1話
神田徹はどこにでもいる普通の高校生ではない。
髪の毛の地毛は色が薄く灰色に近く、真っ白な毛がところどころありまだら模様になっている。
さらにいうと人間でもない。
彼の先祖はオオカミと人間の姿を持つ人狼であり、神田徹にもその特性は薄くだが受け継がれている。
そんな特異な高校生、神田徹も人狼であることを隠しながらも、普通の高校生活を送っている。
学校に行き、授業を受けて、友達と内容のない会話をして、家に帰る。
そんな普通の高校生活を送っていた、だから、だからこそ彼は少しだけ大変な日常を送ることになったのだろう。
彼はある日同じ学校の女子生徒に恋をして付き合うことになったのだ。
■ ■ ■
その日神田徹はとても浮かれていた。
それもそうだろう、彼にとって人生で初めて恋人ができたのだ。
相手は同じクラスの大川美奈。
おとなしい性格ながらも行動力がありクラス委員長を務めている。
席が近いこともあり話すことが多く、だんだんと徹は彼女の魅力に惹かれていった結果、今日にいたる。
「母さんただいまー」
家に帰り、いつもより元気よく帰りのあいさつをする母親が奥から出てきた。
「あらお帰り徹、どうしたのとても浮かれているようだけど?何かいいことあったの?」
「あのさ、あのさ、聞いて聞いて俺初めて今日彼女ができたんだよ」
言葉が幼くなっているのは浮かれているせいだろうか。
しかし、そんな浮かれた様子の息子の報告に対して母親の反応はあまり良くなかった。
「あらー…それはー…うーん…でもねぇ…」
徹はてっきりおめでとう、と言ってくると思っていたので今の母親の反応は気になるものだ。
「どうしたの母さん?」
「いやー…あのね、恋人についてなんだけど…ううん、やっぱりお父さんが帰ってきてから話をするわ」
「えー、なんだよ気になるじゃん」
「とりあえずは気にしないで、ちゃんと夜話すから」
気になりはするも夜に話をするといわれ納得して、徹は自分の部屋に向かった。
部屋につき携帯を開き連絡先を確認すると、今まで母親、父親、妹の家族3人と男友達4人しかなかった一覧に今日恋人になったばかりの大川美奈の文字があり思わずにやけてしまう。
しばらく眺めていると疲れからか強い眠気が彼を襲い、そのまま徹は眠ってしまった。
■ ■ ■
夕食後、神田家にとっていつもは自由な時間だが今日は違った。
妹を除いた家族三人が居間に集まり真剣な顔をしていてた。
「徹、今日恋人ができたんだってな」
「うん、できたよ。大川さんっていって同じクラスの子」
「あのな、よく聞いてくれ。なるべく俺は徹に普通の人間と同じように暮らしてほしいと思っている。もちろん人狼だということは秘密にしないといけないがそれでも他と変わりなく暮らしてほしいと思っている。だから、本当はこんなこと言いたくないんだが…徹、その大川さんと別れること前提で付き合っていけるか?」
別れる前提で付き合う、父親からでた言葉は普通聞かないような言葉だった。
もちろん徹自身も結婚まで付き合うとも思っていなかった、そもそも考えてもいなかった。
ただ、好きだから告白した。それだけだ。
「え…?どういうこと…?どういう意味」
だから、徹は父親が言っている意味が理解できなった。
普通別れること前提で付き合えるかなど聞かれないだろう。
「あのな、本当はこのこと伝えるつもりはなかったんだけどな、この際だから母さんと相談して言うことした。」
父親の横で母親がうんうん顔を縦に振り頷く。
父親が一度咳払いをして、改めて真剣な顔する。
「徹、お前の結婚相手はもう決まっている」
妹「私の出番なし?!」