7、正体
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草原から未だに離れず、デルとマーチは草原のその草の絨毯の上に座って話をしていた。デルは何だかんだ言っていた割にはアッサリと正体を言ったのだ。詳しく話すからと、腰を下ろすことにしたのである。横並びに座り空を眺めながら、会話は進む。
「俺はブラックユニコーンだ」
(聞いたことない)
「?ダークエルフとかではなく、普通のユニコーンでもなく、ブラックユニコーン??」
「ま、聞いたこと無いだろうな。馬系統の魔物でユニコーンの次に有名なのはバイコーンとかペガサスだったか。今でもそうか?」
「はい、そうです。馬系なら有名なのはあと、ケルピーとかケンタウロスもいますけど全身馬系なら、その二つですね。カラスに白いのが居ないのと同じで、ユニコーンに黒いのなんて居ないと思ってました。バイコーンは黒っぽいですけどアレはユニコーンとはまたちょっと違うし………」
「実はユニコーンは白だけじゃない。普通の馬にも、茶色い毛並みのものや、体がデカイものや、毛が長い種類だっているだろ?」
「た、確かに」
目から鱗がポロリだ。衝撃だった。
「ユニコーンのユニは“1つ”、1つの角を持つ魔物であればユニコーンなんだ。最初は一角の魔物は全部ユニコーンと呼ばれてた時代もあったよ。ちなみにバイコーンのバイは“2つ”って意味だけど、他に角2つが特徴だけっていうモンスターあまりいなかった。2つ角が付いてても他に特徴の強い個性を持つモンスターは、固有名詞がとっくに付いてたからな。だから、バイコーンはあのタイプの事を最初から単独で指し示していた。」
「2つ角が付いてて強い個性と言うと……」
「鬼とかドラゴンとか」
「納得」
(個性強すぎだよ)
「だからユニコーン種は昔はバイコーンのオマケだったんだよ」
草原に風が吹く、昼前だから少しだけ熱がとび、気持ちいい
「でもなんで封印なんかされて……ユニコーンってそこそこ魔力高そうな……まず捕まらなそう」
「色々あって呪いで人の形にされてな。背中にデカイ印が強力な魔法で貼り付けられてしまっていて、自身の魔力も制限がかかっている。元の姿に戻れなくはないんだが魔力の消費が激しすぎて元の姿に戻れても1日10分もてばいい方だ。一時期このまま人の形で街で普通に暮らしてたところ、悪魔とかその類いのモンスターと勘違いされたんだ。あっさり捕まって封印された」
「えっあっ黒いオーラってまさか、じゃあ中の清浄なオーラは……」
「中のオーラが清浄?ははっなんの冗談だ」
イケメンは笑顔もイケメンだ。
(ていうかニヤリ顔じゃない笑顔も出来たんですね、笑えたんですね。エルフ様じゃないけどエルフっぽい顔で笑うとか…………ぅぅぅっっ!私に拷問か!!拷問だよね!)
声に出すのを堪えつつ、エルフ愛を押さえつつ……
「ユニコーンは聖なる獣の聖獣って文献には載ってますよ。ブラックだろうとユニコーンはユニコーンだし、合ってますよ。清浄なオーラは見間違えてません。だってほらユニコーンは処女の乙女の前にしか現れないんでしょ?伝説というか、逸話というか、夢のある話ですよ。それはもう私のエルフ様みたいに!」
「幻滅させて悪いとは思うがユニコーンの伝説とやら、ソレを夢のある話とは思わないで欲しい。」
「なぜですか」
「言ったろ?普通の馬と同じで、色々いる。人間だって、お前みたいに『エルフ様エルフ様』って言ってるのもいれば、金儲けしか頭にない人間もいるし、善意でしか行動出来ない無欲過ぎるやつもいる。」
「ユニコーンの社会も色々あるんですね」
「大体な、処女の前にしか現れないっていう前提が実はおかしいんだ。別にそうじゃなくても気に入れば現れるモノなのに。単に有名になったユニコーンがロリコンの馬ってだけなんだよ。しかも処女が匂いでわかる。しかも大人になった馬がだ。人間に直してみろ、それが例え稀代の男前だとしても、気持ち悪いぞ」
「うわぁ」
伝説の馬にドン引きである
「ユニコーンに夢は見ないようにします」
真顔だ。
「そういえば封印を解いたのはお前か?」
「岩に触りはしましたけど違うと思います」
「分かるのか?」
「……確証ないですけど、聖なる力とかは、ないですよ。教会でスキルやら、属性やら定期的に調べてもらっているので」
「お前も実は化け出た者じゃないのか」
「略したら“バケモノ”をわざと長くして言おうとしないで下さい!もう!私はれっきとした正真正銘、人間の女の子です!!」
「じゃあ聞くが空間魔法に武器や菓子が入っていると言ってたが、どのくらいの容量入ってるんだ?」
「えっいやぁたいして入ってないですよ!お菓子だって結構すぐ食べちゃうから3日分くらいしか入ってないし、武器だってお父さんがくれた物と、冒険者さんが売りに出したものや貰ったものと、武器屋で購入したものぐらいしか。あとは家のクローゼットに入りきらなかった服と、いつかエルフ様の国に旅立ちたいと思って集めたキャンプセット。あぁ、アレも入れてたっけ、捨てるに捨てれなかった本とか昔のギルドの広報誌とか。」
「かなり色々入ってるな」
デルはまた呆れている
「あれっ?」
気づくと少ない事の証明ができていなかったのであった。
「他国だと、空間クローゼットとも呼ばれるストレージだが、少なく見積もっても通常の10倍に近いんじゃないか?」
「………」
目をデルのいる方から反らしていく。
(色々言いすぎた、バレた。でも実は)
草原の方へ向かってくる子供達の笑い声が聞こえてきた。
(前にあったスタンピードの時、誘導のほかに荷運びもやって空間魔法使いまくったけど多分私の空間魔法は)
「荷運びには便利ですよ」
(際限が全く無さそうなのよね……時間も止まる有能空間ぽいし)
「その上オーラも見えるんだ。なかなか魔力量多いだろう。ホントに封印解いてないのか」
「解いてませんって」
「だがお前以外には他に誰もいなかったぞ」
「封印解いたと思ったから色々教えてくれたんですか?」
「少しは期待していたが、封印解いた解かないとは別にお前には、よくわからない強さみたいなものが垣間見えた気がして、動物的本能で教えてもいいかと思ったまでだ。」
(というか、教えなくても全部気づいてそうだったし、今気づいてなくてもどうせ勝手に答えにたどり着きそうだから、むしろこっちから話した方が気が楽だったと言うべきか。)
「悟ったんだよ」
「悟ったって……やっぱり普通の女の子ってところを一切わかっていないって…コト…では…………」
(どれが普通なのかがよくわからないけど、空間魔法ポンポンと使える上にその中に恐ろしい武器大量にいれている様な人間が普通とは思えないんだが、ギルドマスターという頂点の親族達はみんなこうだと言っていた……悟るしかないだろう。怖すぎるぞ。)
「でもじゃあ誰が封印解いたんだ?」
「あっ」
「?」
「あの茶色い小動物かも!」
その時2人の真後ろにドゴォと何かが降ってきた
「えっなに」
「これは」
天気がコロコロ変わるこの時期皆様、無理をせず、ご自愛くださいね。暇さえあればゴロゴロしている私はむしろ運動せねば……早く秋にならないかなぁ……