第七十三話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
「ソシア様、その方位磁石をお借りしてもよろしいですか?」
ソードが彼女にそう所望した。
「何を得ようとしている?」
ソシアは警戒したように彼を見た。
「いえ、それをお借り出来たら、ソシア様の代わりに私が先頭を案内できます。ソシア様が先頭だとお守りするのが困難になります。それだけです」
ふむ、それもそうか、とソシアは納得しソードに方位磁石を手渡した。
「これは必ずお返しします」
ソードは彼女にそう約束すると、こちらの方向ですねと歩み始めた。
「ここまで来ると、ここが何処なのかが分かる。バーマンの街に行く事になる」
森を抜け荒野が広がる大地を見てソードは、ほう・・・・・・と一息ついた。
「何処なのか判断の基準はあるのですか?」
レオが不思議そうに声をかけた。
「向こうにある一際高い山があるだろう?あの形はケノンの山だ。その隣の山はゼマスマスの山脈。荒野を流れる川はシリオムの川だ。この時期しか流れない。こういう点からこの地はレシノウズの荒野だと分かる。よって北北西に行くとバーマンの街がある事が分かるのだよ」
「凄いですね。地図が頭の中にあるのですか?」
「ああ、そうだ。ウェンデルにいた時に、幼い時からソシア様に、この世界の地図、図形、現在地を知る方法などを叩き込まれているのでね」
「大変だったでしょうに」
レオが同情すると、地図を覚えるのは好きだったから、苦にはならなかったよ、とソードは笑った。
「荒野だから、魔類が襲う可能性大だ。今までが幸運だったに過ぎない。皆気を付けろ」
ソードは皆に警戒を促した。
「今度はリオ達も荒野を共にする。人里に行かなくても、バーマンの街まで、食料は十分ある。このまま、踏破しよう」
バーマンの街に着くまで魔類や野盗に襲われながらも、レオ達は満身創痍で切り抜けた。
街に着くまで八日かかったが、街を見つけた時に、疲れも吹き飛び、皆、笑顔を見せた。
「この街には、ウェンデルの関係の者がいない。よって、どんな者がいるか分からない。目立つ行為はしない方がいい。気を引き締めろ」
ソードは皆に呼び掛けた。それに対して皆、無言で頷き、緊張したような面持ちを見せた。
「・・・・・・」
バーマンの街は鉄の街だった。赤錆で覆われた廃墟のような街だった。
小さな砂嵐と共に枯れ草が丸まって風に転がっていく様を見て、レオは捨てられたような街だと思った。
「人が居ないみたいだが、街として成り立っているのか?」
クレアがレオに静かな声で耳打ちした。
確かに、人がいない。死んでいるかのような街だ。
「あそこに、宿屋があるみたいだ。行ってみるか」
ソードが指し示す方向に灯りが灯っている。温かい光だ。――人がいるのか・・・・・・レオはその明るい光にホッとした。




