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銀の針姫と青の剣  作者: 瑞木晶
第二章 青の都ウェンデル
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第九話

完結しました。第八十九話までの物語です。主人公レオーナの物語をお楽しみください。

 夕食後、レオはエーメお薦めの『マリアロッテの手紙』という恋愛冒険活劇を読みながらあくびをした。レオは「やはり歴史ものがいいな」と何か他に好みの本が無いか探し始めた。

「失礼」

レオは不意に横から男の声を聞いて固まった。

も、もしかして・・・・・・旦那様か?また変な男とか。レオはおそるおそる声のあった方に顔を向けた。その男は金の髪に、瞳は青く冴え冴えとしていた。

「―どこかで見たような・・・・・・」

レオはそう呟くと、目の前の男をまじまじと見つめた。どこかシェルシードの瞳にも似ている気がする。彼の瞳は色で言えば藍の色に近い。夜の帳が下りる時の色。哀感を帯びて切ない色だ。悲しくて胸が締め付けられる。

「・・・・・・」

レオがあまりにも見つめてくるので、彼は少し困ったように咳払いした。

「あ・・・・・・はい、すみません」

初対面の人をそんなに見つめたら、駄目だとレオは反省した。

「俺はイノス・シリル・エリアード。君の夫となる者だ。よろしく」

「レオーナ・ランド・イシリスです。よろしくお願い致します」

この方が私の旦那様か、レオは深々と頭を下げた。

「何かこの城での生活で、したい事とかあるか?」

「城の中を見て回りたいです。後、本もたくさん読みたいです」

「ふむ・・・・・・それについては、善処しよう」

「本当ですか?ありがとうございます」

とレオが感謝を述べるとイノスは、いやと短く返事をした。

「単刀直入に聞こう。君はファルンカに会ったか?」

「はい会いました」

「彼をどう思う?」

「――気味悪かったというか、気色悪いというか」

とレオは思い出したくもないファルンカの印象をぞっとしながら答えた。

「彼の子を産む気はあるか?」

「え?とんでもないです。無理です」

「分かった。今からする事に怒らないで欲しい」

「は?」

「―」

彼はレオの返事を待たず何かぶつぶつと唱え始めた。ぐいと何か薬のような物を口に含むと、レオの後頭部を支えるようにして彼女に口づけをした。

「―!!」

レオが驚くのと同時に、何か喉元に熱いものが流れるのを感じた。

イノスはレオの唇から離れると、又呪文のようなものを呟き続けた。

「な、何を?」

レオは全身に火照りを感じながら、文句を言おうとした。

すると、レオは右手に熱さを感じた、と思ったら手の甲が光った。光はしばらく輝きを保ったが、やがて静かに消えていった。

「何だ?これ」

レオは手の甲に赤色の紋様ができているのを見つけた。

「―これで、ファルンカも君に手出し出来ない。お守りのような物だ」

「はあ」

「それじゃ、俺はこれで失礼するよ」

イノスはそう言うと立ち上がり、部屋を出て行こうとした。

「え?」

レオは何が起こったか、もう少し説明して欲しかったが、レオが声をかけようとした時には彼は部屋を去っていた。

「何が何だか」

レオは自分の手の甲をしげしげと眺めた。ハートの形に似たような紋様の中に何か字が浮かび上がっている。何なのだろう?レオは彼の言葉を思い返した。

「―ファルンカは手が出せないって、これがあれば、近づいて来ないって事か」

それにしても、いきなりキスってどうなんだ。何だ?あれ。レオは初めての体験に、一人赤くなった顔を包むように両手で覆った。

・・・・・・こんな風にいきなりなのだろうか・・・・・・この先も。あれこれ想像したレオはより一層顔を赤らめた。

「―」

もう考えないことにしよう。寝よう、寝よ。・・・・・・けどこの服装で寝るのか?どうすれば?

「エーメ!エーメはいるか?」

部屋の外で控えているはずの彼女を呼んだ。

「何か御用ですか?レオーナ様」

数秒もかからずエーメは現れた。

「ああ、エーメ」

レオは彼女の姿にほっと安堵した。

「もう寝たいのだけど、この格好で寝るのだろうか?何か他に着る物は?」

「ございます。レオーナ様」

エーメは白い服をレオに広げて見せた。頭から被る服のようだ。

「ああ、これが寝間着?」

「左様にございます。着替えられますか?」

「着替えたい、頼む」

「かしこまりました」

エーメはレオに付けているアークをぐいと下に向けて押してみせた。

「えっ?」

次の瞬間服は全て床に落ち、レオは一糸まとわぬ姿となった。

「えっ!ちょっと・・・・・・」

戸惑うレオにエーメは素早く寝間着を着せた。

「本当に一気に裸になるのか・・・・・・」

レオはあまりにも簡単に脱がされる事に不安に思った。いきなりこんな風にやられたら抵抗も出来ないな・・・・・・そう思うと心もとなかった。

「あら、レオーナ様。旦那様の愛をお受けになられたのですね」

エーメはレオの手の甲の紋様を見つけると、嬉しそうに手に取った。

「これは何なのだ?何か意味でも?」

「これは愛の証です。レオーナ様が旦那様に愛されている証明ですよ」

「―愛されているのか?」

そんな風には思われなかったが・・・・・・なんかその割に素っ気なかったと思うけど、とレオは思った。

「それはもちろんそうですとも。好きでもない人にこの紋様は与えられません」

ふふとエーメは嬉しそうに微笑んだ。

「そう?」

「そうですとも。さ、これで寝具も整いました。安心してお休み下さいませ」

「ああ、うん。ありがとうエーメ」

レオは整えられた布団の中へと体を滑り込ませた。

「おやすみなさいませ」

そう言うとエーメは部屋の明かりを消して出て行った。


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