第五十話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
レオ達はクエイラ国から彼らが居た大陸を船で離れ、レーンという大陸のシオギワ半島に着き、この大陸を横断していた。ホジキアとディーマスという二つの大国の絶えぬ戦いのせいで大陸は荒れていた。長い戦禍の為、野盗が多く、道先々でレオ達を苦しめていた。二つの国は疲弊し、まともな政治は行われず、野盗などが台頭する世界へと変貌してしまっていた。
「るんたった、るんたった♪」
旅をする女二人が広い荒れ地の谷間の崖の上に立つ。その崖の奥にそそり立つ岩肌の近くで、女の一人が嬉しそうにスカートをひらひらさせ、回り歩く。
『あの趣味どうにかなりませんかねえ』
レオの頭の中で少年が呟く。
『女装が趣味なのは前からだろうが』
今度は違う男の声が続く。
『まったく、一国の主があれでは・・・・・・』
もう一人の男が低い声で嘆息し『・・・・・・嘆かわしい』と三人が同時に呻いた。
(うるさいですよ!ゲルダムさん!テニムスさん!セノムさん!)
レオはこめかみを押さえながら心の中で叫んだ。
『申し訳ありません』『姫、申し訳ない』『うるさかったですね。申し訳ございません』
それぞれに彼らはレオに謝った。
レオの持つ青の剣には三色の玉が埋め込まれている。黄色がゲルダムで青色がテニムスそして、オレンジ色がセノムだ。彼らはこの玉に宿る青の剣シェルシードの守り手である。柄の下にも緑色と青色の宝石が埋め込まれているが、これが何なのかはレオは知らない。その事を彼らに聞いても答えてはくれなかった。レオは何か事情があるのだろうと察する事しか出来ない。青の剣のマスターであるレオと、彼らの主人であるディ・フォンに何かあれば玉から出て、あらゆるものから守ってくれる頼もしい彼らだが、今はただのうるさい頭痛の種だ。彼らは詩を綴る者たち(ウェフ・リー・ハバート)でもあった。その事を旅をする道中で彼らに教えてもらった。シデルートの剣士は若い頃の姿、詩を綴る者たち(ウェフ・リー・ハバート)の姿が彼らの本来の姿なのだという。・・・・・・彼らは確かによくしゃべっていた。道理でいつも喧しいわけだ。
(あれが、国王ディ・フォンであり、そして、ファルンカ・ティーベ・ライツその人だとは・・・・・・それも女装趣味ですよ。ふざけていますね)
レオは心の中で呟き憤慨した。
『姫様、それを声に出さないようにして下さいね』
セノムが囁く。
(わかっています、だから鬱憤が溜まっていくのですよ。セノムさん)
『そうですけど、もう少し慎重になっていただかないと』
(それより、問題はあれでしょう。あの女装はかなり目立ちますよ)
レオは周りを浮かれて歩くディ・フォンを睨んだ。
「なあに?何か言った?この服の事?可愛いよねぇ」
ディ・フォンは派手なピンクのひらひらしたフリル袖の衣装を着てご満悦のようだ。
今はディ・フォンでもなくファルンカの姿で女装しているのだが、垂れ目がチャーミングなソシアという女の子だという設定になっている。本人の希望で。
ディ・フォンがファルンカである事にも驚きだが、女装趣味があるとは思わなかった。レオの父、ランカー王があの癖が、なおってないのかと笑ったのは、この事かと今さらながら思う。しかし、いくら人が居ないからといってこれは止めさせないと。
「その恰好いつまでしているんですか?もうじき他の者も合流するはず、いつものもう少し地味な格好に着替えて下さい。派手過ぎて悪目立ちします」
「わかったよう。でも、もう少しだけ楽しませてよう」
ディ・フォン改めソシアはふくれっ面でレオに文句を言った。その瞳はキラキラとレオを上目遣いで見つめ、表情は本物の女の子そのものだ。正直女のレオより女らしい。
「・・・・・・」
レオは声を出さずに青の剣に手をかけようとした。
「何?主を殺す気なの?」
