第二十三話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
レオが急いで部屋に帰ったにもかかわらず、既に日が落ちてしまっていた。
「―もう一度暗くなる前に帰っていらっしゃらないと、塔に行かせること自体考え直す事もございます。よく考えて行動してくださいまし」
レッシーはそう苦言を言うと、レオに弁明の機会を与えず下がって行った。
「あう・・・・・・」
レオは去っていくレッシーに向けて伸ばしていた手を下ろした。
「仕方ありません。約束ですから」
エーメは同情したような目でレオを見上げた。
「仕方ないな、悪いのは私なのだから・・・・・・。けど、もっと早く時間を教えてくれてもいいのにのう」
「レッシー様の声が頭に響くと、文句を言ったのはレオーナ様では?」
「うっ!痛い所を突いてくるな、エーメ。そうだな、だからレッシーはホクロで呼び掛けてくれなかったんだな」
「知識の塔は私どものあずかり知らぬ所。レオーナ様に何かあったらとレッシー様も私も大変心配なのです。そのあたりの思いも、くみ取っていただきたいのです」
「わかった、今度から気を付ける。あなた達には余計な心配をかけたな。すまない」
レオは心から謝った。
「いえ、心に留めおいて下さればそれでよいのです。それよりもレオーナ様、マドリー様から聞きました。エオリー様を演じられるとか?」
「エーメ」
嬉しそうに近づくエーメをレオは右手で止めた。
「どうなのです?」
エーメはにじり寄る。彼女の瞳は爛々とし怖いくらいだ。
「まあ・・・・・・そうだけど」
レオは観念した様に答えた。
「あぁ、レオーナ様がエオリー様を!マドリー様もよくそこに気付かれました!素晴らしいです!わたくしも同席させてくださいませ」
とエーメは深々と頭を下げ、礼をした。
「え?いや・・・・・・。二人もギャラリーがいるの?」
「駄目ですか?」
エーメは悲しそうにレオを見上げる。もう少しで泣きそうだ。
「うー・・・・・・。その、うん、わかったから泣かないでくれ」
レオが折れた。どうしてこんなにも女の涙に弱いのだろう、セオドアでは有り得なかった事だ。ジーン達以外に姫君やエーメのような若い娘が、周りに居なかったせいかもしれない。
「やったー!嬉しいです!」
エーメは飛び上がって喜んだ。
「あの、あまり期待しない様に」
「あぁ、どのようなエオリー様になるのでしょう!楽しみです!」
エーメはレオの言葉を聞いていないのか妄想に夢中だ。
「あーそうだな・・・・・・」
レオは半分呆れながらエーメに返事した。
「明日が楽しみ♪です♪」
「え?明日?」
レオのあずかり知らないところで、話はどんどん進んでいる様だ。
「明後日もです」
驚くレオに追い打ちをかけるようにエーメは答えた。
「毎日レオーナ様の男装が見られるなんて、なんて素晴らしいのでしょう!」
あー楽しみ♪エーメは鼻歌を、レオの前で初めて披露した。本当に嬉しいのだろう。
「え?明日も私は塔の方へ行きたいんだけど・・・・・・」
「それでは明日に!食事の用意いたします!今日もレオーナ様の郷土の料理ですよ!」
とエーメは言い残し部屋を出て行く。
「え、そうなのか?じゃない!明日とか毎日とか無理だからな!稽古は週二回だぞ。ちょっと聞いているのか?エーメ!」
レオは今日も故郷の食事が出るのは嬉しいが、稽古が毎日とかあり得ない。週二の約束がいつの間に毎日になったんだ?あんな台詞言うのも恥ずかしいのに、毎日とは・・・・・・。レオはがっくりと膝を落とした。
「―これ以上塔に行けないなんて・・・・・・それに語らいの間にも行きたいのに」
エーメにはよく言って聞かせよう。レオは一人頷くと、食事の用意を待った。




