような真似はしない。俺とダインスレイヴもまた一言も発する事無く、静かに夜道を歩いた。
そうしてしばらく経って、カルマは意を決したように話し始めた。
「オフェリア。オフェリア・ヴィルヘルミナ・スカーレット」
それが俺の名前だ、と、遠く星空を眺めながら。
※―――
ジン・ギザドアがこの世界で生まれる、10年前。
アステリア王国の中でも強い力を持つ貴族一家、スカーレット家の三人目の娘として、彼女は生まれた。
当主エルドリッチ・ツェレン・スカーレットの四番目の妻の子でありながら、彼の娘たちの中で唯一、エルドリッチの金髪碧眼を継いだのが彼女だった。
自分の血が色濃く出たオフェリアに、彼は大いに期待を寄せた。
アステリア王国の貴族達が娘に望む事はつまり、王や自分よりも上の立場に居る貴族の息子との結婚。血縁を結ぶ事である。
他国に比べ比較的権力闘争の乏しいアステリアの中で、エルドリッチは珍しく野心家であった。
己の発言力を強め、いつかは王と比肩する存在になる―――なぜソレを望むのかという理由も不明瞭なまま、漠然と己が頂点に並ぶ、立つ事を願い、そのためにどこまでも冷徹になる事が出来た。
例えば、実の娘を自分の利益のための道具として育て、使うといった事を、平気で行える程に。
オフェリアに限った話では無く、エルドリッチの娘六人全員が、一律に厳しい教育を施された。
学園に通わせること無く、家庭教師や自分自身が教鞭を振るい、礼儀作法から教養、何から何まで叩き込んだ。それは比喩では無く、文字通りの意味で。
魔法を使えば、例え体の一部が欠損したとしても再生できる。ジンやルシファーのように一瞬で、とはいかないにしても、時間さえあれば傷跡一つ残さず癒す事だって可能だ。
だからエルドリッチは容赦なく体罰を行った。平手打ち、鞭打ち、刃物で切り付ける事もあった。強い言葉や、単なる誹謗中傷も日常的に飛び出した。
何か一つ出来なければ徹底的に詰り、痛めつけ、出来るようになるまでそれ以外の一切を、食事、睡眠、排せつに至るまで禁止した。
普通であればこんな教育、成果が出るよりも先に限界が来る。
しかし、少女たちは優秀だった。優秀過ぎた。
エルドリッチの教育は正しかったと示すように、各々が大きな成果をあげたのだ。
長女は国王の次男と婚約し、次女はスカーレット家よりも発言力の強かった一家の長男と婚約。四女から六女までは縁談は無いものの、全員突出した魔法の才能を発揮し、六女に至っては生まれ持った魔力の多さ故に宮廷魔法師の将来が確約された。
……だがたった一人、オフェリアだけは何も成せなかった。
美貌を活かし男を篭絡させようにも誰も振り向かず、教養を持たせても発揮できず、そうした使い方ができないのであればと武器を持たせてもてんで才能が無く、おまけに生まれ持った魔力の量は一家の中で最低。
極めつけはその美貌を台無しにする程の『不気味さ』。
言動の全てに言いようのない不自然さがあり、実の母であっても彼女を遠ざけた。
孤独だった。
他の娘達はまだ、時折成功を見せエルドリッチからの賞賛を受け、実母から愛を注がれていた。だからこそあの教育に耐え、成果を出す事が出来た。
だがオフェリアは一度も何も成功できず、エルドリッチも実母も彼女を不気味がって、ほんのわずかな愛情すら見せなかった。
痛みに耐え、心が折れそうでも必死に耐え、しかし何もできなかった彼女はある日、エルドリッチから「もういい」と告げられた。
もう教育は施さない。必要無かった。
いつも以上の冷たい眼差しを向け、ため息交じりに彼はそう言い放った。
直後、彼女はエルドリッチの私兵に屋敷の外へと連れ出され、屋敷から遠く離れた薄暗い路地裏に投げ捨てられ、挙句は殴る蹴る、棍棒で叩きのめすと言った暴力を振るわれた。
それは万が一にも彼女が屋敷へ帰って来ないようにと、エルドリッチが私兵に金すら握らせて命じた事だった。