ソシアはレオの殺気を感じ取り、小刻みに震えながら彼女に問うた。
「殺せるものなら」
レオはドスの効いた声で答えた。
『姫様落ち着いて下さい!』『姫様冷静に!』『レオーナ様!』
頭の中で彼らは大騒ぎだ。
「そう騒がないでいただきたい、どうせ私には彼女は殺せない、主ですしね。本当に口惜しい事ですが」
レオは悔しそうにソシアを睨んだ。
「そうだよねー?やっぱり主、大事よねー?」とソシアが握った両手を口元に付けてポーズをとって見せた。「殺せるかどうか、試してみましょうか」レオは再び殺気立った。
「きゃー!怖―い」
ソシアは、アハハ!とレオから逃げようと駆けだした。
「さっさと、この服を脱ぎなさい!殺しますよ!」
とレオは物騒な事を言いながら、ソシアの首根っこを掴んで服を脱がそうと手をかけた。
「いや~ん。スケベ!」
「今は女同士でしょうが!恥ずかしがらないでください!」
レオはどんどんとソシアの服を脱がせていく。
きゃー!きゃー!というソシアの声が響く中、レオは必死で彼女を下着一枚にした。
「容赦ないんだから」
くすん・・・・・・と胸を両手で隠して、ソシアはレオを涙目で見た。
「胸を隠さない!気持ち悪い!下着姿のくせに裸じゃないんだから、胸は見えないでしょう?早く着替えて下さい!」
とレオは薄桃色の女物をソシアの頭に掛けた。地味な服といっても、質素なレオの服よりフリルなどの装飾が施された豪華な誂えのものだ。
『段々と凶暴になってしまわれたな』『主とて容赦なし』『姫様強すぎる』
三人はレオの頭でそう呟いた。
(うるさいですよ、静かに玉に戻って下さい。もうじき彼らと合流します、気を付けて下さい)
レオがそう命令すると『は!かしこまりました』と彼らが返事を返すとレオの頭の中が静かになった。レオの命令で彼らは本来の玉へと戻ったのだ。
「全く周りに人がいないと、皆やりたい放題だ」
ふう・・・・・・とレオはため息をついた。
「帰って来られたか・・・・・・」
レオは遠くから人影を見つけた。その影二人、こちらに向かって歩いて来る。マントのフードを被っていて、ここからでは顔はわかりにくいが、歩き方で誰かはわかるようになってきた。最初は味方か敵かソシアに教えてもらってばかりだった。一応敵の可能性を考え、レオは崖の地面に這いつくばった。
「誰かは分かるな?」
声のする方を見ると、地味な薄茶色のマントのフードを深めに被ったソシアが、レオの横に片足立てて屈む。その様子は先程の彼女と違い、大人しく声さえも低くて暗い。
「ええ、ソード様とクレア様ですね。主は真面目になりましたか」とレオが声をかけると「あれはワシの気晴らしじゃ」と冷静な声が返って来た。
「もっと他の気晴らしは無いのですかね」とレオが彼女を咎めると「あれほど気分の沸き立つものはない」ときっぱりと言い放った。
そんなものですかね、とレオはこれ以上彼女とこの件に関して言う事を諦めた。
ソード達にはレオが三つの玉の彼らと頭の中で会話している事などは知られていない。窮地に立った時に、どこからか現れる彼らの居場所はこの玉の中なのだとは言えない。ウェンデルの城で彼らに出会ったのは、偶然ではなく必然だったのだとレオは振り返る。こういう運命の糸にすでに絡めとられていたのだ。ウェンデルで彼らを知っているのはごく一部の人間しか知られていなかった。ソード達やカレエ達は存在を知っている。レオもその内の一人だった。
・・・・・・秘密があると色々と疲れるな。
青の剣シェルシードのマスターであるレオは、幾つかの秘密を抱えていた。
「今日は、魔類は来ないようですね」
とレオはソシアに声をかけた。魔類とは、この旅で罪深き血族であるレオに度々襲い掛かる黒い魔物の事だ。旅に出れば襲われる―父王の言った事が本当なのだ、とレオは魔類に襲われるたびに、ひしひしと感じていた。セオドアでは魔物と呼んでいたが、ウェンデルの者は魔類と呼ぶらしい。
