第八十五話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
「今から話す事は、きっかけでしかありません。事態を乗り越えていくのは私達人類だという事を忘れないでいて下さい。この案は世界に戦争や紛争が無い事を前提として話します。まず、どの環境でも衣食住を保てる街を作る事。衣食住を充実させれば、人の生活は最低限成り立ちます。他と完全に孤立しても生活できる街づくりをする事で、現代社会の問題も解決できると思います。この街の人はAIにより管理され平等に扱われます。それにより高度な教育と充実した生活を送ることが出来ます。砂漠や荒野でも場所を選ばない、どこでも建築可能で環境に影響されない建築物の設計図を作るのです。それを基礎に街づくりをします。街以外では自然な環境を保つ事で、豊かな自然が残ります。人類による管理された自然ですが。まず住むところは高いタワーという建築物で、十五畳くらいの部屋に個人各々が住み、衣類は季節問わずに快適な体温を保つ服を平等に身に着ける。スマートグラスにより、視覚に今で言うプロジェクションマッピングのようなものが生活の中で広がり、自分の服は自身のスマートグラスの視界によって自由にデザインされたものを投影させることが出来る仕組みに。基本的に勉強や仕事は自分の部屋で済ませる。部屋からの移動時には立方体の箱のようなものに囲われて移動。車は使わない事になります。箱の中の視界は三百六十度外の世界が広がって見えます。街との移動は箱のまま列車に乗り移動することに。基本、箱は自動で動くが、自身の速度で歩く事も可能。これにより人の接触を避けることが出来ます。人と触れ合うときは検査をした結果、接触可能か判断されお互いの部屋や、街に設置してある、ふれあいの場所などで同じ空間に居ることが許されます。食は街の住人がタワーの周りに広がる農地で野菜などを育てる事により街自体が自給自足を可能にします。街の住人は基本作物を育てる事が仕事の一つであり、この第一産業が、働き甲斐を生み、彼らの一番のステータスとなります」
玲緒奈はディ・フォンの言葉を一気に話した。玲緒奈の頭にはディ・フォンの言葉が自然に浮かび言葉が溢れていた。ディ・フォンが語ったように話せる。言葉に迷う事はなかった。だが、彼らの反応は無かった為少し不安に感じた。
「・・・・・・」
めげずに玲緒奈は続けた。ソード達の質問に答える際は、ディ・フォンの言葉を、なぞればいい。怖い物はない。
「この街をどこでも作る事により、1 貧困をなくそう、2 飢餓をゼロに、3 すべての人に健康と福祉を、4 質の高い教育をみんなに、6 安全な水とトイレを世界中に、7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに、8 働きがいも経済成長も、9 産業と技術革新の基礎をつくろう、10 人や国の不平等をなくそう、11 住み続けられる街づくりを、12 つくる責任つかう責任、13 気象変動に具体的な対策を、14 海の豊かさを守ろう、15 陸の豊かさを守ろう、16平和と公正を全ての人に、17 パートナーシップで目標を達成しよう・・・・・・以上これらの課題を街づくりで達成できると思います」
玲緒奈は少し自信なさげにディ・フォンの言葉を伝えた。
「では質問してもよろしいですか?」
ソードの声だ。
「はい、答えられる範囲でよろしければ」
「街を作るそれが基本なのですね?」
「はい大前提です。居住区を作る事で身体を休める場所を提供したい。その為の街の建築は必須です。街を作る事から始めないと、この課題を達成できないでしょう」
「1 貧困をなくそう,2 飢餓をゼロに,3 すべての人に健康と福祉を,4 質の高い教育をみんなに,6 安全な水とトイレを世界中に,11 住み続けられる街づくりを、などは街を作られることで達成出来そうですね。7のエネルギー問題はどう解決するのです?」
「今まで電気に頼っていた照明や看板などの視覚による情報の電力は、スマートグラスの視界だけで、その情報は展開するため従来より、かなり電力が抑えられます。エネルギー源は原子力発電ではなく、水力発電、風力発電や太陽光発電、超臨界地熱発電技術の向上、木質バイオマス発電などの再生可能エネルギーなどで十分賄えることが出来るかと思います。人々の移動は箱で水素による動力で動くことでクリーンな環境になります」
