第二十二話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
次に知識の塔に行ける時がやって来た。レオは朝ご飯を食べると、すぐに塔へと駆けこんだ。
塔に入るとイノスはいなかった。探してみてもどこにもいない。セオドアの料理のお礼をしようかと思っていたので、当てが外れたレオは仕方ないかと調べ物を始めた。
「青の剣、シェルシード・・・・・・」
姉ジーンが使者に問いかけた、その言葉を思い出してレオは書物を漁った。しかし、どの本にもそのような記述は無く、何か手がかりも見つからなかった。
「―何か非常に重要な事柄なんだろうか・・・・・・」
「―青の剣、その言葉どこで知った?」
その言葉にぎょっと振り向くと、ディ・フォンが恐ろしい顔でレオを睨め付けていた。
「―あ・・・・・・あの私の姉がウェンデルの使者に、青の剣の事を問いかけたのです。その時初めてその言葉を知りました」
「ほう・・・・・・姉がのう・・・・・・して言葉の意味は?」
「知りません。ですから調べようかと」
「―ここにはその言葉の持つ意味など見つけられまい。レオーナや、その言葉二度と口にするでない。青の剣の事は知らない方が良い」
「―どうしてですか?」
「レオーナ!青の剣の事を人に聞くことを許さぬ!その事を知る事も許さぬ!それに従わなければここに来ることも禁止じゃ!」
ディ・フォンはそう叫ぶと、部屋が一瞬暗くなった様に感じた。
「ここに来る事・・・・・・」
そんな事になったら、何のためにここに嫁いだかわからない。
「いやであろう?本の無い世界など。・・・・・・そなたは賢い。どう行動すべきか考えなさい。これは王命である。従いなさい」
「―はい・・・・・・」
レオはディ・フォンがこれほどの声音で話すとは知らなかった。ただ、恐ろしかった。恐ろしい一面を持つのだと初めて知った。・・・・・・それほど大事な事なのだ青の剣は。知りたい半面、それを知る事で何か恐ろしい事に巻き込まれそうで怖かった。そして何よりこの知識の塔に来れなくなるのが、レオの一番の痛手だった。レオはディ・フォンの命令を受け入れた。
「わかればよろしい」
ディ・フォンはそう頷くと去っていった。
レオはディ・フォンがいなくなるのを待って、次の調べ物に取り掛かった。
「―さて、今度は開祖リィンドゥンの事でも調べますか・・・・・・」
レオは頭を切り替えてこの国の歴史を紐解くことにした。
「確か・・・・・・ウェンデル古文書を読むといいって言っていたか」
レオはイノスの言葉を思い出しながら、ウェンデル古文書を探した。
―しかし、肝心のウェンデル古文書が見つからない。一冊一冊しらみつぶしに本を開いては閉じて元の場所に戻すという作業を繰り返した後、とある本を引っ張るとカチリと音がした。
「ん?この本抜けない・・・・・・」
レオは力づくで、その本を引き出そうとしたその時、本棚が右横へと動いた。その奥には何やら通路が続いている様だ・・・・・・。
「―この本棚は扉になっているのか?」
それも隠し扉だ。
「え?ええ?」
レオの声が響く。かなり奥行きがありそうだ。
「―・・・・・・」
レオはそおっと扉を抜けてくぐった。通路は少し暗いが、所々に灯火のように穴が開いており、外の光が差し込むようになっている。
「何の道だ・・・・・・」
何か本棚のような物がある空間や、本や巻物が雑然と置かれている空間も見える。知識の塔では、入りきらない本達の行く末なのだろうか。秘密の本とかあるのだろうか?だとしたら、この空間はレオにとって楽園だ。
――本か・・・・・・。少し覗いてみたい気持ちになったが、道の先が気になる。レオは本を読みたい欲求を振り払い、先に足を進めた。この道は下へ下へと坂道となって続いている。
「・・・・・・いつまでこの道続くんだ」
とレオが疲れ始めた頃、行く先に大きな扉が立ちはだかった。この扉の先に何があるのだろう?レオはその扉を見て決意したようにうんと頷き、扉を押し始めた。
「―開かない!」
扉には取っ手のような物もない。押すしかなさそうだ。
「――んー!」
レオは全身の力で押し開けようとしても、扉はびくともしない。
彼女はもう一度扉を見つめた。普通の木の扉だ。何の変哲もない、装飾も一切施されてない。一枚板の扉だ。一体何の扉なのだろう・・・・・・。
「何も無い・・・・・・」
この先はもしかしたら・・・・・・青の剣があるのだろうか。先程のディ・フォンの態度から、青の剣は大事に隠されている。それは、ここではないのだろうか?そうレオは連想した。だが、そんなに簡単に場所がわかるはずもない、レオは首を振った。
――しかし、ここを突き止めた事は、ばれないようにしなければ、誰かに知れたら――ディ・フォンに知れたら・・・・・・その怒りの様子が浮かんできたレオはこの扉から急いで離れた。
そして、全速力で元の入口に戻った。息が乱れる中、本棚を元通りにし、何事も無かった様に振舞った。――誰もそこにはいなかったが。
「―ふー・・・・・・」
レオは少し緊張を解くため深呼吸をした。その横顔に夕陽の日の光が射した。
「・・・・・・あれ、もうこんなに日が傾いているぞ。帰らなくては」
レオは慌てて塔の外へ向かった。




