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暗殺者ですが、狂戦士扱いされて困ってます  作者: 砂糖 多朗
第一章 狂乱の暗殺者、ノガミ
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水着姿と裏切り者と

※祝福紹介※


『夢世界の祝福』

本来なら、夢の神ヒュプノスの『試練』を踏破した者に与えられる『祝福』。精神干渉系の『祝福』の内最上位に位置する力を持ち、光や煙、音であらゆる生命体の精神に干渉、支配する力を持つ。

『狂乱の祝福』等、精神の一部に強く作用する効果を持つ『祝福』に劣る事もあるが、大抵はこちらの効果が優先される。

作中の所有者は『試練』を踏破する以外の手段で手に入れた上、この『祝福』の真価である『夢と現実の融合』を不完全にしか行えなかった為、その実力の一部分しか披露される事は無かった。

楽しみが近づけば近づくほど、その期待が大きければ大きいほど、体感時間は長くなっていく物だ。

アステリア王立学園の生徒たちも、俺達と同じタイミングで出発する事を決めたリン達も、ここ一週間はわかりやすくソワソワしていた。


(俺を含め)生徒たちにとって、校外研修は初めてのイベント。期待感で言えば学園生活四年間の内一番と言っても過言ではない。

リン達にとって……いや、冒険者たちにとって、ビットリア観光はある種の到達点に等しい。

つまり、両陣営のこの盛り上がりも当然の物なのだ。


「……んでもって到着して早三日。既にバテバテな生徒が大勢、と」


到着初日は夜も遅かった為、街に出る事も海辺に向かう事も無かった。

とはいえ普段から一人一部屋の原則に従い、静かな夜ばかりを過ごしてきた生徒たちは全く眠る素振りを見せずにヒソヒソと話を続け、やれどの女子が好きだの、やれ自分にはこんな武勇があるだの、前世の学生と大して変わらない様子で盛り上がっていた。

俺と部屋の違う男子連中や女子連中も同様だったらしく、二日目時点でやや疲れ気味のように見えた。


しかし流石は学生というべきか、いざ街を自由に散策して良いと許可が下りると全員水を得た魚のように元気を取り戻し、貴族や大商人の子供と言ったやんごとなき身分だとは到底思えないようなはしゃぎっぷりを披露した。

因みに二日目の俺は、ガルムに引っ張られてビットリアを走り回る羽目になった。別にまだまだ時間はあるというのに、なんで一日で街の端から端まで走る真似をしたのだろうか。これがわからない。


さらに問題なのが二日目の夜……つまり昨日の晩。

流石に今日は皆寝るだろうなぁ、と思っていたのだが、なんと各自の観光エピソードやその他雑談で盛り上がり、再び完徹したのだ。

それは俺と同じ部屋の生徒だけではなく、他の生徒たちも同様だったようで。


結果、移動開始前の教員からの話の間、俺以外の全生徒が座ったまま眠るという状況が出来上がったのである。

前に出て話している教員は勿論、周りに立っている他の教員たちも皆、呆れたような溜息と共に苦笑いをしていた。


なお俺は目立たない為に狸寝入りをしており、先程の呟きも恐らく誰にも聞かれていない。隣の生徒にすら、微かに息を吐いた程度にしか聞こえていないはずだ。

まぁ隣の生徒は寝ているから、あまり関係ないのだが。


「まったく。初めての校外研修だからと言って、こんな体たらくでは―――」

「まーまー、そういう話をしても誰も聞きませんって。何なら説教系は寝不足じゃなくても寝ますよ、子供ってのはね。―――こういう時は、こう言ってやるのが一番なんですよ」


