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主人公と僕と敵とヒロイン

ここからようやく書きたい内容に突入できると思います。


僕の家は村のはずれにある。小さい村だが村の中心までは15分ほどかかる。

だから、僕が一人で歩いている姿は多くの人の目に留まるだろう。

 

 現に、農作業をしている村人たちにちらちらと視線を向けられている。

そのまなざしに、映っているのは嫌悪であったり、憐みであったりする。

プラスの感情はゼロに等しい。


 どうして、こんな視線を向けられているのか。

それは、僕が捨て子であること、捨てられていた僕を拾ったのが老夫婦であるおじいちゃんとおばあちゃんであることが原因だ。


 この村は領主による締め付けもあって、物資が万年枯渇している。

そのため、僕が村のはずれに捨ててあるのを見たとき、村人の意見はそのまま森に遺棄することに一致した。


 しかし、そのまま見捨てようとしたところで、年老いてただでさえ労力として十分な価値を示せていない二人が僕を引き取ったのだ。二人は若いころの貯えがあって村人も追い出せずにいたため厄介者が厄介者を引き取った形になってしまった。


 故に僕たち一家は村のほぼ全員から嫌われているということだ。


 あれ、なんでここまで詳しく知っているんだろう。

二人から聞いたのは二人が昔、村の人とひと悶着あったという話だけだったはず。

二人に、僕にまで迷惑をかけてごめん。と、謝まられたのに…


 やはり、今日の僕はおかしい。


 「おい、おいってっば」

誰かの声に我に返る。周りを取り囲んでいるのは6人の子供たち。その後ろにも何人か子供がいた。


 最悪の状況だ。


 僕ら一家に不満を溜めた大人たちは多少の理性があったのか外で大々的に野次を浴びせてくるようなことはなかった。その分を家で発露していたのか、子供たちは恨みつらみを刷り込まれて、僕らに対して攻撃的になっている。そして、大人たちもこれ幸いと止めに入りはしない。むしろ、遠くから見世物を見るように見学していることが多い。


 だから、こんな状況に置かれる前に逃げ帰らなければいけなかったのだ。


 「聞いてんのかよ!」

ドスッ。目の前の一人が立ち尽くしていた僕を蹴ってきた。

「聞ぃ…て…」

綺麗に入ったのか、声が上手く出せない。

「黙ってろ」

今度は後ろの奴が後頭部を思い切り殴りつけてきた。


 僕は耐え切れず、倒れてしまった。


 「倒れたぞ。今の内だ。もっと痛めつけて、この村から追い出そう」

遠くから聞こえる。きっと、後ろの奴だ。


 そこから先は殴る蹴るの嵐だった。


 お腹に、足に、腕に、頭に、痺れるような痛みが走る。

少しは聞き取れていた奴らの罵声も次第に聞き取れなくなってきた。


 なのに、僕はどこか他人事のように感じていた。


 まただ、また僕が僕じゃないような感じがする。


 そして、その僕は必ず助けが来ると確信していた。


 絶対に助けが来る。それまで耐えないと。


 彼女が助けてくれる――――


 「あの子が、悪魔なの?」

雑音だらけの世界で、声が高く響いた。可愛らしい女の子の声だ。

――――僕が求めてやまなかった声。


 しかし、奏でる言葉は求めていたそれとは異なるものだった。


 「そうだ。あいつがいずれエフィをさらう悪魔だ。だから、今痛めつけておかないといけないんだ」

 聞き覚えのある声が続いた。

声だけじゃ誰か分からない。

――――いや違う。この声は村長の息子だ。いずれ彼女にも危害を加える奴。僕の敵だ。


 このままじゃ死んじゃう。逃げないと。

―――こんなんじゃ死なない。彼女を助けないと。


 じゃあどうするんだ。

――――彼女は助けてくれるはずだ。今は耐えろ。

分かった。

 僕は僕と会話していた。これは限界の意識が作り出した幻なのかもしれない。

――――そんな訳がない。向き合え。思い出すことから逃げるな。

 

 ――――お前の記憶を。この世界で生きるための知恵を。


 脳が焼けそうなほど熱い――お前はなぜ人間に脳があることをしっている?


 高い家がたくさんある土地の光景が浮かび上がる――この村から出たことがないお前になぜ、他の土地の記憶がある?


 なにかの板の前に座る人が見える―――それはお前だ。


 座っている人が僕?―――それは僕だ違うもっとよく見ろ。


 板の向こうで、今の僕と同じように子供たちに囲まれ、いじめられている子供がいた。―――それがお前だ。

 

 「あぁぁぁぁ――」

一つの単語がおぼろげに浮かぶ。指し示すものの意味すら知らない単語。

 

 「ゲーム?」

――そうだ。


 思い出すと同時、僕の意識は薄れていった。

「やっべ。やり過ぎた。にげろー」

暴力が少なくなっていった。でも微かに意識が残っている。

 

 もしかしたら、次に聞く会話を聞くために残していたのだろうか。


 「私があの子に連れていかれちゃいや?」

「絶対にいやだ。ずっと傍にいてくれ」

「プロポーズみたい。でも、うれいしいな。私、かー君のこと大好きだから」

「俺もうれしいよ」


 ――――悪夢だ。

そんなもう一人の僕の言葉が反響するなか、意識が途絶えた。






 








面白い。これからはもっと面白くなりそう。

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