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10、恋とフィルター

「シエラちゃーん居たら出てきてー」


探しながらダンジョン内を2人で進む

昼前なのでレベルの低い階層には人がいない。人が少ない分落ち着いて探せるが、こういう時は人海戦術の方が良かったかもしれない。人がいれば、どこそこにいたよ、と言う情報があった方が探すのには手っ取り早い。


「そういえばさっきの入り口にいた男は知り合いなのか?」


「あれ?言ってませんでしたっけ、私のお父さん冒険者ギルドのギルドマスターなんですよ」


「え?だから?」


「あの人エイドさんは冒険者ギルドの職員なんです。私の第2の我が家が冒険者ギルドなので、まあ、私のお兄さん的存在の人って感じですかね!若手ギルド職員だから、仕事は私の方が知ってますけど、我が家で働いている人はみんな家族です!」


「ふーん不思議な家族だな」


同じ釜の飯がなんとやら、デッカイ家族である。マーチのところには食堂(レストラン)はないが、職員用休憩所が設置されている。簡易台所も設置しているので、あながち間違いではない。


ちなみにマーチは職員の名前と顔を全て覚えている。もし覚えていなければその職員は偽者か一時(いっとき)手伝いにきた人か入ってすぐに職員を辞めてしまった人だろう。


「私にとっては普通です」

マーチはニコニコしている。ギルド職員(家族)の話をすることが嬉しいらしい。エルフの話をする時とはまた違う笑顔だ。


「さっきのあの短髪ツンツンヘアーの人は若手ギルド職員さんで、名前はエイドさん。今ギルドでは若手が育ちやすいようにってここ最近若手の職員は⦅相方制度⦆っていうのをしてもらってて2人1組で行動してるはずなんです、なぜかさっきはいなかったけど。もう一人はビールドナーさんっていって見た目はチャラ男かな。別段性格はチャラくはないんだけど。エビコンビってあだ名がつけられるほど若手ギルド職員のなかでは色々目立つ2人で期待の若手のお兄さん達です」


「エビ?」


()()ドさんと()()ルドナーさん、A&Bでエビコンビです。」


「良いあだ名とは言い難いな」


「覚えやすいのが一番ですよ?」


そう言うマーチの後ろの岩に(つた)に擬態した蛇がマーチの頭に噛みつきに飛びかかる。デルは下ろしていた手を軽く質問する時の手を上げるような動作をした。下ろしていた時に持っていた短剣が、手を上げた時には消えてマーチの後ろの壁に蛇ごと刺さっている。蛇の首の辺りに刺さり蛇は真っ白いお腹をこちら側に向けてダランと縦に垂れ下がっている。マーチは後ろの蛇を見たあと、また前にいるデルを見直した。


「カメレオンシュランゲっていう蛇ですね、助けてくれてありがとうございます」


(驚かないのか。やはり、変わってる)

デルは壁の短剣を引き抜く。死んだ蛇はシュオォという音と光のような煙のようなものに包まれて消えてしまった。ダンジョン仕様というやつである。


「あー残念ドロップ品無しですねー」


「そういえば聞きたかったんだが俺は別にお前の言うエルフでは無いのだがいいのか?」


「はい?いいとは?」


同じのだがさっきより三倍くらい大きいもう一匹の個体が今度はデルの頭目掛けて振ってきた


「あっちょっと待っ」


「どうした?」


そう言いながらデルは頭上の蛇に短剣を投げ刺してしまった


「バリア!あーもうっ」


蛇はキェェェという金切り音のような悲鳴を上げた。

マーチは2人の頭上に傘のように少し丸みを帯びた大きいバリアを張った。そのバリアに蛇の血の雨が落ちてきた。ボトボトボドボト………嫌な音である。


「モンスターの血ってニオイも臭いし服に付いたら落ちにくいんですよー、攻撃する時ひと言掛けて下さい」


少し怒っている


「すまん、気を付ける。そういう事もギルドの中で知ったのか?」


バリアにゴツンと短剣と一緒に別のものが落ちてきた音がした。


「そうです、冒険者さん達汚れたまま帰ってくるので。あっおめでとうございます。ドロップ品です」


(怒られた後だからか……?あまり嬉しくないな……)