「なるほど、再生可能エネルギーの発展が鍵になるのですね。どれだけ電力が必要になるか算段する必要がありますね。では13での気候変動にはどう対応するのですか?」
「街を作る事で、辺りの自然は残されます。街の範囲は農地を含め面積25㎢くらいです。その他は人が管理する自然が形成されます。昔からある里山が理想です。これで、15の陸の豊かさは守られます。緑を多く残すことで地球温暖化対策になると思います。先程の課題である再生可能エネルギーを使う事で、二酸化炭素削減になります。カーボンニュートラルの技術は当たり前になります。街は台風や地震の被害が及ばない街を作ります。自然災害を怯える時代は無くなります」
「ここでも、再生可能エネルギーが鍵となるのですね。自然災害から街を守る方法はあるのでしょうか?」
「タワーは地震などに強い構造をしたものを、農地は気候変動に左右されない環境を作る事で対応します」
「気候変動に左右されない環境ですか?」
「はい、ガラスより遥かに丈夫なもの、例えばバイオプラスチックのようなもので覆い、囲われた中は、街自身が作った空気を入れ、作物を育てます」
「農地は広いでしょう、それを覆うほどのものが作れるでしょうか?」
「二坪から三坪程の農地が個人に与えられます。その個人の農地ごとに覆います。それだと十分開発出来ると思います。穀物のような大規模で育てる農場はLEDで太陽光の代わりとし、作業は機械化されます」
「・・・・・・ふむ、改善の余地がありますが、まあいいでしょう。8の働きがいも経済成長も、はどう解決するのです?」
「働きがいは野菜などを育てていくことで解決出来ます」
「農作業を否定するわけではありませんが、その行為をしたくない人もいるでしょう。その点はどうなります?」
「あなたは野菜を育てた経験はありますか?」
「いいえ、ありません」
「是非やってみて下さい。土いじりというものは案外と人の心も豊かにしますよ。衣食住のうち衣住の条件はこの街をつくる事で保たれています。後は食です。自分達の食べる分は自分たちで作るという自給自足の考えのもと、作物を育てる事を推奨しているのです」
「街の人全てが農作業をするというのなら、他の仕事は誰がやるのです?」
「AIとロボットが全ての業務を担います。人がする事は野菜作りのみです」
「現実的ではありませんね、必ずしも農作業に対して人が前向きであるとは限りませんから」
「そうでしょうか。実際にやってみないと分からないものです。育てるという行為は人を幸せにしますよ。それとタワー以外にも人が住む世界があります。各地域によりその特色は違いますが、伝統産業を担う街も作られます。そこでは昔からの建築物に住み、人も伝統的な衣装を着て過ごします。建築物は見かけだけ伝統的ですが、気候変動や災害に強い物を建築します。そこでの暮らしと働きがいは人に十分与えられると思います」
「その街に住みたがる人の比重がタワーより多くなる可能性がありませんか?」
「この街には住む人の制限があります。二十代頃になると日本街に住みたい人は日本街に住むに値するかどうかの試験を受けます。タワーに住む人は個を重んじますが、日本街では人と関わり合う事が増えます。日本街に馴染む人が選ばれる傾向となるでしょう。伝統産業を継承する人以外は住む事はありません。狭き門であることは確かです」
「働きがいは実現できないようですね。不平等で尚且つ、一つの職業にしかつけないのは話にならない」
「街の住民がそこまで日本街に住みたがるとは限りませんよ。タワーでは遥か昔のように作物を育て生きて行く、気候変動に惑わされる事もない、ある意味理想郷ですよ?」
「この話は平行線を辿りますね。切り替えましょう。経済成長はどうなります?」
「この世界では経済という概念はありません。お金はなく、ポイントという形でやり取りはあります。それも街単位でのみ。AIによる統制された世界により同じ規格同じ生活環境がどの街でも同じく展開されます。街同士による取引もありません。しかし、技術革新はあります。人のアイデアはAIにより実現されます。開発されたものはどの街にも平等に与えられます」
