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銀の針姫と青の剣  作者: 瑞木晶
第二章 不毛の大地レーン大陸
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第八十三話

完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




私は子供を産む事はなかった。私が引き継いだ物語も私の代で終わる。私は未来の子供たちに何を残せるだろう。何を残せただろう。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 「コード“ブルー”作戦名『青の剣』」

行くぞ、男は数人の部下と共に、とある一軒家のドアを開けた。この家の住人の匂いが溢れている玄関を通ると、そこに二階に続く階段を駆け上がった。そして、彼らが探し求めた人がいる書斎のドアを開いた。

「・・・・・・」

書斎には机に頭をつけて眠る一人の女性が。後頭部には多くの白髪が混じりつつあった。若白髪か?情報によると、年齢はそれなりに年を取っているはずだ、年相応か。男は冷静にそう判断した。彼は女性の右手首にホクロを確認した。よし、彼女に間違いない。

「大丈夫ですか?」

男は恐る恐る声をかけた。

「―私は?」

小さな声が聞こえた。彼女は顔を上げた。男は自分が思っていたより、若い印象を受けた。少し右目の目元に皺が薄っすらと一筋見えるくらいだ。

「夢?」

彼女は自分に言っているのか、彼女自身に訊ねているのか、わからない問いかけをした。

「夢を見ていらしたのですか?」

男は微笑んだ。男は黒の髪に青の瞳をしていた。

「・・・・・・夢なのね」

(かす)れた声が安堵と共に聞こえた。

「―あなた達は誰です?勝手に人の部屋に入って」

彼女はようやくこの事態に気が付いて、非難めいたことを静かに言った。

「これは失礼をしました。私はソードという者です。国連軍から派遣されております。私の一族は、この世界のとある一人の女性に涙を流させたら、この世は終わる、という言葉を伝承してきました」

「ソード?」

彼女の目が大きく見開いた。

「そうです。私はソード・メレル・ランカーの子孫です。代々名前を受け継いできました」

男はそう名乗った。

「私の物語の登場人物の名じゃない!誰に聞いたの?一族以外知らないはず。それとも・・・・・・現実なの?やはり、この物語は実際にあった事なの?」

彼女は困惑に満ちた顔を浮かべた。

「ええ、多少脚色もありますが事実です。世界の一握りの者しか、知らない伝承です。主人公はレオーナ・ランド・イシリス、星野玲緒奈様、あなたの遠い始祖です」

「確かに、一族以外に誰にも漏らしたことの無い物語の登場人物を知っている、というのだから、本当なのかしら。本当なのか分からないわね・・・・・・他にもこの物語を知っている人がいるの?」

「ええ、登場人物の子孫が他にもおります」

「ここに、カレエ・ファイツ・インラの子孫、マドリー・テル・ローズ、ソリエラ・ターラ・ヴェンなど数名おります」

とソードが名を挙げると、玲緒奈は彼らを見て驚愕したのか、口を開けたままの状態になった。

「・・・・・・本当にそれぞれ登場人物の特徴があるわ。あなた達も物語を知っているの?どうして私はレオーナとしての特徴が無いの?あなた達のような特徴が無いのかしら?」

「私はカレエの子孫。名もカレエを受け継いでいます。所々しか知りませんが、レオーナ・ランド・イシリスの子孫を探すことが、あなたを見つけることが、私達の祖先からの言い伝えであることは共通しています。玲緒奈様、あなたが始祖に似ていないのは、世に見つからないように、なるべく多くの人種と代々の者が交わった証拠です」

カレエは答えた。

「私はマドリーの子孫です。名もマドリーです。そして、人類を救う手立てを教われと。あなたには人類を救う力があると」

カレエより背の低いマドリーが、物語の中では、足が不自由のはずの彼女は、しっかりと立ちレオに迫った。―彼女達全員の視線が玲緒奈に注がれた。

「私は確かに人類を救う英知を授かりました。でも、それを誰に伝えるべきかわかりません」

玲緒奈は困惑した声で答えた。

【彼女を箱に閉じ込めて世界の全てから情報を見せないようにしよう】

急に何者かの声が玲緒奈の頭に響いた。

「・・・・・・今の何?私を閉じ込めるの?」

玲緒奈は彼らを不審な目で見始めた。

「そうしない為に、私達がここに迎えに来たのです」

ソードは震える彼女の片手を自分の手で包み込み、安心させようと微笑み、頷いて見せた。

「怖がらないで、その為に私達がいるの」

カレエが囁く。

「私はソリエラの子孫です。名も同じくソリエラです。あなたの存在を亡き者にする動きがある事も事実です。今の声はその者達の声が具現化し始めている証拠です。ここも安全でなくなります、私達と共に行きましょう」

とソリエラは玲緒奈に手を差し伸べた。

「行きましょう、私達を信じて」

玲緒奈は一瞬躊躇(ためら)ったが、手をソリエラの方へ伸ばした。

「よし、行くぞ。皆心して、この宝を守れ!」

ソードが指示すると玲緒奈の部屋のドアが勢いよく開けられた。

「どこへ行くの?」

玲緒奈はソリエラに手を取られながら彼らの用意した黒のワゴン車へと乗りこんだ。

「安全な所です」

ソードは短くそう答えると、素早く車を発進させた。


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