市中病院小景3
◎第6の波急襲
「院長、満床でこれ以上はムリです」
「うーん。第6波来たのはいいけど捌ききれないね」
「よそへ回しましょう」
「いや勿体ない。なんとかしよう」
ガタン、ゴトゴト
「これでよし。4倍はいけるぞ」
「隔離できませんよ。こんな段ボールベッド並べただけじゃ」
「アクリル板で仕切ればいいんだよ」
◎まだまだイケる
「院長、二段ベッドも入れますか」
「三段も併用しよう。収容数8倍はいけるぞ」
「第6波オミクロンさま様ですね」
「よーし、こうなったら廊下にもベッド並べよう」
ホイホイほい、と
「わ。なんか以前見たような光景ですね」
「武漢の病院がこうだったね」
「ひょっとしてあの時も」
「まさか。ね」
◎オミ部屋
「鼻水も出なくって心配なんですう」
「それはいかん。PCRだ」
「どうでした?」
「オミクロン陽性だね」
「きゃ。どうしよう」
「入院手続きを。大部屋だけど」
「え。隔離じゃないの」
「混ぜたほうがいいんだ」
「オミ交換…ですか」
「そ」
「平気かなあ」
「大丈夫。もっと健康になるのがオチだ」
◎陽性者の取り合い
「うちもジャグジーぐらい備えなきゃ」
「フィットネス器具も一通り揃えないと」
「うん。陽性者へ訴求できるなら何でもやっちゃお」
「手術室とかICU、遊べるように改造しましょう」
「オミクロン6波専門病院だもんね」
「増床に備えてスーパー銭湯でも借り上げますか」
「そりゃいい。早速交渉だ」
◎医者の仕事
「院長、もう辞めさせて貰います」
「困るよ。いま人手が足らないんだ」
「筋トレ指導とか麻雀メンツ要員とかもうイヤです」
「オミクロン陽性者のご機嫌取りは医師の重要な仕事だ」
「補助金目当でしょ」
「医者の権威も信頼も地に落ちたんだ」
「でも」
「とっとと出張PCR行って陽性者つれてこい!」