最年長の教員に、最近入ったばかりの男性教員が耳打ちすると、訝しむような顔を一度見せた後、咳払いをしてから改めて口を開いた。


「ふむ、困ったなぁ。全員が寝ているのであれば、今日行く予定だった海水浴は無しという事に―――」

「それは違うでしょう!?」


一人の生徒が大声と共に立ち上がると、それに続くように一人、また一人と立ち上がり、元気を取り戻す生徒が現れる。

すぐに全生徒が立ち上がり、海水浴の中止に反対の声を上げるようになり、最年長の教員はどこか釈然としない顔を見せつつ「座りなさい」と生徒たちを宥めた。


この世界で生きるようになってから、貴族ってこんな俗っぽい物か?と思ったのはこれで何度目だろうか。

俺も貴族らしからぬ貴族だからあまり声には出さないけど。


この後も教員の話は続くが、寝ては海水浴が無くなる、と寝れなくなった生徒たちは若干血走った眼を見開き続けて話を聞き終え、待ちに待った海へと向かう事になった。

勿論馬車での移動になったが、少なくとも俺と同じ馬車に乗っていた生徒は全員眠っていた。


ほんと、前世の学生と全く同じというか、なんというか。


※―――


前世の俺は、海に対してあまり良いイメージは無かった。

海辺の町に住んでいた事があるが故に、流れ着いたゴミが大量に浮いていて、変な油のような物が浮かび、妙に泡立っている海の印象が強く、素敵な場所、楽しい場所というイメージよりも先に汚い場所という印象が定着していたのだ。


しかしこの世界は、海が驚くほど綺麗だ。

ゴミは無く、洗剤やその他諸々が流れている事も無く、なんなら川や海に生活排水を捨てる事も無いから、そもそも汚染が起こらない。

海とはこんな素晴らしい物だったのか、と、初めてこの世界の海を見たときに驚いたのを良く覚えている。


だが今日。俺は海に対し、さらに良い印象を抱く事になった。

それは海の綺麗さだけではなく、泳ぐために必要な準備を整えた()()()を見たから。


直接的に言うと、ガルム達の水着姿が見れるこの環境に感謝している、という事である。


「ど、どうだ?似合ってるか?アタシ、水着なんて着た事無かったし。ちょっと不安でさ」

「似合ってるよ。色もお前にピッタリだ」

「ほんとか!?へへっ、良かったー」

「あ、あのっ!私の方はどうですか……?」

「私も審査、お願いしまーす」

「リンもクィラも似合ってるよ。メイは……それ、何?」

「潜水用水中服。特殊素材100パーセント使用は勿論、魔力加工も完璧」


メイ以外の三人は、全員ビキニだった。健康的な肉体が、ほぼ下着のような布以外で隠されること無く晒されている。

因みにガルムは黒、リンは白、クィラが赤だった。この世界になぜビキニがあるのか、という疑問が一瞬脳内に生じたような気もしたが、この絶景の前で要らない考えは捨てる以外になく。


問題は、メイだ。

彼女達が今、こうして海に来ている理由はマナライト鉱石の回収の為である。しかし二人を見ればわかるように、まだ遊びがメインの段階。

だというのに、彼女の衣服はガッチガチの潜水服。全身を覆う紺色のスーツの上から、とある魔物の鱗を元に作られた鎧を装備し、手には採掘に使うのであろうスコップやツルハシが握られている。


それをともすれば幼子と見間違われるような背丈の彼女がしているのだから、違和感というかなんというかをどうしても感じずにはいられない。


「もう、メイは色気無いわねー。ただでさえ男っ気の無い活動なんだから、こういう所でジンさん達男性陣にアピールすべきじゃないの。ほら、聞きしに及ぶアステリア王立学園の生徒たちが海で泳いでるのよ?もしかしたら玉の輿だって狙えるじゃない」