「まだ今日という日が終わるまで、分からぬ」
ソシアは厳しい顔を見せた。魔類はいつ襲ってくるかわからない。用心に越したことはない。本来この広く見渡せる荒れ地に、二人でいることは非常に危険なはず、なのに何故、彼女達は二人でこの様な荒れ地の崖に居るのかというと、敵が潜むかもしれない人里にいるより、ここの方が比較的安全なのだ。魔類が、人が何処から来るのか平地の高台だと見つけやすい。特に魔類は地を這ってレオに近づいて来る。しかも、日が沈むと、夜目は効かないのか、襲ってくることもない。その姿は遠くから発見でき、いつでも戦闘態勢に入れる。それに魔類が近づくと青の剣シェルシードがレオに音で知らせてくれる、すぐに襲われる可能性は低い。
―しかし、次は後ろから襲ってくるかもしれない。レオは全ての感覚で警戒した。何が起こるかわからない。彼女は息を抜く暇はなかった。
魔類は人里など人の多い場所には出現しない。理由はよくわからないが、それだけが彼らの弱点だ。それでもレオ達は人里に居ることは出来ない。人里はカルームの者が潜んでいる可能性がある。いまだにジーンからの追手は続いているのだ。それ故にソード達が人里に出向いて食料や情報を手に入れて来る。今日も彼らは数週間分の食料を手に帰って来た。
―ぴゆう!彼らだという合図の口笛が鳴る。ソード達は必ずこちらに近づくと、そう合図をしてくれる。
「ソード様達だ、縄梯子を降ろします。いいですか?」
レオはソシアの顔を窺った。
「うむ、気は抜くな」
そう彼女は短く答えるとレオから一歩下がり杖を握った。ソシア唯一の武器である。杖の先には魔類に効く石が埋め込んであり見た目より強い武器だ。
「いきますよ」
レオは崖の岩の一部に縄梯子の縄を括りつけると縄梯子の足をかける方を降ろした。クレアが上がって来る。背には大きな荷物がこれでもかと詰め込まれている。彼らの荷物の大半は水だった。トリルという家畜の胃袋を乾燥させたものに水を入れている。水源が乏しい彼らの旅は水が不可欠だった。しかし、よくこれほどの荷物を背に、ここまで上がってこれるものだと、いつも感心する。
「ふう・・・・・・」
クレアは崖に上がりきると、額の汗を拭った。
「お疲れ様です、クレア様」
レオは彼女を労い、荷を降ろすのを手伝った。
「魔類は襲わなかったか?」
クレアの後ろに、いつの間にかソードの姿がある。
「お疲れ様です、ソード様。今日はまだ魔類は近づいて来ません」
そうか、とソードはそう言うと、荷を降ろして一息吐いた。ソードの荷はクレアより大きい。彼らはとても疲弊しているはずなのに休まず、すぐに荷をほどき始めた。レオ達にもこの荷物を振り分けるためだ。
「ここから、街へ向かう。歩いて大体二週間くらいかかるようだ。その街は人が多く、リオ達も人込みに紛れて、敵から見つけにくいかと思われる」
旅をするにあたって彼らはレオの事をレオーナ姫とは呼ばないようにした。リオという愛称で呼ぶことに決めていた。敵の目を欺くためである。レオ以外の名はウェンデルの者とセオドア、現在追われているカルームしか知られていない。カルームの者はレオの名に特に敏感だった。彼らはリオと呼ぶにあたって敬語を使わなくなった。年下に敬語は不自然だからだ。ただしソシアは別格だ。彼らにとって、ウェンデルの王に敬語無しで話すことは憚れる。ソシアは豪族の一人娘のお嬢様と設定にして扱われている。ソシアは基本的にレオとしか会話しない。ソード達もソシアが守るべき王である事から、必要最小限の事しか声をかけない。彼女は彼らにとって恐れ多い存在なのだ。たとえ女装の趣味があっても。
「そうですか、街に行けるのですね」
レオは久しぶりに荒野ではなく、街に入れることを素直に喜んだ。
「先にカレエ達がその街で待っていると鳥が伝えて来た。敵はいるが用心すれば切り抜けられるとも」
