外出
数日が過ぎ
それなりに体ができたきたと評価された
次は逃げる技術を教えてもらった。
腕を掴まれた時のかわし方
いきなり肩を掴まれた時の逃げ方
後ろから抱きつかれた時の逃げ方
小刀で脅された時
お手本を見学した後
実践
うん、これは勉強しておいてよかった。
元の世界に戻った時も役にたつ!
そこそこ滑らかに動けるようになった
これなら外に出てもいいだろうということになり
能を見に連れて行ってもらえることになった。
いつもよりおしゃれな着物を貸していただいて
髪型も可愛く簪で飾ってもらえて
わくわく
お正月みたい〜などと心の中で叫ぶ
あ、そうそう、もしものために
たもとに現代防犯グッズを入れておく
「わぁ!ときお姉ちゃん綺麗!」
「ありがとう ゆうた」
「はしゃがないでしっかり歩け」
いつも通り橘くんは厳しい
行ってきます!と元気いっぱい出発
あ〜ほんと、歴史の教科書とか
時代劇で見た風景だなぁ
そしてNHKでやってたの見たことあるよ〜
っていう能の舞台
ものすごく有り難い感じがする
休憩というか間に挟まれている狂言が
とっても面白かった
いいな日本の芸能
戻っても時々見よう!
残念ながら歌の方はさっぱり心に響かなくて断念
ビート激しい方が好きみたい、、私
まぁ、歌は諦めよう。
観覧が終わって帰り道
美味しいお団子屋さんがあるというので
お土産を買う
梅子さんが支払いをしている間後ろで待っていたら
妙な音がした
振り向くと荷車がすごい勢いで向かってくる
道にいたお母さんらしき人が子供の手を引いて道の端に行こう
としていた。でも、子どもは2人いて、もう1人の子は
手を繋げずに道にうずくまっている
助けなきゃ
とっさに飛び出す
子どもを抱えて道の端へ
その横を荷車が駆け抜けていく
よかった。無事で。
もうもうと砂煙が上がる道の端で
子供を抱きしめて泣いているお母さんに
何度もお礼を言われた
別にいいんですと答えて
梅子さんのいる方に戻ろうと歩いている時
急に引っ張られた
「誰?」
路地に引っ張り込まれた
「いい着物だな、身代金取ろうか、このまま売っちまうか、どっちでも儲かりそうだな」
ぐっ これが拐かしか。悔しい!無事に帰って平気ですって自慢したかったのに。
そんなこと考えている場合じゃないよね
えっと、そうそう、考えていた対策!
路地の隅に取り囲まれるように押し付けられてはいても
まだ、手足は縛られてない
よし、泣き真似だ
大きく鼻を啜る
自然に目の前に手を持ってきて泣くポーズ
そっと手をたもとに入れて
防災ブザーのスイッチを入れた
ビビビビビ
「なんだ!」
今まで聞いたことのない音に驚く男達
「このアマ」
バシッ
思い切りお腹を蹴られた
「うっ」
「さっさと担いで逃げるぞ」
「そうはいかせない」
え、、この声、、橘くん?なんで?ここに?
倒れている私を庇い立ち塞がる
男達は私を諦めて路地か飛び出していく
けれど飛び出した先で
捉えられていた、、ようだ
倒れた私には怒鳴り声しか聞こえなかった
「大丈夫か」
「ごめんなさい」
「いや、お前はよくやったと思う」
体を起こし袖の中に手を入れ
ようやく防犯ブザーを止められた
「いいもの持ってきたな。それのおかげで分かった」
「うん、、ごめんなさい。気をつけてるように言われていたのに」
「そうだ。お前は不慣れなのに、うろうろするべきじゃなじゃった。」
「ごめんなさい」
「けど、目の前の困っている人を見捨てる様なやつは嫌いだ。
お前は間違ったことはしていない」
「どうして知ってるの?」
「俺も荷車を見ていた。助けたかったが遠くて間に合わなかった。
お前が助けるのを見た。その後、砂埃で見失っちまった」
「あ、はやく梅子さんのところに行かなきゃ、心配してる」
「そうだな」
「え」
お姫様抱っこ!?
「え?いや、あの、恥ずかしい」
「腹蹴られたんだろ」
「そうだけど」
私の抗議は受け入れられず、そのまま梅子さんのところに連れて行かれた
「ああ、よかった、小鳥遊ちゃん」
「心配かけてすみません」
これ以上トラブルに巻き込まれない様にと
さっさと帰ることになった
疲れたでしょうということで
今日はそうそうに部屋に帰らされた
布団の中で今日の出来事を思い返していた
橘くん心配で授業終わった後、迎えに来てくれたんだ
冷たいようだけど
考えたら色々親切なんだよなぁ