「私は別に、そういうのに興味は……」

「ふーん。じゃあライバル一人脱落ね。―――それよりも。私的にはリンが一番の強敵って感じがするのよねぇ……」

「なっ、なんで?」

「なんでも何も、その胸!今まで何気に着替えてる所とか見た事無かったからわからなかったけど、着やせしすぎでしょ!?何、実は裕福な家庭の子なの!?」

「え、えぇー……?」


きゃいきゃい、と騒ぐクィラ達を、少し離れたところから眺める。一旦距離をとっておかないと、答えにくい質問が俺に回って来る可能性があるからだ。

これを戦略的撤退と呼ぶ。


数歩後ろに下がると、俺と一緒に居れば女子話せるかもしれない、なんて不純な動機でやって来た日陰者同盟の面々が、やけに良い笑顔で立っていた。

気持ち悪っ。


「ひ、ひひひっ、こうも素敵な光景が見られるとは」

「いやぁ、ジンには感謝してもしきれねぇや。他の女子生徒なんて、近くに行けば逃げてくからな」

「我らに下心は無く、ただ水着姿を眺めるだけで良いというのに……一体何が気持ち悪いというのか」

「水着を近くで見れただけで笑顔で涙流すような奴らなんざ気持ち悪い以外の何者でもねぇだろ」

「失礼な奴だなぁ。―――んでも、驚いたよ。冒険者なんだろ?あの三人。何があって知り合ったんだ?」


本来接点の無さそうな俺達がどうして知り合う事になったのか。それを不思議に思う気持ちはわからなくも無いが、答えると俺が暗殺ギルドに所属している事を匂わせる羽目になるので「色々」の一言でそれとなく誤魔化す。


俺が暗殺者である事を知る者は少ない。ここ最近ガルムに正体を教え、セナの頼みをノガミではなくジンとして受ける、なんて真似をしたが、それでも他の人間にはまだジン=ノガミの事実は知られていない。

リン達はセナから聞かされたらしいが、実際の戦闘を見た上で「狂戦士ではない」と思ったようで、俺が暗殺者ギルド所属という事しかわかっていないし。


「つーか、普段のお前らの発言だと、眺めるよりも話しかけに行くタイプだと思ってたけど。違ったのか?」

「あー、普段の発言ってーと……うん。彼女は欲しいけど、いざ実際に作る労力とか過程とか考えると面倒くさいし」

「仮にできたとして、多分それで満足するだけだろうし……それに、猥談は好きでも、実際の行為に何ら興奮しないと言うか。春画を買って楽しむくらいしか実は興味がなく」

「それ故、ジン殿が実際の女性と仲良くしていたとてあまりダメージは無く。とはいえ格差は感じるのでソレに文句を言っていると言いますか」

「代わって欲しいとかそういうのはねぇな」

「な、難儀だなお前ら」


良い意味でなら目立ちたいという願望を持っていたり、彼女が欲しいと公言していてもいざ実際手に入る機会があったとして特に何かしたいわけでも無かったり。

つくづく価値観の合わない奴らだ。なんとなく仲良くできているのが不思議なくらいに。


砂浜に腰かけながら会話をする俺達の下へ、誰かが近づいてくる。

ガルム達ではない。彼女達は今もなお俺の視界の中にいる。


つまり、それ以外の誰か―――あぁ、やっとか。


「ジン君、ここに居たんだ」

「あぁ、あまり混んでる場所は好きじゃねぇからな」

「は、はぁーっ!?また新しい女かよテメェ!」

「一体どんな人間関係を……」

「ジン殿。節操無しにも程があると思うのですが」

「違ぇよ」


ノリの良い奴らだなぁ、と考えつつ立ち上がり、俺に声をかけてきた少女の方へ向き直る。

金髪碧眼の可愛らしい少女。スタイルも良く、着ているパステルカラーのセパレート水着がとても似合っている。


「ねぇガルム、あの人ってアステリア王立学園の生徒?ジンの知り合いっぽいけど」

「……いや、違う……けど、なんとなくわかった。そういう事か」

「ガルムさんも知ってるんですか?」

「アタシの考えてる通りなら―――すっげぇ嫌な奴」

「そんな性格悪そうに見えないけど」

「多分だけど、お前ら相手だったらそこまで悪い奴でも無いぞ」


大きくため息を吐いて、ガルムがこちらに近づいてくる。そして俺の腕と金髪の少女の手首を掴み、人気のない岩場の方へと引っ張っていく。


凄いな。俺はともかく、片手に収まる程度しかコイツの『変装』を見てないのに見抜くなんて。


「んで、急に出てきてなんの用だよ」

「なーんだ。王女サマも気づいちゃってた?」

「ふんっ。コイツに話しかける女なんてアタシかリン達か、変装したカルマしかいねぇよ」

「ははは、言われてるぞジン」

「それで十二分だから気にしねぇ」

「うち一人女かどうかも怪しいのに?はははっ、やっぱ面白れーな、お前」


その面白いはどういう意味だ、と問い詰めたい衝動が一瞬湧き上がるが、ため息を吐いて堪える。

深窓の令嬢と言った様子から一転、良く言えば悪戯っぽい……悪く言えば底意地の悪い笑みを浮かべる『いつもの』様子になり、カルマは胸元に―――いや、胸の谷間に手を入れ、紙を取り出した。


