第八十六話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
〔もういいでしょう、後は私が話します〕
玲緒奈の口から彼女とは違う女性の声が響いた。
「あなたは?」ソードが訊ねると「ジ・タ・ハークでもあり、ディ・フォンの妻サーチフォムです。そして人類を創った創造主であり、人類の母です」
と名乗った声は元の玲緒奈の声になった。彼女が顔を上げると瞳は白く輝いていた。
「玲緒奈さんはどうしたのです?」
「玲緒奈は私の中で意識を保って存在しています。安心してください。彼女から代わってもらいました。あなたの質問に答えましょう。今の貧困は、先進国の廃棄する食料から栄養素を抽出し、貧しいものに与えなさい。特に日本は廃棄が酷いですね。生ごみをきちんと活用していない。無駄なものは一切省くのです。今までの食生活を改めて下さい。これからは栄養素を取る為だけの食事が主流とするのです」
「食料に対しては対策可能に思えます。でも、先進国のおこぼれを途上国に施すのはどうでしょうか?」
「それはあなた達の先進国のおごりですよ。それがどんなものだって人は口にします、飢餓はそれほど本当に深刻なのですから」
「では、飢餓や貧困な彼らの住むところはどうなります?」
「寒さや暑さに強いシェルターを開発し、そのものに避難したものや、に家無き者与えなさい。水はろ過装置により解決できます。街の完成までのその場しのぎですが、やらないより良いと思います」
「6のジェンダー平等を実現しようは、どうなります?」
「ジェンダーの問題は、人類は皆、将来サイボーグ化し、性別は本人によって自由に変えられるようになります。それこそ日替わりで性別を変える者が出てくる可能性だってあるでしょう。性の違いは問題にならなくなるでしょう。人はいずれ、機械へと進化していくのです」
〔―そして、人は光速を越えて私のいる星へと辿り着くのです〕
サーチフォムの声が神々しく響いた。
「あなたの元に行くのですか?人類は」
「それはあなた達次第です。無事にあなた達が辿り着けるのか、下等動物としてこの星で滅ぶのか。我が夫ディ・フォンとの賭けです。玲緒奈は人類が私の元に来ることを決めたようですが」
サーチフォムの声音が元に戻った。
「賭けですか?」
「そうこれは私達の壮大な賭け事なのです。私達は自分に似た人間がどのように進化するか、観察しているのです。壮大な実験です」
「そんな事の為に人類は創られたのですか?」
ソードは無情な言葉に憤慨し声が震えていた。
「元々はあなた達人類は私の想像から生まれたもの、無事に進化することを願っています。今回は、恐らく私の負けになりますね。認めたくはありませんが。人類は私の元に来るでしょう。そして、私の元に物語を届けて下さい。あなた達の物語は、何度読んでも毎回少し違うのですよ。今回は私が賭けに負けたので、久しぶりに物語が読めます、楽しみですね」
サーチフォムは嬉しそうに笑った。
「大丈夫です。人はもう進化の一角を現し始めています。次々と発明やアイデアが生まれてくるでしょう。開発の途中で、閃く、即ち思い出しているのです。これから閃きの連鎖が始まるでしょう、そうして思い出すのです宇宙に行く術を。そう、人々は思い出しているのです。人類の黄昏と夜明け、この時を。私はあなた達に思い出すきっかけとして、この解決策を伝えたのです。ここまできたら、あなた達の勝ちです」
「・・・・・・それが、人類の起源であり、進化の理由ですか?」
ソードの静かな声が響く。怒りを抑えているように窺える。
「あなたの怒りがよくわかりません。これから人はさらなる進化を遂げるのですよ。時空を超えて宇宙の深部へと向かうのです。その時の為に私は遠くから常に手を差し伸べていますよ」
サーチフォムはこの会話で初めて柔和な声を出した。
「私はこの身体から宇宙へ飛び出す人類の一人となろうと思います。若々しい身体ではありませんが気に入りました。私のものです」
白い瞳のサーチフォムはそう突然言い出した。
『そんな!』
玲緒奈の驚きの声が聞こえる。
「本音が出ましたね。ジ・タ・ハークでもある、あなたが望むのは、それだと遠い昔に先祖がディ・フォンに教えられ、伝わってきましたから、わかります」
ソードは確信に満ちた声で言い放った。
「私がディ・フォンの子、イノスを求めているのを知っていたと?」
サーチフォムは微笑した。
「イノスにあらゆる事を吹き込んだのも、あなたですよね。レオーナ姫の眠っている時に、時より白い瞳で出現したと聞いています」
ソードがサーチフォムの核心に迫った。
「そうね、けれど、何を言っても、彼は揺るがなかったわ。あの方にそっくり、だから好きよ。あの子は私とディ・フォンの間に産まれた唯一の子イノス、そして最強の兵器、魔剣シェルシード。私を助け、時に倒す諸刃の剣。私の嫌な言葉が刻まれ私の心を壊すもの。それでも私は愛する、唯一の子だから。誰にも渡したくないわ」
ふふ、と笑った。
『私の身体よ、返してください』
玲緒奈が訴える。彼女の身体は様々な声で震えた。
【私こそ、私達が紡いだ理想像であるイノスの元へと行くのよ】
〈私よ、私がイノスの妻になるのよ!〉〈私よ!〉〘私は彼とは行きたくないわ〙玲緒奈の身体からあらゆる声が湧いてきた。
『私は、星野玲緒奈です。他の誰でもないわ』
玲緒奈は消え入りそうな声を吐いた。
【でも、お前は神々が許さないのよ。一人で幸せになるなんて許さない】
『私の記憶が、物語の中で神々が許さないと言われたことを覚えているわ。皆、神々から許されないのよ』
玲緒奈は必死に反論した。
【その神々は私達の事、大昔の女性は神だったのよ。その神が許さないのだから、お前はこの世から消え去るの】
〈そうよ、消えてなくなりなさい〉幾つもの声が玲緒奈を責める。〘私達全てが彼女達などの考えが総意だとは思わないで〙小さな声も聞こえる。ジ・タ・ハークは様々な感情の塊、一枚板ではないようだ。
そんな・・・・・・玲緒奈は自分の中に在る彼女達の一部に消されようとしている。
「これを使いなさい、諸刃の剣。ジ・タ・ハークの渇望したもの、そして弱点です」
ソードの声と共に上から何か長い物が玲緒奈の元に降りてきた。




