第十一話
完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。
扉の向こうはいきなり大きな螺旋階段が中央に構えていた。
「二階だな」
レオはその階段を昇り始めた。階段の壁にはレリーフが幾つか彫刻されており、どうやらモチーフは、さっきエーメが話してくれた創世記の話のようだった。
二階に上がると広間が円形状に広がっていた。整えられた芝生の青が美しく広間を覆っている。広場の中心部には噴水があり、その傍らに二、三人くらい人がいるようだった。近づいてみると上半身裸の男と少年がひそひそと話をしている。レオはその男たちに警戒しながら黙って通り過ぎようと、速足で歩いた。
「よう、そこの女」
上半身裸の男が声をかけてきた。
「・・・・・!」
レオはその声にぎょっとなったが、顔だけは冷静を保って、無理して歩き続けた。
「おい、そこのお前。銀髪の女!止まれ!」
今度は少年達が男の指示に従い、レオの前に手を広げて立ちふさがった。
「―何の用です?第一私は女ではありませんよ」
とレオは声をわざと低くして答えた。
「何を言っている。お前はどう見ても女だろう。姿でよくわかるぞ」
「―」
レオは立ち止まり男の方をまっすぐ見据えた。
髪の色は黒、後ろに撫でつけてあり数本の前髪がほつれて妙に色気がある。瞳は夏の濃い青空のような青だ。口元はこちらを見てにやついている。
王族?それにしても何て格好だ。上半身は裸でよく見ると腰回りしか衣を着けてない。ほとんど裸じゃないか。
「―イノスに嫁いできた姫か?そうだろう?初めて見る顔だ」
「―貴方はどなたです?」
レオはより警戒を強くした。
「俺はソード・メレル・ランカー。お前の旦那イノスの従兄弟にあたる」
「失礼しました。私はレオーナ・ランド・イシリスと申します。セオドアから参りました。よろしくお願い致します」
とレオは深々と頭を下げた。
「・・・・・・では先を急ぎますので」
レオは早くこの男から離れたかった。
「まあそう固くなるな。イノスの嫁の顔をじっくり見せてくれ」
そうソードは言うとレオに近づいてきた。近くで見ると肌が艶めかしい。香油を体中に塗っているようだ。
「ほとんど裸じゃありませんか。近付いて来られると困ります」レオがそう拒否反応を示すと「―これはウェンデルの王族が着る正装だぞ?ウェンデルでは肉体美が男の美しさと言われているんだ」
なるほど、凄い美意識だな。確かに自慢できるほど、彼の身体は筋骨隆々で美しい、とレオは素直に思った。故国セオドアでも、兵士達が裸自慢をして争っていたな、とレオは振り返った。姫様!ワシらの上腕二頭筋を見て下され!姫様!姫様!と我も我もと兵士達が自慢しに来たっけ、とレオは故郷の兵士達の暑苦しさを思い出して苦笑した。
少年達がソードを奪い合うような感じで、彼の両脇にしがみついてきた。少年達はソードの身体にべたべたと触りまわしたり、口づけをせがんだりした。ソードもそれにこたえ少年達の頬などにキスをした。
「―・・・・・・貴方は男色家ですか?」
レオは彼らの行動に驚愕しながら訊ねた。男色家とは初めて会う。彼女は心の中で興奮した。
「―そうだな。しかし、元々ではない」
ソードはそう答えた。
「どういうことです?」
不思議な事を言う方だ。レオはソードの青い瞳に真剣さを感じ、彼の返事を待った。
「俺には妻がいる。妻以外の女性に目を向けない代わりに、少年達を愛することを妻に許してもらっている」
「―そんな事許す奥様っているんですか?」
レオは驚きを隠せない。
「いる。俺の妻はそんな女だ。お前がここに通うなら、いずれ会う事もあろう。俺の妻は美しいぞ、心も姿も。ぜひ仲良くしてやってくれ。クレア・アレア・バードという。元はダーラの姫だ」
ソードはそう言うと、もう話すことは無いと、レオから離れ噴水の方へと戻って行った。
あれが男色家かとレオは興味深そうに彼らを見つめた。ソードと少年達のイチャイチャを見てセオドアで、あの本を読んでいた時の事を思い出す。
「・・・・・・」
こんな所で時間を食うわけにもいかない。さて行くか、彼女は目指す塔へ歩き始めた。