実際にソレやる奴初めて見た。ちょっと感動。


「ほい、頼まれてたアインと粛清に向かった暗殺者たちの動向。ま、お前の予想通りだよ」

「アインって……暗殺ギルドを裏切った暗殺者、だっけ?」

「そうそう、そのとーり。ん?なんで知ってんだ?」

「それはどうでも良いだろ。んで?ソイツがどうしたんだよ」


全然どうでも良くないが、仮に聞いたところで答えないだろうし、そのまま話を進める。

……そりゃ、確かに一週間前、ビットリア観光はできないかもしれないって話をしたけど。それ以上の情報は出してないはずなんだよな、俺。


そもそも俺はどんな仕事であろうと、その内容を関係者以外に話す事はしない。これは俺の暗殺者としての流儀だ。

だからこそ、ガルムがアインの一件を知っている事が驚きなのだが……もしや独り言に出てたか?ここ最近アインの粛清について考える時が多かったし、そのタイミングで?

獣人の優れた聴覚なら、俺の独り言が明瞭に聞こえてもあり得なくないし……これ以上は、考えないようにしよう。


『狂乱の祝福』の影響で暗殺者らしからぬ事をするなら(凄く癪だが)最悪仕方ないとしても、自分のミスで暗殺者らしからぬ事をしてしまうのは、こう……うん。


「この海の向こうにあるポゴフィレスって帝国がアインの目的地。それをコイツはまだ海すら渡ってねぇと考えてたわけだ。ギルマスから命令が出たの、結構前だってのにさ」

「アインは豪快な奴だが、それ以上に繊細で臆病だからな。限界までリスクを減らす為に、移動に時間をかけるだろうって予想してたわけだ。粛清に向かった暗殺者の情報から、ある程度行動ルートも予想してたが……結構当たってたな」

「へー……って事は、アインがここを通る可能性があるって事か?」

「いや、確実に通る。なんせ今アインを追ってる連中に、ビットリアにノガミが居るからそこに誘導しろって指示してきたからな」

「表向きはジン・ギザドアっていうアステリア王立学園の一生徒だから、アインがどんな情報網を持っていても、心を読むとか未来を見るとかじゃない限り回避は不可能。実際、報告通りのルートで来てくれるなら明後日の夜、ちょうどここでかち合うな」