「では、9 産業と技術革新の基盤をつくろう、はこれで達成されるという事ですね」
「そうなります」
「では10 人や国の不平等をなくそう、は先程の住むところによって不平等という事で成り立たないでよろしいでしょうか?」
「街に住む人は基本的に平等に暮らせますけどね。実際に街に住む体験していない、あなたの理解は得ることが出来ない事は、仕方がないことかも知れません」
「・・・・・・12 つくる責任つかう責任、はどう解決しますか?」
「基本的にタワーの住民が物を作る事は農作物以外の物はありません。持ち物は永久に着られるボデイスーツと食器のプレート、コップのみです。それ以上の持ち物はありません。伝統産業の街は物を作りますが、壊れたら作り直す技術を持ち、生活に必要な物の量しか生産しません。伝統産業の商品はタワーに住む人、他の街に住む人々が観光にやって来て買い取って行きます。買い取るといってもそれはデジタル化され商品は映像としてそれぞれの部屋で飾ったりする事だけで、物が溢れる事はありません」
「14の海の豊かさ、はどうなりますか?」
「海の生物は摂取しません。街で養殖されたもののみしか、人は口にしません。天然ものは街の人は食べる事はありません。これで、海の生き物は自然のままです。海に散らばった海洋プラスチック問題は、海や川に捨てない事を前提に、海の中のプラスチックだけ狙う数億台ものロボットで、拾い集める事を推奨します」
「ロボットで拾い集めても、何年かかるのでしょうね」
「何十年、数十年かかってもやり続ければ時間が解決します。やらないより良い方法だと思います。それとプラスチックは使わない世界づくりの仕組みを構築しなければなりません。飲み物などの液体は張り巡らされた管により部屋や指定された場所に容器を持って汲むようにしたり、皿などはプレートのみ使用し半永久的に使えるようなものを。食事で出る生ごみ等はディスポーザーにより処理され一つの場所で集め、その場で作物の肥料へと処分されます」
「17 パートナーシップで目標を達成しようは、街を作る事を目標にすることで解決という事でよろしいですか?」
「そうですね」
「街を作らなければ、SDGsの課題は解決しないのでしょうか?その街を作るまでにも、様々な問題があるように思います。解決策はあるのでしょうか?」
「街は宇宙に街を作る時の雛形となるものです。何があっても対応できる、自立できる街を作らなければなりません。人は宇宙に出ていくのですから。二酸化炭素を吸収して酸素と水を作り出す技術は、まもなく開発に成功するでしょう。このように人は思い出していくのです、宇宙に出る術を。大昔に記憶していた知識を」
「戦争や紛争、発展途上国の貧困などはどう解決すればいいのです?宇宙に出るより先に手をかけなければいけない問題だと思います」
「戦争、紛争の無い世界は私達人類の課題ですね。それを差し置いて解決方法を語るのは無理がありますね。・・・・・・人類が一丸となって宇宙に旅立つ日が来るのか、争いばかりの世の中で滅んでいくのか答えを出さないと。人類は宇宙の中では一種類の生物にすぎません、その中で考えが違う、人種が違うせいで争うなど笑止の沙汰でしかない。下等な動物として滅べばいい。戦争や紛争は無くならない、そう断言する人に言います。今世界は変わる、その分岐点にあるのだと。あなたが動けば世界は変わる」
「そんなに簡単に事が運ぶとは思えませんが」
「そう言うあなたから、始めればいいのです。何もしないのに、そういう事を言う人は本当に人を駄目にします。戦争を続ける者達は自身が殺す相手の国の人、組織の人の中に、世界を救うはずの天才をその血筋を自ら殺してしまう可能性があるのだという事を理解せねばなりません。目の前の殺す対象全てに天才は隠されているのです。何度でも言います。敵地の中に天才はいる。何もかも生み出す天才が。それを殺すのは戦争だと。自ら自身の首を絞めているのですよ、戦争という人殺しは。そして、街を作る事、この提案を受け入れなければ、2050年までに目標達成はおそらく無理でしょう」
玲緒奈は、そう言い終わると、疲れたのか、頭を下げ長い息を吐いた。




