こんなつもりでは……
この話は一体、どこに向かっているのだろう……。
文章は歪です。
それでも見てくれるならありがたいです。
取り敢えず、初めに情報収集をするのが異世界の鉄則と言えよう。
俺は情報を持った人々が集う場である、酒場に足を運ぶことにした。
酒場は存外早く見つかった。俺の持ち前のコミュ力のお陰だ。流石俺だぜ。
酒場の扉を開く。むせ返るような酒のキツい臭いが鼻腔を刺激する。
ここはマスターに話を聞くべきだろう。
しかし、ここであれこれストレートに聞くのは初心者と言えよう。俺は手始めにカウンターの席に腰掛けた。
……さて。俺の力。魅せるとしますか。
「マスター。いつもの」
完璧だ。このセリフは相手に不審に思わせることなく、コンタクトを取ることが出来る。
さぁ、俺の異世界生活の一つ目の魅せ所だーー
「あんたここ初めてだろ」
「……い、いや。前に一回だけ………来たことあったかも……な、なあーんて。ハハ……」
……こんのクソジジイが。
そして俺が注文を決めかねていると。
「ふざけんじゃねぇ!このクソヤロウが!」
突如として聞こえた怒声と共に、ガシャン!と酒瓶が割れる音が店内に響いた。
どうやら、チンピラ二人が言い争いから喧嘩に発展したようだ。
……いいチャンスだ。
先程の失態を取り戻す絶好の機会。逃すわけにはいかない。
「……お、おい。あんたら。ここに居る客に迷惑だろ」
「あん?なんだと小僧!?死にてぇのか!?」
チンピラ二人が怪しい足取りで、こちらに近付いてくる。
どうやら二人ともかなり酔っているようだ。
だが、俺は異世界転生特典で強くなっているはずだ。それがお決まりだからな。
内心ビクビクしつつも、チンピラ二人と相対する。
「も、もう一度言わないとわからないか?迷惑だって言ってんだよチンピラ共。大の大人が公共の場で喚き散らかすなんて、馬鹿丸出しだぜ……?」
「なんだとおらぁ!!」
少し言い過ぎたか?と思った矢先に、頭に血が昇ったチンピラの一人が酒瓶を振り上げ俺に迫ってくる。
……大丈夫だ。こいつらなんてモブキャラだろ?
迫りくる酒瓶を軽々と避けようとする。だが。
ビュン!という風を切る音と共に、酒瓶が顔の横を通り過ぎた。
俺は避けていない。否、避けれなかった。
「……は?」
どういうことだ……?
俺は強くなったわけじゃない……?今当たらなかったのは相手のミスか……?
混乱する。何故。転生特典は無しなのか……?
ふと、もう一人のチンピラを見やると、そのチンピラが手をこちらに向けているのに気付いた。
そしてそのチンピラの体が淡く輝きだす。
「おいおい。マジかよ。魔法ってやつかよ嘘だろ……」
その輝きは段々と強くなっていき、店内を不気味に照らしだす。
……ヤバい。殺される。転生初日目にして殺されるのかよ俺。
恐怖で震える手を握りしめる。転生前に一度死んでいる俺だが、死など慣れるわけがない。
ふと、自分の震える手を見る。
その手が薄く輝いていることに気づくのに、あまり長い時間はかからなかった。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」
チンピラが魔法を放つ。あの魔法はこのままだと、間違いなく俺を死に誘うだろう。
……嫌だ。
誰が。二度も死んでやるものか。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は両手首を合わせ、手のひらが相手に見えるように腰あたりで構える。
そして目を閉じ、精神を集中させる。
相手の魔法は目と鼻の先にある。
だが!
「……オラァァァァァァ!!」
「なッ!?」
瞬間。手のひらから何かが放出されるような感覚を覚えた。
チンピラが驚愕の表情を浮かべる。
そしてーー
チンピラは跡形もなく吹き飛んだ。
「……は?」
店のほうを振り向く。
皆、最初は唖然とした表情を浮かべていたが、段々と表情が恐怖の色に変わっていく。
静寂は束の間。
「き、きゃあああぁぁぁぁぁぁ!!」
この悲鳴を皮切りに、店内は混乱に陥った。
「……嘘だろ?」
俺は今、何を……。
思考が段々と薄れていく。
ころしたのか?ひとを?
ひとをころす?え。なんで。こんなつもりでは……。
「……て……き…はや……早く。こっちです」
突如何者かの声で我に帰る。
声がするほうを見やると、そこにはフードを目深にかぶった人物が俺に話しかけていた。
「……チッ」
そして、痺れをきらしたその人物に袖を掴まれ、凄まじい力で引っ張られる形で店を後にした。
俺は、異世界転生初日目にして殺人犯となってしまった。
読んで下さりありがとうございました。




