第三十九話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
―そしてそれは突然に起こった。
青の小道、シーラットの入口が爆発したと同時に、大量の兵士がなだれ込んで来た。
その様子に気付いた門番は、角笛を鳴らしウェンデルの人々に警告した。人々は城の中へと我先に次々に逃げ込んだ。その混乱の声は姫君の間にも届いた。
「何?何が起こったのだ?」
朝食を食べていたレオは、口の中をモグモグしながらエーメに訊ねた。
「・・・・・・あの角笛の音はシーラットから敵が入った可能性が。すぐに調べてまいります!」
エーメは厳しい表情で部屋を出て行った。
「敵?」
レオはエーメの言葉に驚いた。・・・・・・シーラットから敵が?セオドアの方から入ったのだろうか?
「―という事は、セオドアに何かあったのか?」
レオは居ても立っても居られず立ち上がり、部屋を出た。
「――!」
姫君の間はエーメをはじめ女官が右往左往して混乱していた。カレエなども部屋の外に出ている。
「エーメ!」
レオはエーメに近づき呼び止めた。
「レオーナ様、このような格好で外に・・・・・・」
とエーメは寝間着姿のままのレオを見て、自分のケープをレオに掛けた。
「それより何が起こったのだ?セオドアから入ったのか?敵は?」
「ええ、シーラットから大量の軍勢が、進行して城へ向かっております」
「セオドアは?セオドアはどうなっている?ウェンデルの入口を守っているのだぞ。セオドアにはウェンデルの兵士もいるはず、負けたのか?!それに、シーラットの守りは?許可なく通れる道じゃないはず」
「それが・・・・・・どうやら敵の軍勢に、セオドアやウェンデルの兵も混じっているようなのです・・・・・・。後、シーラットの防御力は、誰かに解除されたとしか思えません」
「何だって?!どうして?」
「わかりません。とにかく城の門はこういう時の為に頑丈にできております。城の中の入る事が無い限り守りは完璧です。だから門を破られる事は無いと思います。ご安心くださいませ」
「わかった」
「とにかく、お着替え下さい。部屋に戻りましょう」
「―うん」
レオはエーメに促され、部屋に戻ろうとすると、ドカンとまた爆発の音がした。
「何?今の?大砲か?」
レオは音のする方を振り向いたが、エーメに駄目ですと止められた。「とにかく部屋に!危険でございますから」彼女は必死に訴えた。
「・・・・・・わかった。この格好では何もできないしな」
レオは急ごうと部屋に戻った。
「これにお着替えくださいまし」
部屋に戻ったレオにエーメが甲冑を差し出した。
「いつ戦場になるかも知れません。姫君全員これを装着いたします」
「―わかった」
レオは甲冑の下に着る服を手に取った。
「お手伝いいたします」
エーメはレオに次々と着替えさせていく。
「ありがとう、甲冑の着方ならわかる。セオドアにいる時には、ほぼ毎日着ていたのだから」
レオはテキパキと甲冑を身に付けて行く。
「本当に身に着けるのが手慣れていらっしゃいますね」
「ああ、セオドアに居る時にセンドリーという戦士に鍛えてもらっていたからな。・・・・・・これで・・・・・・終わりだな」
レオは左手につける細い楯を肘にあてた。
「はい、お似合いです」
レオの甲冑は玉虫色のフェマリーンの金属でできており、胸元には太陽をシンボルとした飾りが彫刻されていた。
「これもフェマリーンか?意外に軽いな。丈夫そうだが、何でこんなに軽いのだ?」
「フェマリーンは軽くて丈夫なのが利点です。しかし、採掘量は少なく、故に貴重品でもあります」
「そうか、では大切に使わせてもらおう。剣は?剣はどこに?」
「ここに」
エーメが剣を差し出した。これも太陽のモチーフの剣だ。
「ありがとう」
レオは剣を受け取ると、腰のベルトに剣を差し込んだ。
「まずは部屋の外へ行きましょう」
「うむ、そうだな」
姫君の間に出るとレオと同じような装いで、姫君達が各々の武器を携え立っていた。その周りを女官がウロウロと動き回っていた。姫君はそれぞれ不安な顔をして佇んでいる。その中でクレアだけが冷静に姫君に指示をしている。
「クレア様」
レオが彼女の側に行き声をかけた。
「レオーナ姫。甲冑がお似合いですね」
そう言う彼女の方こそ甲冑が板についているようだ。
「ありがとうございます。今どういう状況なのですか?セオドアは何をしているのですか?」
「ああ、カルームの兵が大量に押し寄せている状態です。中にはセオドアの兵も入っているようです」
「―どうして?もしかしてセオドアも兵を挙げたんですか?」
「わかりません。ただ、ウェンデルへの道を守っていたのはセオドアです。カルームに攻められたのかもしれません」
「そんな・・・・・・セオドアに何があったんだろう」
レオは困惑した。
「とにかく、戦の準備をしなくては!私はソードの元へ行きます。戦の最前列に」
とクレアはそう言って自分の剣に手をかけた。
「旦那様・・・・・・イノス様はどうされています?」
「ソードと同じところに配属されているはずです」
「では、私もそこへ同行させて下さい」
「女では戦は不利ですよ。剣の腕は立ちますか?」
クレアは自分も女なのに、自身が男であるかのようにレオに問うた。
「―・・・・・・剣の腕は自信あります。セオドアにて鍛えられました」
レオは実戦が初めてなので不安だったのだが、つい虚勢を張ってしまった。実戦経験が無いなどと言ったら、クレアは連れて行ってはくれないと思った。
「じゃ共に行きましょう!急ぎますよ!他に腕に覚えある者は私について来なさい!」
クレアの呼びかけに、数人が答え、彼女の後に続いて行く。レオはその最後尾について行った。




