第三十七話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
「あなたの様に美しい者に出会ったことが無い」
レオは男装の恰好をしながら、相手役の手を取った。
わぁっと女性達の歓声が上がる。今日はマドリー達と約束した、『マリアロッテの手紙』の寸劇を披露する日だ。レオ達の階の全ての部屋を板で繋げて、芝居が出来るよう解放しており、いつもと違う更に広い空間が広がっている。レオは間違えないか内心ひやひやしながら台詞を続ける。声もカレエに、しごかれて、皆のエオリー像に近づいているはずだ。その証拠に、姫達のレオを見つめる眼はうっとりとしている。
「来たれマリアロッテ!わが手を取るのだ!」
この台詞がクライマックス、劇の胆だ。
キャーと姫君の黄色い歓声が上がる。レオはその反応によしと、手ごたえを感じグッと手を握りしめた。
「さらば、イースデン。さらば我が友、我が街」
そうレオが台詞を言い終えると幕が下りた。瞬間わっと歓声と拍手が湧いた。レオは幕の裏でホッと安堵の息を吐いた。
「長かった」
レオはしみじみ噛み締めるように言い放った。本当にあの稽古はつらかった。カレエのあの厳しさ、つらかったな・・・・・・けれど、皆の喜びようを見てレオは頑張って良かったなと思った。ラディンディラ様にも観ていただきたかった。きっと今も観て下さったかも、とレオは彼女の事を想い目を閉じた。
芝居が終わった後、レオは姫君達に次々と称賛をうけ、たくさんの感謝とキスをもらった。
「もうレオーナ様以外に、エオリー様を演じられる人はいませんわ!」
と観覧した姫君の一人がそう叫んだ。
「ぜひ、次回作も演じていただきたいですわ!」
と今度は皆でそう口を揃えた。
「へっ?」
意外な言葉にレオは驚いた。
「そうですわ!マリアロッテは、まだまだ続くのだから、何度もこうして演じていただきたいわ!」
とエルミーナ様が、興奮気味にレオに訴えた。
「え?いや・・・・・・その・・・・・・もう、無理だな」
「駄目ですの?」
レオの否定的な言葉に、姫君全員でうるうると上目遣いに詰め寄る。
こういうのに弱いんだよな・・・・・・。はぁ・・・・・・。
「―わかりました。そんなに何回も回数は出来ませんが、何とかします」
「キャー!」
レオの言葉に姫君達は歓喜の声を上げた。
――塔に行く回数は確実に減るな。・・・・・・ま、いいか、レオは姫君の喜びようを見て、しょうがないか、これだけ喜んでくれたのだから・・・・・・と満足し、少しの喜びを感じた。