こうも開けた場所で戦うのは気が乗らないが、アインの戦い方を考えれば砂浜は好都合。

俺のような真正面の戦闘が可能とはいえ、アイツも搦め手が主力だ。死角の作りにくい戦場なら、俺の方が有利。

なんなら最悪アイツの得意な場所での戦闘になったとして、『祝福』を完全に使えば負けは無い。


油断はせず、適度に気を抜きながら待とうじゃないか。


「ま、大した準備があるわけでもねぇし。明日も多分街巡りの時間が与えられるはずだからさ。一緒に回ろうぜ」

「おう!昨日は急ぎ過ぎたから、もっとのんびり回りてぇなー」

「俺を引っ張って走り回ったのお前だろ」

「ま、そんな細かい事気にすんなって!話は終わりだな?んじゃ、アタシはリン達と遊んでくるから!」


さっさと来いよー、と俺の肩を叩き、走り去っていくガルム。とても寝不足とは思えない元気の良さだ。馬車で寝て相当回復したのか、空元気か。


とにかく、頼んでおいた情報は貰えたし、俺もアイツ等の所に行こう。

そう思い、軽く挨拶して立ち去ろうとした俺の手首が、ふと掴まれた。


「……?どうした?依頼料なら、アインを始末した後に貰える報奨金の半額って話だろ?」

「金の話じゃねーよ」

「じゃあ何の話だよ」

「―――ちょっと、こっち見てもらっていいか?」


やけにしおらしい声に訝しみつつ、振り返る。

別に先程までと変わった様子はない。強いて言えば俯き気味で表情が見えにくいという事くらいか。


「別に、なんも変わってないだろ」

「そういうんじゃなくってさ。―――その、聞きたい事が、あるんだけど」

「なんだよ?」


らしくない話し方だ。普段のコイツなら、言いたい事も聞きたい事もなんでもズバッと聞く。

相当聞きにくい話題らしい。珍しく真面目な態度なので、俺も少し真剣な表情を作る。


「………あのさ。どう、だ?」

「んー……どう?」


要領を得ない問いかけに、考えればわかる内容かも、と一度考えて、やっぱりわからずに聞き返す。

そんな俺に何かもの言いたげな目を向けて、カルマは投げやり気味に答えた。


「っ~!だから!今の俺の見た目がどうかって話だよ!」

「はい?」


カルマは容姿に頓着しない。

姿形も何もかも、どんな技術を使っているかわからないが簡単に変える事が出来るのだから、一々こだわる必要が無いのだ。


だからこそ、コイツはどんな容姿の時であろうと、自分らしい行動を偽らない。

可憐な少女の姿をしても葉巻を吸うし、ダンディな男の姿をしていたとしてもしょうもない冗談で馬鹿笑いする。

それがコイツだ。コイツのはずだ。


なのに、見た目がどうか?

コイツ偽物か?アインが化けて―――いや絶対無いわ。アレはそういうタイプじゃない。


「見た目ってお前……何?そのガワ気に入ってんの?確かに今までの変装の中で一番二番くらいに可愛いけど」

「っ、ま、マジで!?冗談とかじゃねぇよな?!」

「お、おう。やけに必至だな」


ずい、と迫って来るカルマにどもりながらも返事をして、ふと天啓でも降りたかのように理解する。


コイツがこのガワについての感想を聞いてきた理由。きっと諜報部の仕事でハニトラか何かをする必要があるのだ。ターゲットが相当な面食いで、気に入られる為には自分の変装の中でも一番の姿で挑む必要がある。

そこで、客観的な意見を求めて俺に聞いてきたわけだ。


ガルムの意見よりも、俺の意見の方が男を落とすには参考になるだろうし、こうして二人きりになってから聞いてきたのも納得できる。


そうと分かれば、もっとしっかりとした意見を述べた方が良いな。


感想を簡単に頭の中でまとめ始めた俺に、しかしカルマは既に満足そうで、何度も頷いてから一歩後ろに下がった。


「そっかぁ、うん。うん……わかった。へへっ、なんか、ありがとな?」

「おうおう、気にすんな。お前には常日頃世話になってるし、これくらい当然だ」

「それ関係あるか?―――まぁいいや。んじゃ、またなんかあったら来るんで、楽しんできな!」


じゃーなー、なんて陽気な声と共に駆け出したカルマは、周りに遮蔽物なんて無いのに姿が急に掻き消える。

最初はその技術に驚かされたが、変装技術の応用だと知らされてからは「羨ましいなぁ」の一言に落ち着いた。


俺と違って暗殺に適した力を持っていて羨ましい。

俺もせめて、あのゴブリンを倒した時のような静かさを維持できれば、狂戦士の汚名も雪げるというのに。


「……俺も、遊んでくるか」


どうせ仕事まで時間はある。

だったらせっかくの海水浴、楽しんでやろうじゃないか。


既に海に入ってはしゃいでいるガルム達の方へ、歩き始めた。

狂戦士要素がどこにも無いですね。多分次回でようやくハッチャケた戦闘シーンが書けると思います。

勘違いの方は、一応「この人はノガミじゃないよね」って思われている事とかカルマへの云々とか色々ありますが、視点をキャラクターの内一人に絞るとわかりにくくなってしまいますね。

僕の表現力不足も否めませんが。


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