第十六話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
お茶の作法以外の様々な作法を覚えた後、レオはようやく知識の塔へ行ける事となった。いそいそと身支度をして出かけようとしたレオに、レッシーは少し待つように伝えた。
「―これは何?」
レッシーはレオの右手首に小さな黒い物を押し付けた。
「うう?」
レオは右手首のポツンと付いた、丸い玉のような黒い物体を見つめた。何だかホクロの親玉みたいだ。
「私の言う通り言葉を続けて下さいまし」
とそうレオに伝えると、レッシーは自分の右手首のホクロを、レオの黒い物体に付け「我の目となれ耳となれ」と唱えた。
「我の目となれ耳となれ」
レオは頷きながら、レッシーの言う通り言葉を連ねた。
次の瞬間――キンッと耳が鳴った。
右手首の物体は何処から見ても、ホクロにしか見えなくなった。さっきはもう少し膨らみがあった気がする。肌にホクロとして定着しているようだ、とレオはその見事さに感心して、しげしげと見た。ホクロは微かに光った。
「何?このホクロ光ったな」
「このホクロのような物は通信機のような役割を果たします。今光ったのはレオーナ様のホクロと私のホクロが繋がった証です」
「え?通信機?何だ、それは?」
レオは初めて聞く言葉に興味津々だ。
「このホクロに繋がりたい人の名前を呼び、声をかける事で相手に言葉が届きます。必要とあれば、相手の見た物を見れる機能もございます」
レッシーは淡々とレオに説明をしていく「凄いな!こんな物があるのか」ウェンデルの技術の高度さにレオは感動さえ覚えた。
「じゃ、誰とでもこれがあれば通じるのか?」
「基本的にそうですね、男と女で繋がるのはお薦めできません。では、お帰りの時間になれば、姫様に御声掛けいたします」
「ああ、それでこのホクロが付いた訳だな?」
レオは合点がいった。
「はい、以前のような事にならない為にもお願い致します」
「分かった。気を付ける」
これで知識の塔に居る時間は限られたな。彼女達に心配かけるわけにもいかないし。
―ま、仕方ないか・・・・・・。レオは、まあ、よしと頷いて「じゃ、行ってきます」と部屋を出て行った。
―今日は早く知識の塔に向かおう。急がないと。レオは二階の広場へと向かった。
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はぜる暖炉の焚火の前に私は娘に一族に伝わる話を話していた。
「――そういえば、私達一族は皆、右手首にホクロがあるわね。おじい様とひいおばあ様もそうよね?」
と私は急に思い出した様に娘にそう訊ねた。
「そうだね、偶然かな?いつの時代の人かわからないけど、物語に取り入れたのかもしれないね」
娘はそう考えながら答えた。
「そうねえ・・・・・・」
その言うと私達親子は、思案顔でお互いを見つめた。
「どの時代の人がホクロの話を入れたのかしら?」
「興味深いわね」
ふふ、と私達は微笑み合った。
「それから、不思議なおじいさんに出会った女の子はどうなったの?」
「あれから、幸せに暮らしたわ。だから、私達が生まれたの。そのおじいさんには二度と会えなかったのだけど・・・・・・」
「この話、本当かなぁ」
疑い深く彼女は聞いて来た。
「本当よ、その証拠に」
私は宝箱から三つの玉を取り出した。そして、娘の手に乗せた。
「これは私のおばあ様の宝物。この話を引き継ぐ者に代々伝わる物なの。大切になさい」
「へえー綺麗な玉、本当にあるんだ」
娘が光る玉を手のひらに転がす。
「この話を語るのは継ぐ者に伝える時だけ。そして一つ以上話を付け加えること」
「うん、任せて!それより先の話を聞かせて、主人公はどうなったの?」
「そうね、じゃ続きを話しましょうか。長い話よ、ついて来られるかしら?」
「大丈夫よ。こんな話なら時間を忘れるわ」
娘は楽しそうに微笑んだ。
「じゃ、続きよ」
私は娘に物語の続きを語り始めた。
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