第六十話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
―この街を旅立つ夜がきた。カレエとクロウドはお互い別れと再会を誓っている。
「奥様、絶対に迎えに来ますからね。無事でいて下さい」
と言うとクロウドは大泣きした。
「もう、私を信用しなさいよ。老婆を演じきって見せるわよ」
とカレエは夫の肩を叩き、笑って見せた。カレエの身体は立ち上がるくらいの体力が戻ったようだ。
「カレエ様、お元気で。必ず又会いましょうね」レオが声をかけると、「そうね、いじめがいのあるあなたと、再び会えるのは楽しみだわね」と不敵に笑った。
「相変わらず怖いですねカレエ様は」
レオは自分がつらい時でも、こういう人だなとカレエの気丈さを頼もしく思った。
「あら、私はいつでも優しいわよ」
「そうですね。カレエ様は本当の心根は優しい方ですね」
「あらまた、口説きにかかっているの?本当に人たらしね」
「そういうつもりじゃないのですが」レオが焦ると、「しっかりと自分のすべきことをやり遂げなさい。その時に、また会いましょう」とカレエはレオに手を差し伸べた。
「ええ、また会いましょうね」
レオはカレエと固い握手を交わした。
「次に会う時に、例の絵を渡してあげるわ。今は荷物になるから渡せないけど」
「ああ、例の絵ですね。支払いが終わってませんが」
「そうね、構わないわ。特別よ」
「そうですか、ありがとうございます」
「私の最高傑作よ。楽しみにしておいて」
「はい」
レオ達はお互いを見て満面の笑顔を浮かべた。レオを見るカレエのその目は少し潤んでいるようにも見えた。
「じゃ、行こうか。カルームの者に気を付けて」
ソードの声に皆が頷き店の裏の戸から出発した。ただ一人カレエを残して。店の裏から続いている細い道は、ごみが散乱したり、物置になって通りにくいところもあり、早く進むのが少し困難だった。
―それでも、表の道を行くより、こちらの方がまだ人目につかないはず・・・・・仕方ないことだ。レオは口元を覆う布を鼻の頭まで被り直した。
「皆さん、今から街を出ます。ここが一番襲われる可能性が高いと思います。気を付けて下さい」
とクロウドが小さな声でそう注意を促した。
先を行くクロウドが足を進めたのは、下水道のトンネルだった。輝く月夜の晩の為、トンネルの中に流れる水が、ゆらゆらと光って見える。
「―!人影があります!」
皆がトンネルに入りかかった時クロウドが叫んだ。
「―」
レオが目を凝らして確認すると五人の人影が見えた。この街に着いた時に追って来たカルームの者のようだ。
「やはり、待ち伏せていたか。行くぞ」
ソードは剣を持ってトンネルへと進んだ。
「・・・・・・」
レオは心の中でシデルートの剣士達を呼んだ。ソシアを守る為だ。そして、青の剣シェルシードを背から取り出し構えた。
「この場では剣は短い方がいいです」
レオがそう言うと青の剣シェルシードは青く点滅し、トンネルでの戦闘に適した長さに縮んだ。
「―」
トンネルでの戦闘が始まった。相対する彼らは今までのどの敵より手強いとレオは感じた。急所を一突きなんて甘い事を言っていられないくらい強い。レオは集中力を高め、敵に挑んだ。
―まず一人、レオは敵の一人と一騎打ちをし始めた。敵の攻撃は俊敏でレオは自身を守る事しか出来ないでいる。青の剣はレオを助けたが、敵の方が今までより攻撃力が高かった。
「私もお力になります!」
セノムがレオの助けに入った。
しかし、二人がかりでも敵の戦闘力は高く、苦戦していた。
―どうしたものか・・・・・レオは考えあぐねながら次の一手を打つ機会を待った。
「・・・・・・!」レオは遂に敵に隙を見つけた。―足払い、今だ!
「ハッ!」
レオは一気に敵の足を払った。敵は後ろに転がり彼女は、敵の喉元に剣を突き立てた。そして、首を刺し敵の命を奪った。
「・・・・・・」
レオは敵の血で濡れた腕を払うと再び戦闘に入った。
―何も思うな、何も感じるな。
レオは自分に言い聞かせて、セノムと共にゲルダムが戦う相手に向かった。
「・・・・・・」
ゲルダムの方は戦闘能力が高かったせいか、敵はもう命を落とそうとしている。
「命をいたぶらないで。せめて早く楽にしてあげて下さい」
レオの命令に二人はとどめを刺した。
「後は?」
レオがそう他の敵を探すと、ソード達が既に倒した後だった。
「皆無事か?」
ソードが声をかける。
「・・・・・・くっ!この匂いは!アッセンバーの匂いだ!この敵の血には毒があります!後からじわりと効いて行くやつです!皆さんすぐに水で洗ってください」
クロウドが切迫した表情で叫んだ。
「それは、いけない」
皆、彼の声に慌てて従った。下水の水なので汚かったが、そんなことは構っていられない、レオはよく敵の血を洗った。
・・・・・血まで毒にするなんて、アッセンバーは確か、慣れさせるのに苦痛を伴うとセンドリーに聞いたことがある、身体にもよくないのに、彼らは大変な思いだったろうに。レオは倒した敵に同情した。
「これで、一山超えましたね。行きましょう、クルヌーの遺跡に」
クロウドの声に皆頷いた。