バリアを横に下ろしてから、解除する。完全に傘の使い方をしていた


「魔石だな。人間はこれをよく集めているよな」


「生活に必要なものなのでいくらあっても足りないんですよ。一応風力や水力を使って生活を豊かにしてますけども、人が多く集まりすぎると、全然足りないんです。人が多く集まっても使えるものを昔、魔道具師さんが作りだしてくれたから、今の街が発展してきたんですよー。魔女の国ミルトルテで開発されたらしいです。なので魔石は必要品ってことで高値で買い取って貰えますよ。放置せずちゃんと持って帰りましょう!勿体無いですよ」


「そうか」


少しだけ血がついていたがようだがデルは魔石と短剣を持ち上げた。二つを綺麗に拭き始めている。臭いと言ったのは失敗だったかもしれない。でも言わなくても分かることである。


「で、なんでしたっけ、デルさんがエルフ様じゃないから、って話でしたっけ」


(うーん今更っていうか、そんなの耳見た時点で詰んだ!と思ってたからなぁ。後ろ姿だけで、エルフ様!わっほい!やったね!とかテンション上げてたのよ?でもあの時不思議な事に何かが始まる予感がしたのは確かなのよ。誰が信じなくても、ぜったい絶対ぜーーーったい、運命がこう、交差したというか、動き出したと言うか………これが運命を感じるってことなのねって…………………。うーん、このよくわからない気持ちをどうデルさんに伝えれば……)


多分そのまま言えばデルは理解しなくともキチンと説明を聞いただろうが、そういう占いのようなフワッとした類いを信じない人が多いのも真実だ。色々考えた結果、マーチが出した答えはこうだ。


「私、デルさんを一目見た時から好きになったんです」


「っ」


デルはとても真面目な顔のマーチにドキリとする


「そのたおやかな艶々(つやつや)しい長い髪。細いのだけれど単にガリガリという訳ではない少し筋肉が付いてスラッとした体つき。その両方を違和感なくまとめ、納得させてしまうエルフ様を彷彿させるイケメンな顔立ち」


「エルフ様じゃなくてもエルフ様っぽいその姿が近くにいるだけで私、こう、テンション上がるんです。エルフ様じゃないってわかっていても!だから私は好きでデルさんと一緒にいるんですよ!」


握り拳を天高く上げているマーチ。ドキリとした瞬間を返してほしい衝動に駆られるデルとそれに全く気付かないマーチであった。デルは顔に手を当てる。


「はぁ……あーうん。わかっていた。分かってた事だがなんかこう、段々エルフにムカついてきたな」


(エルフっぽいからと弓持たそうとしてたしな……コイツは…)


「え?!なんで」


デルは盛大なタメ息を吐きながら少しイライラしている。自分を見ているようで全く別のものを自分を通して見られているのだ。ということに、今更ながら気付いたからだ。どんな人でもすぐ気付きそうなものだが、デルは封印されていたせいなのか、スッカリ忘れていたのだ。


「俺とエルフは違う」


「はい、わかってますよ?」


「わかってない」


デルはこのよくわからないモヤモヤとした感情をドコにぶつければ良いのかも分からないまま岩だらけの上を見上げた。


「そうだ、そのうち本物のエルフに会いに行こう」


(一発殴りたい)


八つ当たりである

それが言葉の後に続いているとは知らないマーチは


「本当ですか!一緒に連れていってくださいね!絶対ですよ!」


意気揚々としている。


「連れてくとは言ってない」


「なんでですか、ヒドイです!」


(この娘は俺自身をエルフを通さずに見てくれる時が来るんだろうか)


と考えながら、ダンジョンの奥に歩きだす。小さいフェンリルはまだ見当たらない。

お読みいただきありがとうございます。

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