表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の針姫と青の剣  作者: 瑞木晶
第二章 不毛の大地レーン大陸
66/91

第六十四話

完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。

 ―我がものよ、古き時代を終わらせるもの。我の手先になって動け。

レオは夢の中でそのような事を聞いた気がした。

「どうした?!何故そんなところに居る?」

とクレアの声が聞こえる。しかし、レオの視界は光に溢れクレアの姿は見えない。

・・・・・・夢の中だよな。

レオはどんどんと前に歩く感覚があるのが、不思議でならない。

『目を覚ませ!ジ・タ・ハークに飲み込まれるな!』

イノスの声が緊張感をもって聞こえた。

「何?これは夢ではないのか?」

レオの前に青い光が揺らぎ始めた。その光の中からイノスの姿が現れた。

「!旦那様!これはどういうことです?」

『お前はジ・タ・ハークに身体を奪われかけている。目を開けるんだ』

「はい!」

レオは思い切って目を開けるように気合を入れた。

「!」

すると、レオの視界には自分がクルヌーの遺跡の巨石群の前に浮かんで、皆を見下ろしている光景が飛び込んできた。そして、レオの腕に管をつけたままのワナクワが掴まっていた。

「これは?」戸惑うレオに『お前はハイリシュンの第二の太陽を動かそうとしているのだ。私の青い光の腕をとって、お前の身体を貫け』とイノスが命令した。

「ワナクワ、離れて」レオがそう言うと「いいえ、青の剣はカルウのものになるのだ!青の剣を手に入れる絶好の機会を逃すものか!」と青い光のイノスに飛びかかった。

「旦那様!」

レオが悲鳴を上げた。イノスとワナクワは青い光の中で争っているように見える。

「あー!」

絶叫と共にワナクワが青い光から地面へと叩きつけられた。

「ワナクワ!」レオが心配気に彼女を見た。『さあ、早く貫け!』イノスが再び姿を見せた。

「はい!」

レオはイノスの手を取ると、実体のある感触に驚きながら、自分の胸へと引き寄せた。レオは衝撃を受けるものだと思ったが、イノスの姿はレオに近付く時に、ただの光となって、彼女の身体を貫いた。

「うわ!」

レオの身体を青い光が貫くと同時に、彼女の身体も地面へと落ちて行った。

―!落ちる!とレオは身構えて目を閉じると落ちる速度が遅くなった。

「え?」

何か体全体に浮遊感を感じたレオは恐る恐る目を開けた。

「・・・・・・浮いてる」

レオは驚いた。床にゆっくりと自分の身体が降りてゆくのだ。青い光に包まれて。

『これで、大丈夫だ』

レオの足が地面に着くとイノスの声が聞こえた。

「旦那様?」

レオがイノスを呼ぶと青い光が消えた。背中にある青の剣シェルシードを手に取ると淡い青の光が揺らめいていたが、それも数分で消えて行った。

「旦那様?・・・・・・どういうことです?」

レオは青の剣シェルシードに訊ねたが、何も反応が無い。沈黙を守っているようだ。

「お前は自身の中に在るジ・タ・ハークに身体を奪われかけたのだ。そして、イノスがそれを防いだ。今は全て収まった。安心しなさい」

ソシアがレオに説明した。

「ジ・タ・ハークは私の中に在るのですか?」

レオは驚きの真実に衝撃を受けた。

「あれは、お前の深層部で息づいている。隙あれば、お前を乗っ取る」

そんな・・・・・・レオは言葉を失った。ジ・タ・ハークが自身の中に存在していたなんて。そのような危険が常にあったなどと、思いもしなかった。

「神様だ!」

打ち拉がれるレオにタモンの一人が叫んだ。

「神様だ・・・・・・」

ざわざわとタモンの人々の中で、その言葉は広がっていく。そして皆レオに向かって平伏し始めた。

「え?」

レオが顔を上げると、更に平伏した頭が低くなった。

「どういうことですか?やめて下さい、こんな事」レオが戸惑うと「あなた様は青の光に包まれて降りてこられた。タモンの予言書に書いてある、いつか来ると信じられている神と同じなのです」とユリカシが答えた。

