第二十六話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
「さあ!レオーナ様!張り切ってカレエ様の所に行きましょう!」
エーメは朝食を食べ終わったレオに嬉しそうに声を掛けた。
「もうちょっとゆっくりしたいんだけど・・・・・・昨日も目を使い過ぎて疲れた」
とぐずるレオにエーメは、テキパキと男物の衣装を身に付けてゆく。
――この格好をしても、塔に行けないなんて・・・・・・。あの隠し扉にもう一度寄りたいのに、本もたくさん読みたいのに・・・・・・。語らいの間にも行きたいのに。
「――これが終わったら、塔に入り浸っても、文句言わないでくれるか?」
「はい!レッシー様に上手く言っておきます。まずは練習あるのみですね!」
「そうだな、よし」
そうだ早くこの厄介事を終わらせたらいいのだ。レオは腹をくくった。
―・・・・・・一時間後。
どうしてこんな事引き受けたんだろう――レオはカレエの部屋でげんなりしていた。彼女の部屋の天蓋は深紅の色をしており彼女に似合っていた。天蓋の隙間から外が見えるようになっており、ここから男装の姿を見られていたのだなとレオは察した。
「――休まない!発声練習ごときで、その様では駄目ですわよ!」
カレエの怒号が響く。
「厳しすぎる・・・・・・」
レオはこそっと愚痴った。
「早く終わらせたければ、私を唸らせるような努力をしなさい!」
「はい」
レオは力なく答えた。
「返事は元気よくキビキビと!」
「はい!」
レオはやけくそ気味に叫んだ。
「まだ声が出るじゃないの!」
「ヴェスヴァランド、言ってごらんなさい」
「フェ・・・・・・?」
「ヴェス」
「フェス」
「ヴァランド」
「ファラント?」
「ヴェスヴァランド!」
「フェスファランド!」
「違う!ヴァがファになってる!ヴの音が出ていないわ。セオドアの訛りから直さないと駄目ね・・・・・・」
「訛ってるんですか?私」
ここウェンデルで訛っているとは、誰からも言われなかった為、レオは驚きを隠せなかった。
「若干ね。これはすぐに解決するわ。それよりもお腹から声が出てないのよ、あなた。お腹を鍛えないと駄目だわ」
「あの中だったら十分声届きますよ、そんなに大声出さなくても・・・・・・」
「何?口答えしてくれているのかしら?正しい発声には声の出し方があるのよ。しっかり声を張った方が美しい声になるのよ。あなたの様に、ただ怒鳴ればいいってものじゃないのよ」
「―・・・・・・」
一言言ったら十倍になって返って来る・・・・・・あの刺繍の時の優しさはどこへいったのだろう。
「腹筋三百回!毎日しなさい!」
「三百回も?」
「そうよ。声はお腹から出すものよ。その為には腹筋を鍛えないと」
「うう」
レオは思わず不平な顔をした。
「文句があるの?早く終わらせたくはないの?」
「――」
レオは二の句が継げなかった。痛い所を突いてくる。
「鬼だな、鬼」
レオはボソッと聞こえない様に悪口を言った。
「何か言って?」
カレエが睨み付ける。
「―いえ、何も。腹筋ですね」
レオは慌てて腹筋をしようと寝転んだ。
「今やらなくて結構。朝か夜に自分の部屋でして下さる?」
「ああ、いやあの」とレオが不服を言うと、「私に腹筋三百回するのを見届けろと言うの?時間の無駄よ」とばっさりとカレエは撥ねつけた。
「発声練習続けるわよ。ヴァの発音からよ。さあ、大きな声で!」
―鬼だ、鬼!おのれ!負けてなるものか!とレオは奮起し、カレエの指導を受けた。