何の役にも立たない、不気味なだけの無駄飯喰らい。例え高貴な色を引いた、最も期待していた娘だったとしても、そう判断した女が自分と、スカーレット家と関係すると誰かに知られるのが極めて不快だったのだ。
私兵達が手を止めた時、地面に転がっていたのはもはや美しい貴族の少女なんかではなく。
赤黒い血をだくだくと流し、折れた骨が体の外へ飛び出してさえいる、痣だらけの、ボロ雑巾のような肉塊。
微かに上下している所から、まだかろうじて生きている事がうかがえる。だがソレだけの状態。
それを嗤うと、私兵達は寒空の下、彼女を放って去って行った。
残されたオフェリアは、もはや涙さえ流す事が出来ないままに、碌に見る事も出来ない目で私兵達を、エルドリッチの居る屋敷を睨んだ。
今まで苦しんで、挙句が必要無かったの一言。
訪れたのは解放では無く、今まで味わった事も無い程の暴力と、瀕死の状態での放置。
憎い。無意識下で確かに育っていた、エルドリッチや母、周囲の人間への憎悪。
自分を苦しめ、自分を孤独にし、挙句は捨てた彼らへの、どこまでも真っ直ぐな殺意。
極限の状態で芽を出した負の感情は、瀕死の体を突き動かす。
潰れた喉を必死に震わせ、言葉にもならない「殺してやる」の音を漏らしながら、地面を這った。
痛みも、寒さも、孤独も、もはやどうでも良かった。
このまま死んでたまるか。死ぬにしても、せめて一矢報いてやる。いや、殺す。絶対に、道連れでも良い、殺してやる。
執念だけで意識を保ち、執念だけで動き続けていた彼女は、その後すぐ『とある者』に拾われる。
どん底に落ちた彼女の殺意を、死んでいてもおかしくない重症でなお動き続ける執念を、何よりも美しいと賛美した『とある者』に。
※―――
「ってな感じで、オフェリアとしての俺の人生は終わって、その少し後にカルマとしての今を始めたってワケ。まずはこれが一つ、話しておきたかった事だな」
「………」
どこまでも淡々と、なんならいっそ明るくフランクに話された内容は、とても笑ったり茶化したりできるような物では無かった。
ってか重い!想定の五倍くらい重い話されちゃったよ俺!!
てっきりカルマの過去って、平民出身で昔貴族の横暴な態度に怒りを覚えてそれ以来貴族嫌いでー、とかそんなモンだと思ってたら……まさか元貴族で、だからこそ貴族が嫌いだったとは。
「なんだよ?そんな暗い顔して」
「いや、その話聞いて笑って流せる程落ちぶれてねぇよ」
「んー?別に気にすんなよ、もう済んだ話だぜ?」
「済んだも何も、スカーレット家もエルドリッチも、まだ全然残ってるだろ。まさかお前、復讐心なんてとっくに消えたとか」
「言わねぇよ。いつか必ず殺してやる。俺はそう誓った」
「――――なら、良いけどさ」
復讐は何も生まない。復讐なんてすべきではない。ましてソレを第三者の俺が、やらないなんて間違っていると示唆するような発言をするのはおかしい――――と、誰もが思うだろう。
まぁ確かに、復讐をするから争いは無くならないんだろう。
だが俺は、前に言った通り未熟者。暗殺者として活動を始めてから長い事一緒に行動し、なんなら食事やら遊びやらも一緒に行くようになった大事な友人をここまで苦しめたというヤツが居て、その上やられた本人にやり返す気が無いなんて話になった時………ノガミとしての自分を抑えられる自信がない。ってか無理。絶対殺す。今までで一番派手に、凄惨にだ。
ただ、カルマが自分でやると考えているなら話は別だ。
寧ろ俺が手を出す方がダメだ。徹頭徹尾自分でやるからこそ、復讐には意味がある。
「しかし、人間というのは愚かなモノじゃな。誰に操られたでも無しに、なぜ己の敵を増やすような真似を平然と行えるのか……死を恐れ、失う事を恐れ、ソレを生む争いという物を忌むのなら、初めからそういう真似をしなければ良いというのに」