「そんな・・・・・・何かの間違いでは?」

レオは困惑した。

「事実だろうな。昔そう言い残したのは私だからな」

さも当然のようにソシアが言い放った。

「何言い残しているのですか」

レオは何て事をとソシアを咎めた。

「凄いな、あなたが神様だなんて」「神様か」

といつの間にか傍に来たクレア達が揶揄(からか)った。

「やめてください」

レオは困り顔だ。

「それにしても、青の剣シェルシードのマスターは凄い力があるのだな。この目で見るまでこの様な力があるとは思わなかった。まさしく神だな」

とソードはレオの持つ力を驚異に思っているようだ。

「そういえばワナクワは?大丈夫でしょうか。地面に叩きつけられたみたいですけど」

レオは急に神だと崇められたせいで、頭が混乱したが、ようやく彼女の事を気にかけた。

「あれなら、そこに」

とソシアが巨石の隅で、小さくなったワナクワを指差した。

「ワナクワ!大丈夫ですか?」

レオは彼女に駆け寄った。

「青の剣シェルシードを奪おうとした奴に情けは無用じゃ。ほおっておけ」

ソシアはレオの背に非情な言葉を言ってのけた。

「・・・・・・私は何を?」

顔を上げたワナクワは、幼い小さな子供の顔をしていた。それはまるで生まれ変わったかのようだ。

「青い光の事を覚えていますか?」

レオは優しくそう訊ねた。

「青の光?」

ワナクワは透徹した眼差しでレオを見た。

「覚えてなければいいのです」

レオはワナクワに言うとソシアに向き直った。

「これも、青の剣シェルシードの力ですか?」

「そうじゃな。・・・・・・ワナクワよ、命拾いしたな」

誰が聞いても、ゾッとする声色でソシアが答えた。

「こんな小さな者に怖い事言わないでください」

レオがそう(たしな)めるとソシアは小さいと言っても長く生きた婆には変わりはない、とそっぽを向いた。

「ワナクワは悪だ!青の光に弾かれたぞ。神から何かを奪おうとした!悪い奴!」

ざわざわとタモンの人々が騒ぎ始めた。

「この事態どうする?」

クレアが騒ぐタモンの人々を見て、レオ達に訊ねた。

「お前がタモンの神になり、ここを旅立つと伝えろ。そしてワナクワはお前の代わりだと言え」

ソシアの提案にレオがそんな事できませんよ、と困り顔だ。

「そうするしかない。俺もそう思う」

とソードも賛同した。

「そうだな、ここにはもう用事が無い。タモンの人々にわかってもらうためにも、そうしなさい」

とクレア達も口々にソシアの意見に賛同した。

「やってみる事だ」

ソードがレオを促す。

「―うう」

レオは言い返せない自分を呪い、覚悟を決めた。

「タモンの人々よ!私は訳があって、この地を離れる」

レオがそう宣言すると彼らは騒めいた。

「しかし、いつの日か戻りお前達の元に止まる。その日まで待っていてほしい。それまで、ワナクワがこの私の代わりだ。神の化身として扱いなさい。私の言葉を信じてはくれまいか」

レオは何とか言葉を紡いで、そう彼らに呼び掛けた。ウェンデルにいた頃、カレエに演技指導してもらったおかげで、何とか芝居が出来たとレオは彼女に感謝した。

「我が神がそう言うのなら・・・・・・」

タモンの人々はレオの言葉に、中には泣く人もいたが、承知してくれたようだ。

「では、さらばだ」

レオの声に彼らは平伏して答えた。

「・・・・・・」

レオはそんな彼らを見て、居心地が悪くなった。何か落ち着かない。早くこの場を立ち去りたかった。

「行こうか」

レオはソードの声に息をつくと彼の背を追った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