第五十六話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
シュゼンバーの街は荒野の中にありながら、とても発達した機能がある活気に満ちた街であった。街の道は石畳みで敷かれ、道の両脇には下水道の水が流れており、レオの想像以上に大勢の商人が行きかっていた。この地が長い戦禍に苦しんでいたとは思えないほどの賑わいだ。香料の臭いや、食べ物を焼く臭い、様々な人種の汗や体臭、砂ぼこり・・・・・・街を歩き進み、この街の特有の臭いに包まれながら、レオはウェンデルの街を振り返っていた。初めてウェンデルの街を通った時の人々の生き生きとした声がレオの心に蘇って来た。あの時はこんな風に外の世界に行けるとは思わなかった・・・・・・。ウェンデルの街に来ていた商人達はどうなったのだろう。どこかで商売をしているのかもしれない。もしかすると、この街にもいるのだろうか。
「・・・・・・」
とはいえ、この街で彼らを探すことは出来ない。あまり辺りを見渡す行為をすれば目立つ、レオは、ただ前を行くソードの後をついて行った。
シュゼンバーの道をソードは複雑な動きで進んで行く。迷路のようだ。中央の道を外れると同じような店が建ち並ぶ細道が多く、もうどこを通って来たか、わからない。
「―・・・・・・」
何かに後をつけられている?レオはソードを見た。ソードは視線を感じたのか、レオの方を見た。そして、頷いた。
「え?」
次の瞬間ソードは道の穴へと飛び込んだ。レオ達もソードの後を追う。
レオが道の穴に飛び込むと、その先には地下通路が張り巡らされた空間が広がっていた。天井の所々に灯りが灯っている。
―地下通路があるんだ、この街は。・・・・・・追手もついて来るのだろうか?
地下通路にも所々ではあるが、店を開いたりしているようだ。人が住んでいる家もある。レオは建物の入り組んだ石造りの地下通路を不安と共に駆け抜けた。次の角を曲がる時、ソードはその奥の影に隠れた。レオ達もそれに倣った。
すると、通路に五人の男たちが現れた。
―やはり、カルームの追手がついてきたか・・・・・・レオは建物の闇から彼らを見た。カルームの特有の短い剣を腰に差し黒装束の彼らは、カルームの者でも、かなりの使い手のようだ。短い剣は狭い空間でも戦うには最適な武器を持っているし、黒装束は闇に溶け込みやすい。動きも俊敏で戦闘能力は高そうだ。
「消えたか・・・・・・もう少し探せ。ここら辺にいるのは確実だ」
追手の一人がそう指示すると彼らは瞬時に動いた。
「―・・・・・・」
ソードが動いた。静かに自分の足元にある木の床を開けると、その床の奥にある階段を降り始めた。
―こんなところに階段があるのか。そう驚きながら、レオもそれに続いた。
「・・・・・・」
ソードは皆が階段を降りた後、床を閉めて、つっかえ棒を挿した。そして、何かの紙を貼り唱えた。
「これで当分ここを見つけることは出来ない。行くぞ、アシェントの店は近い」
ソードはそう言うと微笑んだ。