「それができないから人間なんだろ。この世界で一番不合理な生き物だからな」
「ま、おかげで今の俺があるんだ。感謝……なんて死んでも御免だが、でも今となっちゃ悪い事ばっかりとは言えねぇさ」
ケラケラと笑うカルマを見て、復讐心はあれど過去をトラウマだとかそういう形で引きずっているわけでは無いんだなと理解した俺は、寧ろ俺がいつまでも気に病んでいる方が失礼だろうと考え気持ちを切り替えた。
しかし……あのエルドリッチが、裏でそういう事をしていたなんて以外だったな。
前に何度か会ったが、辺境貴族の俺相手にも別段見下すような素振りも無く、寧ろ低姿勢で接してくれていた。
まぁ、人は普通他人と接するときはキャラを作るというか、本性を隠す物だけどさ。
「とにかく、お前の素性はわかった。本名も本当の姿も教えてもらって、正直結構嬉しいよ。別に気にしてたわけじゃないけど、なんとなく壁があったしさ」
「話すタイミングが無かったってのはあるけどな。俺としては、名前と本当の姿くらいは二年前の時点で教えてやっても良かったくらいだし。―――で、さ。こっからが本題っつーか、決着をつけるべき話題っつーかなんだけど」
カルマの歩く速度が段々と遅くなっていき、遂には立ち止まる。
俯きながら再び黙ったカルマは、今度は先程よりも沈黙の時間は短く、話し始めた。
「お前さ、あの王女サマと結婚したじゃねぇか」
「そうだな。意外だったか?俺としては結構驚きだったが」
「は?どこに驚く要素があったよ」
「そんな食い気味に言われてもな……だって、俺とアイツが一緒に行動したのって、大体二か月ちょっとだし」
「二か月もあんなプライベートな事情で親身になった挙句命を何度も救って何なら死にかけてでも守ったとか惚れられない理由がねぇだろ」
「助けたから惚れられるなんてそんな、都合の良いファンタジーじゃねぇんだからとは思うけど」
「ばーか。乙女ってのはファンタジーなんだよ。―――俺含めてな」
「乙女ってなぁ……お前、俺より十歳年上なんだろ?って事は大体アラサ――――」
「オ・ト・メ、だが?異論は?」
「な、無いです、マム」
ずい、と体を思いっきり寄せ、俺の顔を覗き込みながら迫って来る。『無貌』で顔を恐ろしい物に変えてのソレは、正直震えるくらい怖かった。
検索してはいけないとかその類のホラーフェイスに変化させた上での超至近距離睨みは、中身含め良い歳した男でもビビる。
よろしい、なんて言いながら離れた時には、再び本来の美しい顔に戻っていた。
それでもちょっと唇を尖らせている当たり、アラサー扱いを(事実とはいえ)された事が相当不服だったのだろう事がうかがえる。
女性に年齢の話がご法度なのは、どの世界でも一緒という訳だ。
「………お前の方こそ、なんでオッケーしたんだ?」
「そりゃ、容姿の時点でかなり好みだったし……内面的な部分も、二か月一緒に居りゃどんなもんかわかる。それで文句なしって思ってた所に、向こうから告白されて……断る理由が無かったな」
「やっぱ胸かよ!!」
「違ぇよ!!ってかお前もソレを言うのか!?」
ほら見た事か、と言わんばかりの顔をするダインスレイヴが横目に映る。
なんでガルムと付き合っただけで巨乳好きみたいな扱いになるんだ。確かにアイツはデカいし全体的な肉付きは良いけど、別にアイツに限った話ではないだろ。
しかも無駄な消費で盛ったダインスレイヴと違って、カルマは現時点で結構良い物を持ってるように見える。
ビットリアで谷間から紙を取り出していたのが良い例だ。あんな芸当をやっておいて自分貧乳ですがみたいな顔をするのは他の女性に失礼だろう。
……あっ、でもカルマって『無貌』の力で、容姿はいくらでも変えられる……体を少し盛る事くらい、造作もないはず。
まさかコイツもか?コイツも見栄張ってたのか?