とソードが教えてくれた。カレエ達は大陸に着くや、早馬で元からあるダーラの拠点に辿り着いていた。ダーラはこの大陸レーンや他の大陸にも色々と拠点を持つ一族だった。その目はこの世界を広く把握し、ウェンデルに情報を与えてきたのだ。目立たないように大陸を忍んで歩くレオ達の先に動いて、イノスの場所を示すといわれる遺跡の情報や敵の動向等を探り、鳥を利用してソードに伝えてくれるのだ。
「カレエ様達がいらっしゃるのですね。早く会いたいです」
レオは旅先でも年下のカレエを敬語で呼んだ。レオにとってカレエはやはりカレエ様なのだ。
「ああ、そうだな」
ソードが微笑んだ。その瞳はウェンデルにいた時の夏の濃い青空のような色ではなく、宝石のような青をしている。ウェンデルの男性はウェンデルを出ると瞳の色が変わるらしい。この瞳の色は彼が使者としてセオドアに来た時にレオと踊った人と同じだった。つまり、ソードはレオが嫁ぐ前に彼女と会っているのだ。ソードだけじゃないクロウドも本来暖かな春の青空のような青の瞳の持ち主らしく、使者としてセオドアに来てレオと踊ったと聞いている。瞳の色が変わるなんて詐欺です、レオがそう言うと、この瞳の方が本来の瞳の色なのだよと困り顔でソードは説明した。
―瞳の色が変わっていたら、踊っていた相手なんて分かるはずもない。レオはいまだに腑に落ちない。それにウェンデルの人だけが、青の瞳をしているのだと思っていたら、意外にもレオが、これまで見かけたこの大陸の人の半分が青の瞳だった。セオドアだけが青の瞳を持たない特異な人種だったのだ。
「―」
青の剣シェルシードが、レオに魔類が近づいて来ることを知らせる警戒音を響き渡らせる。
「何事だ?」
レオの険しい顔を見てソードが問いかける。
「姿が見えませんが、魔類が来ます!」
レオがそう答えた時、ザザっと玉の中の三人がレオの前に現れた。
「シデルートの剣士が出ていらしたという事は、魔類が近いのだな」
クレアが身構えた。シデルートの剣士と玉の中の三人の事を、彼女達はそう呼び、彼らは崇敬されていた。ウェンデルに居た頃から、彼らは一目置かれていたのだ。
「どこだ?どこから来る?・・・・・・後ろか!」
レオは魔類の触手が真後ろから延びるのをかわした。
【後ろから来るとは思わなかっただろう?】
魔類はググググと笑いながらレオ達を襲う。魔類は人間の背くらいの高さで、山のような形をしている。そのすそ野から何本もの触手が伸び、人に襲い掛かるのだ。その姿は黒くブヨブヨとしており、山の上の方に、一つ大きな目がこちらを見ながら嬉しそうに細める。
―この様な生き物でも知性はあるのだから油断できない。どうしてこのような事態を予測したのに対応が出来ない。レオは自分の迂闊さに唇をかんだ。
「くっ!」
青の剣シェルシードはレオの意思では動かない。勝手にレオの身体を動かして魔類を倒してゆく。魔類は実際のレオの剣術では立ち行かない相手でもあった。剣はレオの身体能力の上をゆく為、いつもレオの身体は限界に達する。その為レオは自己で鍛錬を重ねてきた。最近では、だいぶと剣の動きにもついて行けるようになったとレオは思う。それでも疲労感はまだ残る。もっと身体を作らないと。戦っていると、イノスの呼吸音が聞こえてくるような気がする。その音に自分の呼吸を合わせる。すると彼と一体化して動きが速くなっていく。攻撃力が上がっているのを感じる。その時レオの身体は青く揺らいだ光をもつ。
「・・・・・・」
テニムス達やソード達も善戦しているが決め手がない。剣はレオの流れる汗とともに、渾身の一撃を放った。それは魔類の身体を頭から真っ二つに裂いた。魔類は頭から引き裂かれると消滅する。
【まだまだ、だな。銀の姫よ】
魔類はそう言い残し、風と共に散り散りに消えて行った。
