4、呼び出しは突然に。
少しお腹を満たした頃……
「あっ居たっマーチちゃん」
パタパタと走り寄る音の方から声がした。その声の方に、後ろを振り返るとお父さんと同じくらい毎日会っている人がソコに居た
「ジークさん、どうしたんですか。私になにか用でも」
ジークさんは冒険者ギルドの職員で30代ぐらいの年齢(うろ覚え)でまだ職員の中では若い部類だけど最近古参の職員さん達が仕事を辞めたので、職員の中でもギルドのNo.2かNo.3、の位置の人だ。と言われている。もう一人言われている人がいるのだが、古参さん達が抜けた後をどちらも上手くやっている。ジークさんはどっちにしても優秀だ。昨日も私の気持ちを汲んでくれた優しい気の利く頼もしい男性だ。ただ、どこにでも居そうな凡庸な顔立ちだけど。目も髪もちょっとだけ明るいココア色。
「今日は街中に遊びに行ってるから邪魔はしたくないけど、緊急に聞きたいことがあるから、探して連れてきて欲しいって言われて、ギュスターヴさんに……」
「お父さんが?」
(ジークさん…このやたらと人が多い街中で、よく私見つけられたなぁ…じゃなかった。えっ何だろう、緊急って言うと、いつものスタンピードを思い出すけど、ジークさんを寄越しても、避難誘導とか市民に注意を促す手伝いするからってギルドには行かずに門に集合がかかるはず。聞きたいこと?)
ちなみにスタンピードとは、ダンジョンから魔物が溢れ出てくる災害である。
「一緒にギルド来てください。って、あのその、お隣の人は?」
「昨日知り合いになったデルさんです。街の案内をしてあげてたんだけど……まだ全然……」
チラリとデルさんを見てみる。
「行ってきてくれ、案内はそのあとで構わん」
「とはいうものの…。そうよ!ジークさん、このデルさん冒険者ギルドも入ったこと無いみたいだから私がお父さんと話をしてる間にギルドの中案内してくれない!?」
「!?」
「あっはい、そのくらいならしますよ」
臨機応変が利くギルド職員は頼もしい
「話が終わったらそのまままた町に繰り出せるし、街中をうろうろしてるデルさん探し出すのは、逆に時間を喰うから無駄だと思うの」
「……それは正論だな」
そんなわけで、3人で冒険者ギルドに入ることになった。
(聞きたいこと、聞きたいこと?流石にこのデルさんが野宿してたことじゃないよね、緊急ってことでもないから、聞こうと思えば呼ばなくても家でも聞けるし)
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「ジークさんあとよろしくお願いします。デルさん、また後でね」
ジークさんは手を軽く振り、デルさんはさっきの行ってこいの顔で頷いていた
それだけ言って冒険者ギルド内の階段を登り始めた。冒険者ギルドの一階は受付と仕事斡旋や買取り査定が主で、二階はパーティーメンバー紹介所や一階では買い取れない高価な出土品などで使う為の商談室、三階は高ランクと職員に認められた人々の最終試験をする面接と筆記用の講習会場とギルマスの部屋、四階は二階でしか買い取れなかった高価な出土品の一時的な保管倉庫と冒険者の事やら街の事やらと色々な書類が詰まった書類倉庫が主である。
大きい建物ではあるとは思うが各地を知っている冒険者からすると冒険者ギルドの中でも忙しい割に規模は小さいと言われる。他にも食堂が2つ~3つ常設してあるギルドや、テイマー用のモンスターをギルド内で飼育したりしているギルド、機械国のギルドでは「エレベーター」とか言う階段を登らなくても上まで上げてくれるシステムを最近入れたと聞いた。
(縦幅も横幅もある建物なのでココにも導入して欲しいな)
とか考えつつ、階段を三階まで登りきる。
コンコン。軽くノックした。
「おう、入れ」
中から声が聞こえた
「失礼しまーす」
「やばい、マーチがとうとう他人行儀に入ってきた」
「マーチさんももう大人と同じなのですから礼節くらいできますよ」
「お父さん、怒るよ」
部屋にはギルドマスターこと、私の父、ギュスターヴ。が執務用の机で書類を見ていた。元s級冒険者だったらしい。私の産まれる前の話だけど。目は親子で同じ緑だけれども、お父さんの方が暗めの色合い。髪はクリーム色に少し灰色を足したような色で、私のピンクの髪色はお母さん譲りだ。
ただ、今でも冒険者やってそうなくらい体はバッキバキである。40代とは思えない。いや、もっとお年寄りでも筋肉作り上げるのが趣味な人居るとか言う話は聞いたことあるけどね。筋肉やり過ぎたら縁を切ろうと言ってあるから、大丈夫だと信じたい。筋肉ダルマな父親なんてドン引きです。筋肉好きさん御免なさい。
その隣にはさっき一階で別れたジークさんと同じくNo.2かNo.3だろうと言われているもう一人、カルロスさん。書類仕事だけなら、ギルド随一。眼鏡かけて、長髪を束ねているんだけど、物語に出る執事っぽいなーなんて勝手に思ってる。
ただちょっと人より沸点が低くて受付とかさせてしまった日には冒険者VSギルドになりかねない、とも言われている。昔大変だったらしい。目は薄い若葉色で髪色はレモンクリーム色っていうのかな、薄ーい黄色。どっちも薄い色だけど品がある感じ。あれ?やっぱり実は執事?
「聞きたいことがあるって呼ばれたけど、何かあったの?」
「マーチ、日課の墓参り、昨日も行ったか?」
「もちろん」
「だよな。昨日夜ご飯時に俺が聞いたとおりだよな。じゃあ今日は行ったか?」
「今日はまだよ」
(近くは通ったはずだけど……えっ緊急ってまさか)
「まさかお墓になにかあったの」
「お墓はなんともありません、無事ですよ」
(ほっ)
「実はその隣にあった岩が消えたんだ」
ん?どこが緊急だって??