第十三話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
「ふふふ」
寝ているイノスから離れて、声の届かない場所を見つけ、レオはこの知識の塔の中の本達を眺めて一人ほくそ笑んだ。この本達は私のものだ。どんな本を読んでも読み切れない本の量だ。こんな幸せってあるか?いや、無い。本の革の匂いに囲まれてレオは嬉しさが沸き上がるのを止められなかった。
「さてさて」
レオは声を潜めて、音を立てないよう気を付けながら、早速歴史もののオウリエン書記を読み始めた。
リィンドゥンは私に語る。前世の人々(ヴェラムド)記憶を持つ者達(ファラキスシーク)を警戒せよ。
彼等は全てを知っているのだ。
「・・・・・・ふむ、リィンドゥン誰だろ?」
レオは辞書を引いた。彼女は歴史の人物を調べるのが好きだ。どの人物も非常に面白い生い立ちをしていたりする。歴史の裏を紐解いていくのが楽しいのだ。
「リ、リィンドゥン・・・・・・。あ、あった」
リィンドゥン―ウェンデルを建国した王と言われている。かの地の誰よりも早くこの地に降り立ち人々に知識を与え、そして城を建てた後、いずこかへ去っていったとされている。
リィンドゥンは知識だけを人々に与え去ったとも言われ、実際に建立したのはオウリエンとも言われている。
「・・・・・・へえ・・・・・・建国の王なのか。どんな人だったんだろう」
「伝説の人で実際にはいなかったとも、オウリエンの作った架空の人だとも言われている」
「え?」
レオは声のする方を向いた。イノスだ。
「起こしてしまいましたか?すみません。静かにしているつもりでしたが」
レオが焦り謝ると「いや、自然に目が覚めただけだ」とイノスは短く答えた。
「リィンドゥンは誰より早く地に降り立った。海より遥か遠く黎明色の金と銀の息吹のする風の中で」
イノスはいきなり歌うようにその一節を呟いた。
「何ですか?その歌は」
「歌ではないが、伝承の一つだ。ウェンデルの男ならだれでも知っている一節だ」
「そうなんですか」
「リィンドゥンを知りたければ、ウェンデル古文書を読むといい。ああそうか、第一お前では読めないか。ま、その書でも本当の事は書かれてない可能性もあるが」
イノスはリィンドゥンの事を教えてくれているみたいだ。
「そうですか。ありがとうございます」
レオはイノスは優しい所もあるのだなと見直した。
「それじゃ」
イノスはそう言うと立ち去ろうとした。
「え?どちらへ?」
「静かに眠れる所」
イノスはあくびをしながら塔の外へと歩いて行った。・・・・・・よっぽど眠たいんだな。夜に何をしているんだろう・・・・・・。レオはイノスの後ろ姿を見ながらそう思った。
「さて」
レオは再びリィンドゥンを調べ始めた。リィンドゥンは本によって様々な風貌で語られている。大男で一間半の背で人々を見下ろしていたとか、女性のように美しい顔立ちをしていたとか。奇跡の技を見せて人々を驚かせていたとか、神様として扱っている本もあった。
「結局のところ実在してないのか?」
レオは読み漁った本達を眺めて溜息をついた。
「―・・・・・・!」
気が付けば辺りが薄暗い。
「―しまった!早く帰らないと!」
エーメに怒られる!レオは慌てて席を立った。
門の外に出ると、レッシーとエーメが、二人で心配そうにレオを待っていた。
「日が暮れる前に帰ってくるよう言ったはずですが」
レッシーは厳しい表情でレオを咎めた。
「申し訳ない。つい本を読みふけってしまって・・・・・・」
「以後気を付けて下さいまし」
とレッシーは咳払いするとそう言った。
「はい、すみません」
レオは深くお辞儀をして謝った。




