第六十五話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
次の遺跡のある方に築かれているラスティンの街へは、タモンの人々から驢馬を譲ってもらったので、それに荷物を載せて旅を続けた。その間、魔類や野盗の襲撃にあったりしたが、レオ達はその度に着実に、なぎ倒していった。
・・・・・・カルームの者からの襲撃は、その間無かった。ソード達だけで行く人里にも気配はなかったという。
「不気味だな」
とソードはカルームの者の思惑に不信を感じていたが、より用心しないといけない、と皆に言うのみだった。レオもカルームの者の事が気にかかっていたが、前へ進む事だけを頭に置き旅路を急いだ。
こうして、レオ達はラスティンの街へとたどり着いたのである。
「凄いな、この街は銅の鉱山で潤っているのだな。人の量が半端ないな」
ソードが辺りを見渡しながら皆に言った。
「これだけ、多いと人混みに紛れることが出来るな」
とクレアが安堵したように、ふうと息を吐いた。
「ここでの拠点はフェムナという料理屋だ。レッシー・ラテンザが経営していると聞く」
「レッシーがここに居るのですか?」
レオはソードの言葉に食い気味に訊ねた。
「ああ、細々と経営して成り立っているようだ。あまり、繁盛すると悪目立ちするから程よく営んでいるといったところだ」
「そうですか。レッシーに会えるなんて、夢のようです」
レオは顔をほころばせ喜んだ。旅の道中で心配事の一つだった彼女に会うことが出来る。彼女に会えばエーメの事も知っているかもしれない。レオはエーメがあれからどうなったのか気掛かりでならなかった。ホクロを使ってレッシーに何度も連絡を試みたが、クレアにある程度、本人の近くじゃないと使い物にならないと言われた事がある。その時は何も手立てがない事にさすがに落ち込んだが、こうして、彼女に会えるのだ・・・・・・レオの心は踊った。
ソードはあそこだと、フェムナの店を見つけた。
―カン!カン!店の外には薪を割る男がいた。よく見ると灰色の長い髪を束ねている。無造作に括りつけられているが本来の髪質は変わらない。それに気づいた時レオの胸は高鳴った。
「もしかして、レッシー?レッシー・ラテンザ?」
レオの声に振り向くその人物こそ、レッシーだった。彼女は男のような格好でいたので始めは分からなかったが、まさしくレッシーだ。
「レオーナ様!」
自分に飛びついて抱きしめるレオにレッシーは驚き、自分も強くレオを抱いた。
「美しい髪が黒に・・・・・・」
「うん、レッシーも髪がそんなに手入れしてないな。前じゃ考えられなかった」
「髪なんて構っていられませんよ、ここでは。ここはこの様なだらしない恰好が目立たないのです」
レッシーは後れ毛を掻き上げると笑って見せた。
「髪が乱れているレッシーを拝む事ができるとは思わなかったな」
クレアがふふと声をかけた。
「クレア様に、ソード様。お久しぶりです。それからあなた様がソシア様でよろしかったでしょうか?」
「うむ、世話になる」
ソシアは偉そうに頷いて見せた。
「水色ちゃんは、あなた方の到着はもう数日先だと伝えてきましたが」
レッシーは、意外と早かったですね、と嬉しそうに笑った。
「驢馬をもらったから、足取りが軽くてね」
ソードは嘶く驢馬に手を当て答えた。
「水色ちゃんって、鳥の事?」レオが訊ねると「ええ、そうですよ」とレッシーが答えた。
「そうなんだ」
レオはここにも鳥がいることに喜んだ。あの緑ちゃんは可愛かった、ここの鳥も同じような鳥かな。彼女は早く水色ちゃんに会いたかった。
「店に入りましょうか、ここで立ち話をするのはちょっと・・・・・・」
レッシーは皆を店へと導いた。
店の中は雑然として所々油で変色している。あまり衛生的とは言えない汚さだ。
・・・・・・これでは店が流行らないのもわかる。鉱山であるここでは当たり前の事なのかも。レオは店に立ち込める油の古い臭いを嗅ぎ、そう思った。
「おや、いらっしゃい。お客様?」
店には小柄な黒髪の女性が皿を拭いていた。
「・・・・・・もしかしてクレア様?」
女性は一枚皿を落とし割ってしまった。が、本人は意に関せずクレアをただ涙目で見つめている。
「アーシェ?アーシェなのか?」
クレアは驚いた様子だ。
「覚えて下さったのですね!そうですアーシェです。お久しぶりです」
「久しいな。懐かしい人に会えるなんて思いもしなかった」
「ええ、ダーラの者は皆、見渡の術を持っているため重宝されていますから。私もダーラの情報網の一人です。ウェンデルの人がここを立ち寄るとの文は届きましたが、まさかクレア様だとは」
「嫁入り前に私についていた世話係です。良くしてもらいました。名はアーシェ・フロウ。彼女は料理が上手い。食事は楽しみにしてください」
クレアは皆に彼女を紹介してくれた。
「アーシェ、この方がソシア様だ。わかりますか?」
レッシーはソシアの前で跪いた。
「・・・・・・」
アーシェは口を開け、しばらくソシアを見つめたが、すぐに例のあの方ですねとレッシーに倣い礼を取った。
アーシェの肩に水色の鳥がとまる。目を瞬かせて首を傾げた。その様子が可愛い。
「もしかして、水色ちゃんですか?」緑ちゃんと同じくらい可愛いと嬉し気なレオの質問に「ええ、そうです。私の可愛い水色ちゃんです」とアーシェは水色ちゃんの喉元を撫でた。
「・・・・・・文がありますね。何かな?」
アーシェは水色ちゃんの足に括りつけられている文を取り読み始めた。
「カレエ無事なり。この一言ですけど、何か思い当たることは?カレエ様に何かあったのですか?」
アーシェがそう言うのを聞いてレオは、彼女はカレエの事も周知の仲なのだなと思った。「大した事はではない。うん、そうか、無事か。それだけでいい」
クレアはレオの目を見て彼女に答えた。
「良かった。無事なのですね」
レオは心から安堵した。又カレエ様に会いたいなあとレオが思い巡らしていると、レッシーに二階に上がるよう勧められた。