敢えて言葉にせず、黙って目を合わせ続ける事で問いかける。
するとカルマは、とても、それはもうとても渋い顔をしながら指を鳴らし、次の瞬間には顔や髪型、毛量は変わらないまま、背丈と体つきだけが子供のように小さく、幼い物へと変わった。
……これって所謂、合法ロリってヤツっすか。
「……隠し事、二つ目だ」
「お、おう」
絶対言う気無かっただろうけどな。変に追及して悪かったな。
微妙な空気になった所で、カルマが軽く咳払いをし、話を元に戻す。
そうだ。俺とガルムの結婚の話をしてたんだった。
「俺さ、獣王国に行く前……お前と待ち合わせてる時、アイツと二人っきりになる機会があったろ?その時に少し話してさ。まぁなんとなく知ってたんだ。お前の事を好きになってるって」
「あのやたら不機嫌になってた時か?なんの話してたのか結構気になってたんだけど……恋バナなんてしてたのかよ」
「どっちかって言うと宣戦布告だったけどな」
「なんだそれ」
恋愛系の話題で宣戦布告と言えば、同じ相手を狙っている事をほのめかす、というか、明かして牽制する事だろうが……となると、カルマがガルムに対して、俺を狙っていると明かしたという事になるわけで。
いや、逆のパターンの可能性も……ねぇわ。リュカオンの話が解決する前のアイツに、色恋に意識を裂くような余裕は無かった。なら、そういう話題を持ち出せたのはカルマの方。
でもそれってつまり、カルマが俺の事を好きだと言っているも同然で。
ここで俺とカルマの関係を確認してみよう。
俺から見たコイツは、一言で言えば親友。同じ暗殺者(カルマは殺し専門ではないが)という事もあって、万が一殺し合う必要が出てきた際に躊躇わない様にと精神的な壁を作ってはいたが、それにしてもこの世界の中で五本の指に入るくらいには仲が良いと自負している。
共に潜り抜けた修羅場は数知らず。『堕ちた不朽の英雄』を討伐した時も、『七人の魔王』の本拠地に攻め入った時も、カルマの力を借りたのはしっかり覚えている。
簡単にまとめれば、俺からカルマへ抱いている感情は現状『圧倒的な信頼と友情』。
ならカルマから俺への感情はどうだろうか。
カルマから見れば、俺は最初こそ不快な相手だっただろう。貴族な上、実力も定かではない子供。カルマが最も苦手とするタイプが俺だった。
だがそれでも共に活動するうちに、段々と心証は良くなっていったはず。そうでも無ければ、ある日突然夕食に誘ったりとか、そんな真似はしなかったはず。
俺の予想だと、同じく信頼と友情を寄せて貰えているとつい先ほどまでは考えていたが……。
なんだろう。ガルムと違って、好かれていても違和感がない位には相当な年月を共にしてるし、良い関係になってる。
もっと前からコイツが女だと知っていれば、一年前くらいには「もしかしてコイツ俺の事好きなんじゃね?」とか自惚れていたかもしれないくらいには距離が近い。
―――まさか、マジで?
「ずっと黙ってたけど、俺」
「……ま、待てよカルマ。俺はまだ、アイツと結婚するって話になったばかりで」
「うるせぇ。黙って聞け。いいか、ジン。俺は、お前が――――お前が!」
冷静に伝えようとしていたようだが、声は段々と大きくなり、語気が強くなる。
対する俺は、嬉しいという思いはありつつも、つい二日……もう三日前か?ともかく告白してもらってから一週間も経っていない、ガルムの事が頭から離れなかった。
この世界はハーレムが普通だ。
それはガルムも認めていた事。というか複数人くらい囲えとの事だ。男の真価は女を囲う数で決まるとは、誰の言葉だったか。
だが、にしても早い。早すぎる。
結婚の約束をして二日ちょっとだぞ?そんな時に、別の女からも告白されるなんて、あるか?
いや、寧ろガルムが告白したからこそ、カルマも触発されたというべきか。
「お前が、ずっと……好きだったんだ!」
いつになくしおらしい様子で、硬く拳を握りしめて、一世一代の、と付くような告白をやって見せたカルマ。
そんな彼女に俺はどう答えるべきかと、つい黙り込んでしまうのだった。
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