第三十八話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
「レオーナ様、エオリー様役とても素敵でした!今日はいい夢が見られそうです♪」
エーメは興奮気味にレオの寝支度をし始めた。
「そう?あんまり芝居は得意じゃないんだけど・・・・・・」
とレオは返事をしたが、気はそぞろだった。実はある事を今夜は実行しようとしているのだ。どうかばれませんように、レオは目をギュッと瞑った。レオは毎晩寝る前に飲み物を飲まされている。無味無臭で一見ただの水に見えるが、レオはこれが眠り薬なんじゃないかと、疑い始めている。この城に来てから一度も夜中に目を覚ました事が無い、朝までぐっすり寝てしまうのだ。だから、今夜は飲むふりをして寝てみようと思ったのだ。第一自分の寝ている間に何をされているのか、どうも気になる。イノスは自分に一体何をしているのだろう、・・・・・・何を?
「―・・・・・・」
レオは変な想像をして一人で赤くなった。そんなわけない、じゃ起きている時に・・・・・・いや、そもそもイノスにその気はない。キス一つであんなに面倒くさそうだったのだから・・・・・・。レオは首を横にふり心を落ち着かせた。
「ふ―」
レオはお腹がへこむほど息を吐いた。
「どうかされました?」
気が付くとエーメが心配そうに見上げていた。
「いや、今日は疲れたから」
レオは内心焦りながら冷静を装って答えた。
「はい、レオーナ様」
エーメから例の水を渡された。
「ありがとう」
レオは硝子の杯を受け取った。・・・・・・どうか失敗しませんように。レオは飲むふりをして寝間着の襟の中へと水を胸へ流し入れた。おう、冷たい。水が胸を伝って下着を濡らした。気持ちが悪い、けれど我慢、我慢。
「ではレオーナ様、おやすみなさいませ」
「おやすみ」
どうやらばれなかったようだ。レオはエーメが部屋から出るのを確認してホッと一息ついた。
――下着替えたいな・・・・・・しかしそれにはエーメを呼ばなくてはならない。我慢して横になろう。レオは布団の中へ潜り込んだ。そして目を閉じてみる。
「・・・・・・」
寝れないな。しばらくしてレオは目を開けた。いつもならこの辺で記憶が飛ぶのだが・・・・・・起きられている、・・・・・・やはり眠り薬だったのか。レオは知らずに眠らされている事に驚いた。それから一時間ほど経ったくらいにカタッと物音がした。――もしかして、旦那様?レオは薄目を開けた。イノスが部屋に入って来た。
やっぱり!どうしよう。寝たふりがばれませんように・・・・・・。
「―・・・・・・」
イノスは黙ってじっとこちらを見ている様だ。
「ラキソ水を飲んでないな」
イノスがそう言い放った。
―え?ラキソ水ってあの水の事か?なんでばれているんだ?
「起きろ!寝たふりなんてしてもわかる!」
「―・・・・・・」
レオは頑張ってじっとしてみた。
「―お・き・ろ!」
レオは仕方なしに目を開け起き上がった。イノスは怒っている様だ。
「どうしてわかるのです?」
レオの質問には答えず、イノスは叫んだ。「エーメ!ラキソ水を!」
「水は飲みたくありません!どうしてこんな風に眠らなくちゃならないのです?私に何をしているのです?教えて下さい!」
「知らなくていい。お前の為だ」
イノスは苦しそうに答えた。
「どうしてです?何があるのですか?」
「エーメ!」
イノスは少し苛立った様子で彼女を呼んだ。
「どうされました?まあ!レオーナ様!お水を飲んでいらっしゃらなかったの?」
「水を」
「はい今用意いたします」
エーメは慌ててラキソ水を用意した。
「はい、イノス様。ラキソ水でございます」
イノスがエーメから杯を取った。
「飲め」
イノスがレオに水を差しだした。
「嫌です!理由がわからないのに飲むのは嫌です!夜中に何をしているのです?!どうして教えてくれないのですか?」
「どうし・・・!!」
レオはイノスに唇を奪われ、次の言葉を封じられた。
「――!」
嫌がるレオにイノスは、ラキソ水を口移しに流し込んだ。不本意にもレオはその液体を飲み込まざるを得なかった。
「ん―!!」
レオの目に涙が滲む。唇が離れた瞬間レオは、イノスに平手打ちをしようとしたが、彼にその手を止められる。
「お前は何もかも知りたがるが、時には知らない方が救われる事もある。知らない方がいい」
「そんな・・・・・・いやだ・・・・・・そんなの」
レオは急に眠気に襲われガクリと肩を落とした。イノスはレオを支え、布団へと運んだ。レオの頬に流れる涙を拭いてその寝顔を見る。
「―・・・・・・エーメ、下がって外へ、もう帰りなさい」
「はい」
・・・・・・今宵は宵の月。あれが出現する日だ。エーメが外に出るとレオの瞳がカッと開いた。目には力があった。それは強くなり白い光を発した。もう、本来の彼女ではない。
―知らない方がいい、そう知らない方が。イノスはレオが起き上がり言葉を発するのを待った。
―こうしていつものようにそれは始まった。それは少しの間で、ある程度の時間が過ぎると元の彼女として深い眠りにつく。イノスは少し身構えて相手をした。
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目が光るなんて変なの、と今年十八になる息子が言う。
「・・・・・・変かしら?」
私が物語を聞いた時には不思議に思わなかったけれど、この子にとっては、そう感じるのかも知れないわねと母親の私は嘆息した。
「うん、変だよ」
「この話を語るのは継ぐ者に伝える時だけ。そして一つ以上話を付け加えること。この条件は忘れないでね」
「ふうん、じゃ僕の好きにしていいんだね?」
「そうよ」
「じゃ、僕は戦争の話をしよう!戦ったりした方が面白いよ」
息子は何か物語について思い描く事ができたのか、嬉しそうだ。
「好きにしなさい。けれど約束は守ってね」
「わかったよ」
「じゃ次の者に引き継ぐまでこの話はあなたのものよ」
―こうして、私は物語を息子に引き継いだ。
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