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銀の針姫と青の剣  作者: 瑞木晶
第二章 青の都ウェンデル
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第二十話

完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。

「ふう――」

自分の部屋に戻ったレオは深いため息をついた。

「どうなされました?レオーナ様」

とエーメが聞いてきた。

「いや、色々とあってね」

と笑って誤魔化し、一人にしてもらうよう頼んだ。

「では、夕食の用意はどういたしましょう?」

「え?もうそんな時間なのか?」

レオはそんなに長居をしたつもりは無かったが、身重のマドリーは大丈夫だったのだろうか。疲れてなければいいのだが。

「ええ、お食事はもう少し後にいたしますか?」

「いや、別に構わない。今で」

「かしこまりました」

エーメはそう言うと仕度の為、部屋から下がって行った。

「時間が経つのが早すぎるな」

この調子だとマドリーとの練習は、かなり時間を食うという事だな。ま、仕方ない。その代わりに自分の楽しみが増えたというもの。レオはほくそ笑んだ。

「―レッシーはいる?服を着替えさせて」

レオは彼女を呼んだ。

「はい、かしこまりました」

天蓋の外から返事が聞こえてきた。




 「お食事です」

とエーメがレオの部屋に入って来た。

「レオーナ様?」

エーメは突っ伏して寝ているレオに呼び掛けた。

「生きているから大丈夫だ。ちょっと疲れた。そっとしておいてくれ・・・・・・」

と答えるレオの鼻に懐かしい香りが届いた。

「―!ティーチェ?!」

レオは素早く顔を上げた。

エーメの方を見ると夕食は鶏肉のティーチェソース煮込みだ。

「ティーチェ!おお!懐かしい!」

レオは心の底から喜んだ。再びこの味にありつけるとはなんたる幸せ。

「故郷の物を食べさせてあげて欲しいと旦那様からのご指示です」

とエーメが愛されていますねと、にこやかに教えてくれた。

「えっ?そうなのか?そうか」

本人は素っ気ないけど意外と気を使ってくれているのか、と少し自分の夫を見直した。

「いただきます!」

レオは赤茶のティーチェソースを前に、思う存分その香りを楽しんだ。

「うーん、最高だな。ティーチェ甘辛くて最高♪」

セオドアの物とほとんど味の差がない。レオはそんなところも大いに喜んだ。

「又食べたい・・・・・・駄目だろうか?」

レオはエーメの顔を窺いながら尋ねた。

「多分大丈夫ですよ。いつでもという訳にはいきませんが、なるべく故郷の料理をお出しするようにいたします」

「本当か?!ありがとう」

レオは万歳して喜んだ。

「本当に故郷の味に飢えていたのだよ。ウェンデルの味付けは薄いからな。・・・・・・物足りなくて。旦那様に感謝♪感謝だ」

レオは口一杯にティーチェソースを頬張り味わった。彼女はティーチェ料理を食べながら、ふと故郷セオドアの事を思った。

―セオドアの人々はどうしているのだろう・・・・・・。父王やジーン姉さま達はどうしているだろう?彼女達の恨み節が聞こえてくるようだ。センドリーやケンフォレン、マーモット元気でいるかな。クインシーの料理食べたいな。故郷にいる様々な人や風景を思い出して、レオは少しセオドアに帰りたくなった。姉達が居なければレオにとって幸せな故郷だった。

「どうされましたか?お口に合いませんか?」

エーメが心配そうにレオの顔を覗いた。

「いや・・・・・・少し故郷を思い出してな。美味しいぞ、このティーチェ料理。懐かしい。うむ、ちょっと里心がついたかも」

「そうでしたか・・・・・・。でもレオーナ様はもうウェンデルの姫、故郷には戻れません。申し訳ありません」

エーメが悲しそうな顔でレオに頭を下げた。

「あぁ、エーメのせいじゃないし・・・・・・。謝らないでくれ、セオドアには戻れないって分かっているから」

「でも・・・・・・レオーナ様、悲しそうなのですもの。」

「そうか?少し寂しくなっただけだ。エーメが悲しむから、もうこんな顔はしない。もう平気大丈夫」

レオはエーメに笑って見せた。

「レオーナ様・・・・・・エーメはなるべくセオドアの物を、レオーナ様に届ける事を約束します!そして、レオーナ様がウェンデルにいて楽しくなるように頑張ります!」

「ありがとうエーメ。エーメがいてくれたら十分楽しいよ」

「レオーナ様・・・・・・エーメは一生レオーナ様について行きますわ!どこへ行っても世界の果てまでも!」

エーメは目に涙を一杯溜めて宣言した。

「う、うん・・・・・・このウェンデルから出る事は無いだろうけど」

レオはエーメの熱意に苦笑しながら答えた。本当に真っすぐないい子だな。レオはエーメの人の好さを嬉しく思った。


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