残りもの
まだ、眠れないので重ねて投稿。
「ごt…」
頭に浮かびかけていた言葉を二人に変に思われないよう飲み込む。
たった一言、言わないだけで得体の知らない後悔があった。
「今日は、食べ終わるのがおそかったね」
おばあちゃんが心配の混じった声で言う。
「いつもなら、がっつくように食べてしまうのに」
当たり前だ。こんな料理をペロリと平らげるほどの丹力は僕にはない。
「今日の料理の味なんか変じゃなかった?」
ゴツン。また、拳が降って来た。
「いつも通りの味だ。それとも、いつも変な味だとでもいうつもりか?」
「そんな訳ないよ。ごめんなさい、おじいちゃん」
おじいちゃんの気に障ったと思い。僕は謝罪した。
「ふざけたことを言った罰だ。今日は一人で買い出しに行ってこい」
「まだ早いんじゃないかい」
おじいちゃんの発言をおばあちゃんが諫める。
「いつかは通る道、今日がその道を通る日なだけだ。」
「はいはい。分かったよ。あんたは頑固だからね。」
いつの間にか、今日の予定が決定したらしい。
そのまま二人は話し込んでしまった。
僕は二人が話している中、食器を片付け服を外行き用のものに着替える。
一人になると食事中に感じた違和感を意識せざるを得なかった。
今まで、朝食を不味いなんて思うことはなかったし、食べ始めと終わりになにかを言う習慣もなかった。
僕はいったいどうしてしまったのだろうか?
昨日までの僕と、今日の僕は違う自分の様に感じる。
まるで、生まれ変わったかのようだ。
でも、それはそれだけのことだ。
別に人が変わったとしても、僕の家が村の人たちから煙たがられていることに変わりはないし、畑を耕さなければいけないことにも変わりはない。
そう思うと、心が軽くなった。別に僕が変わっても何かが変わるわけじゃないんだ。
いつも考えないようにしていることが今だけは心の支えになった。
「準備はできたかいエゼル?」
おばあちゃんの声で、服を着替える途中で耽っていた自分に気づく。
「あと少し待って」
僕は大急ぎで服を着替え、玄関へ向かった。
玄関で二人が待っていた。
「いいかい。買ってくるのはロウソクと砥石だけ。それだけでいいんだよ」
おばあちゃんがバックとお金を渡しながらオーダーを言った。
「子供が追ってきたら、さっさと家に帰ってこい。大人は手をだして来ないが、助けにもならないからな」
「分かってるよ。あいつらは怖いから見つけたらすぐに逃げてくるね」
「それくらいでいい。無理に立ち向かう必要はないんだよ」
「うん」
はじめてのお使いにしては物騒な会話だが、実際にこれ位の危機管理は必須だろう。
「じゃあ、行ってこい」
「うん」
おじいちゃんの促しに応じ扉をあける。
「いってきます」
「「いってらっしゃい」」
唯の何気ないやり取り。だけど、ほんのりと涙がにじむ
あぁ。これはあるんだ。
妙な感動に包まれながら僕は村の中心目指して、歩を進めた。
面白い。先が気になるという人は評価とブクマをお願いします。