「―迂闊でした。今まで見渡せるこの範囲しか魔類はやって来なかった。・・・・・・後ろからやって来ると一応警戒していたのに対応が遅れました。申し訳ございません」
レオは息も切れ切れに、そうソードに反省の意を伝えた。
「油断が一番危険だな、魔類よりもその方が実は怖い」
「はい、肝に銘じます」
レオは自分の未熟さを恥じた。
「これで、今日は魔類は来ないだろうが、一応警戒は解かないままで、食事の用意をしようか」
はい、とレオはクレアが夕食を作るのを手伝った。魔類は今まで、一日一度しか襲ってこなかった。彼らが後ろからは攻撃しなかったのに、今日は仕掛けてきた。魔類は今度は一度戦闘しても、もう一度やって来る可能性はないのだろうか。
「手が止まっているぞ。リオ」
クレアが手が疎かになっているレオを注意した。
「ああ、すみません。少し考え事をしておりました」
レオは焦りながら荷物から、食べ物を取り出す作業を再開した。
「考え事?何か思う事があるのか?」
「―魔類の行動の事について考えていました。一日に二度、三度と襲う可能性はあるのでしょうか?」
「そうだな、可能性はある。・・・・・・夜も襲わないとは限らない」
「・・・・・・そうですよね。可能性はありますね」
「気を引き締めないとな。用心に越したことはないが、魔類はお前の剣とシデルートの剣士達が退治してくれる。だからこそ、お前達をこんなところで、待たせていられるのだからな。それよりも怖いのは人間だ。人里にカルームの者らしき姿があった。追手はなかったが、気を付けた方がいい」
「はい、わかりました」
レオは、人里に一、二度くらいしか行った事がない。旅に出る前に行くことを夢見ていたエフェローメの滝などの観光地に寄ることもない。食べ物も干し芋とか固く焼いたパンなどの日持ちの良いものしか口に入れてない。煮炊きは瓦斯という青い炎で料理が出来ないことも無いが、敵に見つからないように、その光が漏れないように周りを覆い隠して慎重にしなければならない為、滅多にその作業は出来ないでいた。あれ程食い倒れを楽しみにしていたのに、今となっては食事は生きて行くための物としか感じない。
「今日は新鮮な野菜を調達出来た。刻んでパンにのせて食べようか」
とクレアは葉物野菜をレオに見せた。
「あと、卵もある。これはすでに茹でである。これも刻んでのせよう」
彼女は懐から卵を一つ取り出した。
「おお、今日は豪華ですね」
レオの顔が嬉しさで輝く。
「たまには、こういう物を食べてもいいだろう」
クレアはレオの喜びようを見て満足気だ。
「やっと笑顔が見れたな。久々に見るぞ。そんな顔」
クレアはレオに嬉しそうに微笑んだ。
「そうですか?」
「ああ、いつも何か胸に籠っているような感情が見える」
「・・・・・・気のせいですよ」
レオは何か見透かされたようで落ち着かない。
「悩むならいつでも話は聞いてやる、いつでもな」
「はい、ありがとうございます」
レオは話を逸らそうと、荷物の中から瓶を探した。
「このタレをかければ美味しくなります」
レオは瓶から発酵した茶色のタレを料理の仕上げにかけた。
「あのハルイという果実から作ったタレだな。美味しそうだ。よし、これでいいか?」
「はい!」
レオは嬉し気に頷いた。クレアは出来たぞ、とソード達に声をかける。
棗と干し芋、それから蒸しもち米を葉で包んだ物。メインは野菜と卵がのったパンが食卓に並んだ。
「今日はなかなか美味しそうだな」
ソシアはそう言うとパンから食べ始めた。うん、旨いと彼女は目を細めた。
「うん、旨いな。これに干し肉があれば、もっと良いな」とソードが言うと「贅沢言うな」とクレアが間髪入れずにつっこんだ。
「そうだな、贅沢か」
とすまんとソードはクレアに詫びた。
確かに贅沢、レオはパンの上の葉物野菜のシャキシャキした食感に喜びを覚えた。久しぶりに保存食以外のものを食べるなぁ・・・・・・レオは少しの幸せを噛みしめ、ゆっくりと味わった。




